Windows 8.1が10月にリリースされたばかりだが、すでにMicrosoftでは次期Windows OSの開発が始まっている。海外メディアの情報によると、その開発コード名として「Threshold」という名称が付けられたという。今週は来年登場すると言われている「Windows 8.1 Update 1 (仮称)」や、次期Windows OSとなる可能性が高いThresholdに関するレポートをお送りする。
OSの責任者に就任したTerry Myerson氏とは
本誌既報のとおり、次期Windows OSに関する情報が明らかになり始めた。執筆時点でMicrosoftは、これらの情報にコメントを述べていないため、あくまでも噂レベルであることを最初に述べておきたい。それでは一つずつ情報を整理していこう。
Microsoftウォッチャーとして有名なMary Jo Foley氏が、米ZDNetへ寄稿した記事「Microsoft's Windows future: One core, many SKUs」によれば、2014年春にはコード名「Spring 2014 GDR」と呼ばれている、Windows 8.1 Update 1が控えている。以前から噂されていたSuface Miniのリリースタイミングに合わせて開発を進めているという。
Foley氏はその後の記事で、当初2014年秋頃に予定されていたWindows OSのメジャーバージョンアップが撤回され、2015年春か2015年第2四半期頃になりそうだと述べた。その理由として同氏は、2013年7月に行われたMicrosoftsの組織再編により、オペレーティングシステム担当エグゼクティブ バイスプレジデントにTerry Myerson(テリー・マイヤーソン)氏が就任したことをあげた (図01)。
Myerson氏は現職に就く前、Windows Phone部門の責任者を務めていた人物だ。これらのことを踏まえれば次期Windows OSに、タブレットデバイス向け機能を搭載したWindows 8.1と、Windows Phoneの親和性を高める何らかの計画が加わるのは明らかだろう。
この件を裏付けるのが、Microsoftのデバイス&ステュディオ担当エグゼクティブ バイスプレジデントであるJulie Larson-Green(ジュリー・ラーソン-グリーン)氏の発言だ。同社が公開している議事録によれば、「We have the Windows Phone OS. We have Windows RT and we have full Windows. We're not going to have three. (Windows Phone OSとWindows RT、そして完全なWindowsがある。これらをすべて持つ必要はない)」と述べている (図02)。
同社がWindows Phoneデバイスを推進していることと、同じARMというプラットフォームを持つWindows RTとWindows Phone OSの存在を踏まえれば、Windows RTを廃止し、Windows Phone OSという一つのOSに統合すると受け取るのが自然だろう。Myerson氏が責任者として席に着いた時点で、この流れは必然となった。
2015年春に登場する「Threshold」とは
そして冒頭の話に至るのである。Foley氏の記事「Microsoft codename 'Threshold': The next major Windows wave takes shape」によれば、次期Windows OSは2015年春のリリースを目標に開発が進んでいる。コードネームは「Threshold (スレッショルド)」だ。"しきい値"と訳すのが一般的だが、同社のFPSゲーム「Halo」に登場する惑星の名前が由来だという。
その理由としてFoley氏は、AppleのSiriに対抗するためにMicrosoftが現在開発中のパーソナルアシスタントシステムのコード名「Cortana (コルタナ)」の存在をあげている。CortanaはHaloシリーズに登場する人工知能であり、ゲーム中ではナビゲーターとして常に登場しているからだ (図03)。
筆者自身は、Thresholdという単語が併せ持つ、"(物事の) 出発点"という意味も含めているのではないかと推察している。次期Windows OSはWindows 8/Windows 8.1とは異なるコンセプトで開発に取り組むという、Microsoftの意思表明と取れるのではないだろうか。
いずれにせよ現時点で明らかになっているのは、2014年春から2014年第2四半期に、Windows 8.1 Update 1 (仮称)のリリースが予定されていること、そして、次期Windows OSは2014年10月ではなく、2015年春を目標に開発が進められているということだ。
ただし、Foley氏は12月3日 (現地時間)に寄稿した記事「Microsoft's Windows future: One core, many SKUs」でエディション構成に関する情報を訂正している。Larson-Green氏の発言はWindows RTがすぐになくなるというものではなく、あくまでもビジョンを語ったものだという。
また、同記事ではThresholdで加わる機能にも触れており、Windowsコア (カーネル)の集約を主目的とし、ファイルシステムやメモリーマネージャー、といった"Windowsの味"といえる機能をプラットフォーム間で共有するという。
いずれにせよ、すぐにWindows RTの開発を終了するのではないか、というユーザーの憶測を打ち消すための情報といえるが、最終的にWindows RTとWindows Phone OSが統合されるのは自然の流れだろう。例えば以前は、Windows 9xとWindows NT系を統合するため、Windows 2000をリリースしている。Windows 2000はWindows Meの頃に完成したUIをWindows NT系に取り込んだOSだ。
現行のWindows 8.1とWindows Server 2012 R2のカーネルは同じものが使われており、同社のコンシューマーゲーム機「Xbox One」が搭載するOS「Xbox OS」もWindowsカーネルを採用。つまり、開発プロセスの単純化を目指すMicrosoftとしては、カーネル統合はごく当たり前の話なのである。
OSにラピッドリリース (短期で新バージョンを提供するリリース形態)を取り込むことを表明したMicrosoftだが、本命のThresholdを目にするのは、まだしばらく先の話となりそうだ。
阿久津良和(Cactus)