理化学研究所(理研)は去る2013年11月15日、脳科学を扱う部門の脳科学総合研究センター(BSI:Brain Science Institute)において記者懇談会を実施した。BSIそのものや、その研究成果、開発された技術などの紹介が行われ、施設見学なども行われた形だ。また最後には、BSIのセンター長で、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進氏の講演「脳科学研究における現状と今後の展望」も行われた(画像1)。ここでは、BSIの紹介と、利根川センター長の講演を中心にお届けする。

画像1。利根川進理研BSIセンター長

それでは最初にBSIについて紹介していここう。1997年10月に設立され、その設立目的は、「日本における脳科学研究の中核的研究拠点」というもの。利根川氏は、2009年4月1日からセンター長を務めており、人員数は357人でその内の62人が外国人研究者(2013年9月1日時点)だ。組織図は画像2の通り。41の研究室があり、そのほかに大学や企業などとの連携研究チームや連携センターなども設けられている。

画像2。組織図

BSIの特徴だが、まず脳科学をどうとらえているかというと、「人間とは何かを理解するための総合科学」とする。研究分野としては、生物科学、情報科学、人間科学の融合した形で、研究のスケールとしては、分子-細胞-回路-システム-行動-社会と非常に幅広い。現在重点を置いている研究としては、「神経回路機能の解明」、「健康状態における脳機能の行動の解明」、「疾患における脳機能と行動の解明」、「先端基盤に技術開発」の4点を掲げている。

また、国際性も重視されており、先ほど外国人研究者が62人と書いたが、その内訳は画像3の通り。また、海外のトップレベルの研究機関との連携も重視しており、例えば、MITとの連携であるRIKEN-MIT Center for Neural Circuit Geneticsなど、24件の国際協力(協定、共同研究)を行っている。

画像3。外国人研究者の内訳

そのほか、昨今の日本の研究機関は国が軽視しているために予算削減が響いて若手研究者を育てにくい、または研究者が育ちにくい環境となっていて問題視されているが、BSIでは若手研究者の登用と育成にも重点を置く。