米MicrosoftのWindows OSの一部無償化は、同社の戦略を大きく転換するものとなる。OSの一部無償化でMicrosoftは何を狙うのか。どのような意味を持つのだろうか。ライター海上忍氏に記してもらった。

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Windowsが条件付きで無償化される。無償提供の対象はOEMとODM、デバイスは画面が9インチ未満のスマートフォンとタブレットに限定されるということは、先行するAppleやGoogleへの挑戦状と受け取っていいはず。遅きに失した、という厳しい意見も聞こえてきそうだが、市場にさらなるイノベーションと競争を促すプレイヤーの「本気」は評価されるべきだ。

Microsoftは開発者向けイベント「Build 2014」で、Windows OSのOEM/ODM向けライセンス費を一部無償化することを発表した

この決定が下された時期は不明だが、Windowsという巨大プロダクト群を抱える事業部門はもちろんのこと、Officeなど関連製品をも含む全社横断的な決定であることは確かだろう。数日前に「Office for iPad」の無償配布を開始したばかりだが、Office for iPadの件はサンフランシスコで開幕する「Macworld / iWorld」にタイミングを合わせたと考えるべきで、日数を空けて発表することで宣伝効果アップを狙ったに過ぎない。

無償化という決断には、当然ナデラ新CEOの意思も反映されているはずだが、就任から2カ月弱という日の浅さからすると、決断自体はバルマー前CEOのときに固まっていたと推測される。ナデラ体制に変わり加速した可能性はあるにせよ、アプリ「Office for iPad」の開発が一朝一夕には終わらないことを思えば、水面下で準備は着々と進められていたと考えるのが妥当だ。つまり、既定路線だったといえる。