近年クリエイターの移住・定住が進む福岡市では、現在、クリエイター・エンジニアを対象に、福岡への就業支援プロジェクトを実施している。本レポートでは、同プロジェクトの一環としてこのほど実施されたイベント「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ キックオフin 代官山 T-SITE GARDEN GALLERY」の様子を紹介していく。

今回のイベントは、福岡市が実施する、クリエイター・エンジニアへの就業支援プロジェクト「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ」の一環として開催されたもの。このプロジェクトは、福岡への移住を考えるクリエイター・エンジニアに、福岡市内のIT・クリエイティブ企業での2カ月間の就業体験(トライアルワーク)を提供する取り組みだ。移住を考える際の大きなハードルとなる「仕事」の面をサポートすることで、本格的な移住をする前に、福岡で暮らすこと・働くことを体験してもらおうという、全国でも初の試みだという。

今、福岡のIT・クリエイティブ企業が盛り上がっているという。登録ユーザー数が世界4億人を突破した無料通話・無料メールスマートフォンアプリ「LINE」の運営会社であるLINEが新拠点として設立したLINE Fukuokaや、インテルの次世代UI開発コンテストでグランプリを受賞したしくみデザイン、また妖怪ウォッチが大ヒットしているレベルファイブはその一例だ。こういった勢いのある企業がなぜ福岡に増えているのだろうか。福岡市経済観光文化局の山下龍二郎氏がその理由について次のように語った。

福岡市経済観光文化局 山下龍二郎氏

■主要都市トップクラスの豊富な人材

・人口増加数が全国1位(※1)
・15~29歳の若者の割合が全国1位(※2)
・女性比率が全国1位(※3)

市内には多くの大学・短大・専門学校があり学生も多いため、優秀な"新卒"人材が豊富だ。これは企業にとって、とても嬉しい部分である。

■市内中心部から空港まで5分の利便性

福岡空港へは、市の中心部となる博多駅から地下鉄でたった5分、天神駅からでも10分で行くことができる。飛行機の便も、羽田-福岡間は一日あたり55便と非常に多く利便性の高さをアピールした。

市内から近く、羽田-福岡間の飛行機の発着数も多いため、東京へ出ることも容易だという

■東京の約3分の2、オフィス賃料のリーズナブルさ

企業が進出するにあたり、オフィス賃料の安さも魅力的のひとつ。「東京中心部の5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の平均坪単価が1万6,268円のところ、福岡の平均は9,254円と、およそ3分の2程度です」と山下氏。また、個人で暮らす場合の住宅賃料も同様だ。住宅賃料は、市内の中心部でも、2LDKが7万円~10万円程度。ライフコストもグッと抑えられるという。

東京中心部ほか、全国の主要都市と比較したオフィス賃料

■被災リスクの低さ

震災以降、特に注目されている部分だが、リスク分散拠点としての適性が高いという。山下氏は「今後30年以内に震度6弱の地震が発生する確率は3.9%。また、南海トラフの巨大地震が起き、東海・東南海・南海地震と、3連動の地震が起きた場合でも、東京圏と同時に被災するリスクは低いと考えられています」と語った。

また福岡市は、今年3月に安倍政権での国家戦略特区戦略によって、“創業特区”に選ばれている。今後スタートアップの支援に力を入れていくなど、ベンチャー企業にとっても一層活動しやすい環境が整えられていくだろう。

同イベントの最後に山下氏は、参加したクリエイター・エンジニアに向けて、今回のプロジェクト「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ」への参加を呼びかけた。同プロジェクトでは、福岡への移住に向けて、仕事の面だけでなく、今後は住居のフォローアップも行なっていく予定とのこと。

ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ トライアルワーク受入れ企業説明会

そんな今"アツい"福岡だが、IT系を中心に「経験者層の人材不足」が課題になっているという。山下氏は「経験者人材の不足は、市内のIT業界共通の悩み。福岡へ進出したい企業や、ビジネスを拡大したい企業にとって、東京などでビジネスの経験を積んだ方に、いますぐにでもジョインしてほしいという状況です」と語る。

そこで、同プロジェクトではイベント第2弾として、10月11日に東京・竹橋のマイナビ本社にて、「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ トライアルワーク受入れ企業説明会~“福岡に住む・働く”をこの手に掴む6時間~」を開催する。元GMOペパボ取締役、現在BASEのCCO(最高執行責任者)を務める進浩人氏が登壇するほか、実際に福岡へ移住したクリエイターによる、福岡に住むメリットや移住のコツを語るクロストーク、トライアルワーク受入れ先企業の担当者による説明会、交流会など、福岡での生活や仕事に対するリアルな話を聞くことができる。

※1 2014年1月1日時点の人口動態調査(2014年6月総務省発表)より
※2 人口に占める15~29歳の割合[19.2%]は政令指定都市中1位(平均16.5%)、2010年国勢調査より
※3 15歳~29歳のうち女性の割合[51.7%]は政令指定都市中1位(平均49.8%)、2010年国勢調査より