FPGAベンダのLattice Semiconductorは1月30日、都内で会見を開き、来日した同社社長兼CEOのDarin G. Billerbeck氏が自社の現状、ならびに今後の方向性の説明を行った。
Lattice SemiconductorのPresident and CEOであるDarin G. Billerbeck氏 |
同社は1983年に設立されたFPGAベンダ。FPGA分野はXilinxとAlteraという2大ベンダがいるが、同社はその2社に次ぐポジションに位置し、2011年にFPGAベンチャーだったSilliconBlue Technologiesを買収し、低消費電力分野向けFPGAの技術を強化するなど、独自のポジションを築こうという動きを見せている。こうした動きもあり、同社の売り上げに占めるコンシューマ分野の割合は増加傾向にあり、2013年第3四半期には36%を占め、最大市場の通信分野(38%)に次ぐ規模にまで成長してきている。
「競合他社とどうやって対抗していくのかと良く聞かれるが、競合各社はハイパフォーマンスで高コストなものが多い。我々はその反対で、低消費電力かつ低コストなものを提供しており、そういった異なる特徴をアピールすることで優位性を確保することができる」(Billerbeck氏)と、他社との違いを強調し、それらが通信から産業(ISM)、コンピューティング、コンシューマと幅広い分野で実現できることが強みになるとする。
また、近年の流行となりつつあるIoT(Internet of Things)には同社も注目しているが、スマートフォンを含め、そうした小型携帯機器ではサイズや熱的な制約によりデザインが限られてしまうほか、さまざまな内外の高速通信(接続)インタフェース規格への対応や各種センサへの対応が求められ、設計の複雑さが増してきており、そうした環境がむしろ低消費電力FPGAにとっては追い風になるとする。さらに、ハイエンドの通信分野で培ってきたノウハウを産業機器向けに転用できるとし、「例えば、ハイパフォーマンスのデータ転送を実現するノウハウなどを、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)、マシンビジョンやコンピュータビジョンといった新たな分野で活用することが期待されるようになっている」とし、低消費電力のみならず、パフォーマンスでも十分活用できる範囲が広がっていることをアピールした。
同社の現在の主要ラインアップは低コスト、低消費電力の「iCE40シリーズ」、ミドルレンジ領域向け「MachXO3」、そして低消費電力を実現しながらハイパフォーマンスニーズにも対応可能な「ECP3シリーズ」の3種類がある。ちなみにMachXO3に関しては、同日付で256Ball caBGAパッケージを採用した3製品(XO3-L 2100/430/6900)の出荷開始がアナウンスされている。
同社はこうした低消費電力、低コストが求められる分野にフォーカスしていくという戦略から今後しばらくは逸脱するつもりはないとしており、逆にそうした市場での存在感を増すことを目指した取り組みを進めていく。例えば、プロセス技術1つとっても、ハイパフォーマンスを実現できるFinFETプロセスよりも、低コストが実現できるプレーナ型のプロセスを重視する。これにより、必然的に選択できるプロセスノードが決まってくるため、「値段と電力性能のバランスが取れている28nmプロセスが現状の選択肢」だという。また、将来的にはウェハレベルチップスケールパッケージ(WLCSP)のサイズを1.1mm2クラスにまで小型化を図り、さらなる低コスト分野や小型機器まで適用範囲を拡大したりすることを考えているという。さらに、大量生産を行っているカスタマについては、設計期間やアップグレードの期間を短縮したいというニーズがあることから、そうしたニーズに対応できるソリューションの提案を行っていくほか、品質の向上として、製造工程での不良率を100DPM(Defect per million)から20DPMへと引き下げることを明言している。
また日本市場に対しては、携帯電話の登場からスマートフォンへの進化といったような、日本が得意としてきた小型化・高性能化がLatticeのイノベーションの原動力になっているとし、さらなる小型・低消費電力ニーズに向けた1ドル未満で消費電力がμW単位のWLCSP製品を提供することで、ASIC/ASSP代替としてのFPGAの存在感を高めていきたいとしており、そうした取り組みにより日本企業のイノベーションを生み出す手助けができればとした。