航空機のパイロットが携帯するマニュアルやフライトチャートなどを収めたトランクは「フライトバッグ」と呼ばれるが、多くの航空業界が書類などの電子化を推し進め、タブレット端末に置き換わりつつある。我々の生活を振り返ってみても、専用リーダーを追加することで、従来のPOS(販売時点情報管理)デバイスがタブレットになっていることも少なくない。

図01 日本マイクロソフトの香山春明氏

日常に浸透しつつあるタブレットだが、Windows 8.1を搭載した多数のモデルがそろってきた中、日本マイクロソフトはタブレット市場におけるWindows 8.1搭載タブレットの拡販を目指し、さまざま取り組みを行っている。その施策の一環として、旅行業者大手のエイチ・アイ・エスとの協業を発表した。

3月6日の記者説明会には、日本マイクロソフト 執行役 常務 コンシューマー&パートナーグループ担当の香山春明氏が登壇し、「Windows×H.I.S.タブレットでわがままな旅を楽しもう! 『旅レット8キャンペーン』」の開始を明らかにした(図01)。

冒頭で香山氏は「Windowsタブレット市場が急速に拡大し、2013年第一四半期は全体の10%にとどまっていたシェアも、同年第4四半期には26%まで急成長した」と述べ、iPadやAndroid端末がひしめくタブレット市場に食い込みつつあるこという。さらに「Windows 8.1搭載タブレットの中でも、8インチクラスのラインアップが整いつつある。現在、5つの(8インチクラスの)Windows 8.1タブレットが販売されているが、シェアの拡大を目指すため、利用シナリオを提案しなければならない」(香山氏)と、同社の姿勢をうかがわせた(図02~03)。

図02 IDC調査によるワールドワイドタブレット市場のシェア。Windows搭載タブレットは26%まで成長

図03 Windows 8.1を搭載している8インチタブレットのラインナップ

今回のキャンペーンは、Windows 8.1タブレットの販売を促進するとともに、旅好きの女性ユーザーにもWindows 8.1タブレットをより知ってもらうために、エイチ・アイ・エスとの協業にいたったという。同キャンペーンでは、旅行前の準備から始まり、旅先でもタブレットを利用するために、Windowsストアアプリ「集めて旅するCollect Traveler」を新規開発。詳しくは後述するが、3月15日よりWindowsストアでの公開が予定されている(図04~05)。

図04 「旅レット8キャンペーン」のイメージロゴ。旅行好き女性がメインターゲットだ

図05 日本マイクロソフトとエイチ・アイ・エスが共同開発したWindowsストアアプリ「集めて旅するCollect Traveler」

さらに「ツイートしてわがまま旅行プレゼント」として、Twitter上のハッシュタグ「#tabi8」を付けて、旅行に関する願いや思い出をツイートしたユーザー1名に限り、300万円分の旅行権利が当たるプレゼントを開始。こちらも本日(2014年3月6日)から開始し、2014年4月30日までが期間となる。香山氏は「300万円分の旅行権利は、何回かに分けても使っても、友人や家族と一緒に全部で使ってもよい」と紹介。加えて、16名に、Windows 8.1搭載の8インチタブレットが週2回プレゼントされる(図06)。

図06 「ツイートしてわがまま旅行プレゼント」の概要。旅行の権利やWindows 8.1搭載8インチタブレットが当たるキャンペーン

そして、旅行に関するコラムや旅先でのタブレット活用術など、多数のコンテンツを掲載したキャンペーン特設Webサイトを公開。旅行好きの女性を中心とした、各種キャンペーンを実施するという(図07)。

図07 「旅レット 8 キャンペーン」の公式サイト

続いて登壇したエイチ・アイ・エス 本社事業開発室 室長の山岡隆志氏は、自社のブランドイメージを高めるため、セールスプロモーションやコーマス誘導の施策として、キャラクターの設置やアプリケーション開発・提供に注力していることをアピール。同社は、「女子旅」と呼ばれる旅行好き女性のシェアが13%と高く、「集めて旅するCollect Traveler」アプリを提供することで、シナジー効果を期待できるとした(図08)。

図08 エイチ・アイ・エスの山岡隆志氏

「集めて旅するCollect Traveler」アプリに関しては、芸能人のSHELLY氏と、アプリケーション開発に参加した日本マイクロソフト女性社員によるデモンストレーションが行われた。このアプリは、自身が集めた旅行に関する情報をクリッピングし、ネットワーク環境が乏しい旅先でも参照することを1つの目的としている(図09)。

図09 「集めて旅するCollect Traveler」をデモンストレーションしながら、女性同士の話に花が咲くSHELLY氏(画面左)

アプリ内だけでなく、Webページの情報も共有チャーム経由でクリッピング可能。Webページを画面キャプチャするとURL情報も保持するため、ネットワーク環境が備わったホテルなどでは、最新の情報(Webページ)を参照できるという。そのほか、旅先で最初に訪れるホテルまでの地図をキャプチャしておく、さまざまな利用方法を提案。日本マイクロソフトの女性社員によると、「荷物が軽くなって欲しいという思い」を込めて開発したそうだ(図10~11)。

図10 Webページから情報をクリッピングする場合は共有チャームを利用する

図11 キャプチャしたWebページからWebサイトへジャンプする機能も用意

日本マイクロソフトと女子旅。一見すると相いれないように見えるが、香山氏いわく「Windows 8.1タブレットのユーザーはITリテラシーが高い層が多く、さらなるシェア拡大を目指すため、女性を対象にしたアピールを重視した」と、今回のキャンペーン背景を説明。なお、キャンペーンの特別協力パートナーとして、インテル、東芝、レノボ・ジャパンの名が並び、協力パートナーには、日本エイサー、ASUS JAPAN、デルも参加している。そのためか、会場には各社の8インチタブレットが展示されていた(図12)。

図12 会場には各社のWindows 8.1搭載8インチタブレットが展示されていた

「2014年内には、30パーセントのシェアを取りたい」と語る香山氏の希望どおり、今回のキャンペーンがWindows 8.1タブレットの販売促進につながるのか。現状では不利な立場と言わざるを得ないタブレット市場にあって、Windows 8.1タブレットのシェア拡大につながるのか。キャンペーン終了以降に出てくるシェアの数字、自分の周りや街中でWindows 8.1タブレットを持つ人をよく見かけるようになった…など、ウォッチしてみると興味深いかもしれない。

阿久津良和(Cactus)