マウスコンピューターのデスクトップPC、LUV MACHINESシリーズに、AMDの新しいプロセッサを搭載した新機種が登場した。AMDは、グラフィックス機能を内蔵するCPUを「APU(Accelerated Processing Unit)」と呼んでいるが、今回の新APUでは従来製品からさらにグラフィックス性能の強化が行われている。

今回、LUV MACHINESシリーズでAMDの最新APUを搭載した「LM-AR310S」(販売価格59,850円)を試用する機会を得たので、性能面を中心にその買い得度をチェックしてみよう。

マウスコンピューターの「LUV MACHINES」シリーズにAMDの新APUを搭載したモデルが登場

強力なグラフィックス機能を内蔵するAMDのプロセッサ

AMDは、かつては64ビットやデュアルコアなどの革新的な技術でインテル以上の成功を収めることもあったプロセッサベンダーで、現在でも自作PCユーザーを中心に根強いファンが存在するが、近年のメーカー製PCでは価格と性能を共に抑えたローコストモデル用のCPUとして採用されることが中心で、市場における存在感という点ではいまひとつ勢いに欠ける印象は否めなかった。

しかし、"Kaveri(カヴェリ)"の開発コードネームで呼ばれる今回の新APUに関しては、秋葉原のパーツショップでも品薄・売り切れが相次ぐなど、ユーザーの期待も非常に大きいようだ。AMDはRadeonシリーズを開発してきたGPUベンダーのATI Technologiesを買収し、Radeonの技術をCPUと融合させることで、より高性能なプロセッサの実現を目指してきた。このため、もともと同社のAPUが搭載する内蔵グラフィックス機能の性能には定評があった。

また、消費電力の大きいCPUの負荷を抑えながら高いパフォーマンスを得る方法として、グラフィックス描画以外の処理にもGPUを活用しようという動きが高まっており、その意味でも高性能なグラフィックス機能が統合されているAMDのAPUには注目が集まっている。新製品ではAPUに含まれるCPU、GPUの両方で新しいアーキテクチャが採用されており、全体としての性能アップが期待できる。

今回試用するLM-AR310Sでは、Kaveriの2モデル「A10-7700K」「A10-7850K」のうち、上位モデルの後者を採用している。動作周波数3.7GHzのクアッドコアプロセッサで、Turbo Coreテクノロジーにより、冷却能力に余裕があるときは最大4.0GHzでの動作が可能。また、メモリは4GB×2枚(PC3-12800)の構成で計8GB。また、低負荷時から高負荷時まで高効率な、80PLUS SILVER認証取得500W電源ユニットを搭載している。

※なお、LM-AR310Sのメモリと電源ユニットは、期間限定キャンペーンにより無償アップグレードされています。

GPUを使用するソフトでは価格以上の性能を発揮

何はなくとも、気になるパフォーマンスをチェックしていこう。今回の試用機には、Windowsエクスペリエンス インデックスの機能を持たないWindows 8.1がプリインストールされていたので、それに相当するWindowsシステム評価ツール(WinSATコマンド)を使用したが、CPU、メモリが共に7.6、グラフィックスは5.9という結果になった。グラフィックスの値がやや振るわないようにも思えるが、ドライバがまだKaveriの性能を十分に引き出せていない可能性もある。実用性については、次のゲームベンチマークで見極めてみることにしよう。

Windowsシステム評価ツール(WinSAT)
CPU 7.6
Memory 7.6
Graphics 5.9
Gaming 5.9
Disk 5.9

国産の著名タイトルとして「BIOHAZARD 6」「ファンタシースターオンライン2」「モンスターハンター フロンティア」「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」「ドラゴンクエストX」の各ゲームで性能をテストしたところ、1280×720ドットの解像度であれば、おおむね標準的な動作が期待でき、少し前に登場したソフトやドラゴンクエストXのように軽量なタイトルなら、フルHDでのプレイも十分視野に入る水準であることが確認された。

3DMark Vantage
Performanceプリセット
3Dmarks P7347
GPU SCORE 6655
CPU SCORE 10674
3DMark Vantage
GPU SCORE
1280×720 8712
1920×1080 4560
3DMark 11
Performanceプリセット
3DMark Score P2156
Graphics Score 2050
Physics Score 3652
Combined Score 1762
3DMark 11
Extremeプリセット
3DMark Score X611
Graphics Score 552
Physics Score 3625
Combined Score 628

3DMark Vantage

BIOHAZARD 6 ベンチマーク 1280×720 3029
1920×1080 1758
ファンタシースターオンライン2
キャラクタークリエイト体験版Ver 2.0
1280×720【描画設定3】 4825
1920×1080【描画設定3】 1941
モンスターハンター フロンティア
オンライン ベンチマーク 大討伐
1280×720 4623
1920×1080 2524
ファイナルファンタジーXIV:
新生エオルゼア ベンチマーク
キャラクター編
1280×720
【高品質(デスクトップPC)】
3104
1920×1080
【高品質(デスクトップPC)】
1627
1280×720【最高品質】 3042
1920×1080【最高品質】 1598
ドラゴンクエストX
ベンチマークソフト
1280×720【標準品質】 7432
1920×1080【標準品質】 6017
1280×720【最高品質】 6819
1920×1080【最高品質】 4529

負荷がやや高いBIOHAZARD 6(左)やファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア(右)でも1280×720なら標準的な動作が期待でき、フルHDでもゲームの実行自体は可能

CINEBENCHのCPUスコアを見ると、CPU単体の処理性能ではインテルの上位モデルにはまだ及ばない模様だが、実際のゲームソフトで得られるパフォーマンスとしては、インテル製CPUの内蔵グラフィックス機能を使用する同価格帯のデスクトップPCより高い。内蔵グラフィックスの性能としては、現在発売されているプロセッサの中で最も高いと見て差し支えないだろう。もちろん、単体のグラフィックスカードを搭載するマシンと比べると性能には差があるが、一昔前のエントリークラスのカードの性能は軽く超えており、従来のCPU内蔵グラフィックス機能からイメージされていた性能の水準とは別世界といっていい。今後ドライバの完成度が高まることで、さらに性能が向上する可能性もある。

CINEBENCH R11.5 OpenGL 35.33fps
CPU 3.57pts

CINEBENCH R11.5

これらのテストから、CPUとGPUの両方に中程度の負荷がかかる用途において、AMD APU搭載機はコストパフォーマンスの高い選択肢であるといえるだろう。このような用途としては、現在は主にゲームが考えられるが、それ以外にも画像や動画の編集ソフトなどでは、GPUによる処理の高速化に対応した製品が増えている。例えば、AdobeのPremiere ProなどではGPUを利用した高速処理がサポートされている。グラフィックスカードを買うほどの予算はないが、GPUの利用で快適性がアップするソフトを利用する、具体的にはライトゲーマーや、趣味で映像制作などを行うアマチュアクリエイターには、メリットの大きい製品と考えられる。