ソフトバンク・テクノロジーが、ヴイエムウェアのSoftware-Defined Storage(SDS)製品「VMware Virtual SAN(VSAN)」を使ったVDIソリューションの提供を開始する。VSANを活用することで、高いストレージI/Oを実現しながら、VDIの導入コストを大幅に下げたことが特徴だ。VSANを使った初のVDIソリューションということもあり、現在、業界の注目を集めている。そこで、ソフトバンク・テクノロジーとヴイエムウェアの担当者に話を聞いた。

VMware Virtual SAN x VDIがクライアント環境にもたらす革新とは?(後編)

ハイパーバイザーにストレージを統合 シンプルな構成で高パフォーマンスが可能に

昨年8月、サンフランシスコで開催された「VMworld 2013」で、ヴイエムウェアの新製品やコンセプトが数多く発表された。そのなかで、「ストレージ仮想化」というテーマで注目を集めたのが「VMware Virtual SAN(VSAN)」だ。

VSANは、同社が掲げる「Software-Defined Data Center」におけるストレージリソースの仮想化を担う製品で、「Software-Defined Storage」を実現する最初の製品となる。8月の発表後、11月のベータ版アップデートを経て、今年3月12日(米国時間)に正式版がリリースされた。

VSANという名称から仮想的なストレージエリアネットワークなどを想像してしまうが、VSANは、これまでの製品やソリューションとは一線を画する新しいカテゴリーの製品だ。ヴイエムウェアのマーケティング本部 シニア プロダクト マーケティング マネージャである桂島航氏は、VSANのアーキテクチャを次のように説明する。

ヴイエムウェア マーケティング本部 シニア プロダクト マーケティング マネージャ桂島航氏

「ハイパーバイザー統合型ストレージと呼んでいます。簡単に言えば、ハイパーバイザーであるvSphere(ESXi)に、ストレージの機能を埋め込んでしまおうというものです。ハイパーバイザーをインストールするx86サーバに内蔵されているHDDやフラッシュを抽象化し、単一のリソースプールにすることで、高いパフォーマンスと耐障害性に優れた共有データストアを作成します」(桂島氏)

ハイパーバイザーのvSphere(ESXi)を使ったサーバ仮想化では、仮想マシン(VM)ファイルを格納するために共有のストレージアレイを使うことが一般的だ。しかし、HDDで構成したストレージアレイでは、ディスクI/Oがボトルネックになりやすい。そのため、SSDを使ったストレージアレイなどが提供されるようになったが、この場合は、コストが課題になる。

VSANの構成

また、ストレージのサイジングや運用の課題もあった。サーバが仮想化されたとはいえ、ストレージの容量設計は、これまでとあまり変わらず、事前にVMのサイズを考慮して割り当てておく必要があった。運用についても、ディスクの作成やプロビジョニングなどは手作業で行わざるを得なかった。VSANは、こうした課題を解消するものだ。

これまでも、vSphereをインストールしたサーバのHDDやSSDを共有データストアやキャッシュとして使うことはできたが、データストアへのディスクの追加や共有データストアとしての設定、ホストキャッシュの設定などはすべて手作業で行わざるを得なかった。VSANをvSphereに追加すると、そうした手間がすべてなくなるのだ。

「VSANのインストールはクリック2回で済みます。vSphereと統合されているので項目から『仮想SANをオンにする』を選ぶだけです。非常にシンプルでありながら、高いパフォーマンスを持ち、そのうえTCO(総所有コスト)を削減できることが特徴です」(桂島氏)

チェックボックスをONにするだけでVSANは利用可能になる

"オールフラッシュサーバ"でパフォーマンスと容量を拡張。VDIでもスモールスタートを

なぜこのVSANが、VDIソリューションに効果的なのか? ソフトバンク・テクノロジー クラウドソリューション事業部 プラットフォーム技術本部の大塚正之氏は、次のように説明する。

ソフトバンク・テクノロジーのクラウドソリューション事業部 プラットフォーム技術本部 ビジネス推進室 セールス&マーケティンググループ 大塚正之氏

「これまでVDIソリューションでは、パフォーマンスとコストが課題になりがちでした。しかし、VSANをインストールしたVMware環境をVDIソリューションの基盤として使うと、これらの課題を解消できます。さらに、ストレージの設計が必要なくなるため、運用コストが大幅に削減することを見込めます」(大塚氏)

VSANのユニークな点として、共有データストアは分散ストレージとして構成されている点がある。サーバにディスクを追加すると、容量やパフォーマンスをスケールさせることができるのだ。

たとえば、サーバ向けのコモディティ化したSSDやPCIeフラッシュストレージを使ったサーバを作れば、オールフラッシュで構成したストレージ専用機よりもコストパフォーマンスが高い環境が構築できる。

「様々なx86ベースの仮想アプライアンスなどにもチャレンジしてきましたが、VSANはこれまでのストレージとは一線を画する構造で、非常にシンプルかつ高いスケーラビリティのある仕組みです。vSphereのカーネル部分に直結したネイティブ構造で、VMware環境専用という思い切りの良さを特に評価します」(大塚氏)

コスト面では、VSANにVDI向けのライセンスがあることも大きい。VSANのライセンスには、CPU単位とユーザー単位がある。CPU単位の場合、1プロセッサあたりの市場想定価格が31万2,000円からだ。一方、ユーザー単位のライセンスは、VDI向けのみで利用でき、1ユーザーあたり6,000円になる。このライセンスを活用することで、これまで提供してきたVDIソリューションの価格を最大で約半分にまで下げることができるのだという。

大塚氏によると、こうした容易にスケールできることや、VDI専用ライセンスがあることは、VDI導入において特に大きな効果を発揮するという。VDI導入の最大の障壁である初期導入コストを抑え、スモールスタートを可能にするからだ。

「これまでのVDIソリューションは、導入するストレージコストの影響を大きく受けていました。200人、300人といったユーザーが少ない場合、導入コストが高くなりがちだったのです。ですから、予算内で収まるように安価なストレージへと流れてしまいがちですが、後に性能や拡張性で限界を迎え、再構築までにかかった時間コストも含めると、結果としてコスト増大となってしまうもの問題です。最悪なのは、フレキシブルに増強ができずに時間だけが過ぎ、ユーザの使い勝手が悪過ぎてVDIが活用されないといったケースもあります。しかし、VSANを使えば、ストレージを追加することで容量を自由に増やせますし、ライセンスもユーザー単位なので、リニアな拡張が可能になります。小さく始めて、効果を検証しながら、手軽に拡大していくことができるようになったのです」(大塚氏)

VSANを使ったVDIソリューションは、これ以外にもさまざまにメリットをユーザーにもたらす。後編では、VSANの詳しい機能や、VDIソリューションの特徴を紹介しよう。

VMware Virtual SAN x VDIがクライアント環境にもたらす革新とは?(後編)