日本中から1500名以上のMATLAB/Simulinkユーザーが集うユーザーカンファレンス「MATLAB EXPO」。今年も10月29日に、東京・台場の「ホテル グランパシフィック LE DAIBA」にて開催される。MathWorks Japanが主催するようになり5回目という節目の「MATLAB EXPO 2013」のテーマは「複雑性に取り組む」であり、ナノテクからビッグデータまで、活用の幅が広がるMATLAB/Simulinkをどのように活用されているかを、原点に立ち戻って、来場者に理解してもらえるようなイベントとして再構築が図られたという。今回はそんな開催まであと少しとなったMATLAB EXPO 2013の個別セッションについて、MATLAB/Simulinkを、従来の製造業分野以外で使おうと検討している人などに向けて紹介していきたい。

イメージしやすい具体的な話題が盛りだくさんの各セッション

同日午後に開催されるテクニカルな話題が提供される個別セッションは大きく「入門編」、「信号処理・画像処理」、「通信・信号処理実装」、「テクニカルコンピューティング」、「モーターモーション制御 モデルベースデザイン実装」、「制御設計・検証」、「制御設計・モデルベースデザイン環境」の7つに分けられている。MATLAB/Simulinkの入門者には入門編のセッションが良いということは当たり前だが、機械設計などに携わる人は、「モーターモーション制御 モデルベースデザイン実装」、「制御設計・検証」、「制御設計・モデルベースデザイン環境」といった分野の話が最適となるだろう。こうした分野は、従来のMATLAB EXPOでも取り上げられていた話題なので、参加したことがある人なら、どういうセッションかイメージしやすいと思うが、今年は、"基本的な姿に立ち戻る"とのことで、これまでの汎用的な話から、よりユーザーがイメージしやすいアプリケーションに対する具体的な話が各セッションで提供される予定だという。

また、今回の新たな話題となる「信号処理・画像処理」、「通信・信号処理実装」、「テクニカルコンピューティング」の3つのセッションだが、信号処理・画像処理では、今話題のキーワードの1つである「コンピュータビジョン」に対して、MATLABでどういったことができるのか、といった話題を基礎編、活用編という2編構成でデモも交える形で紹介が行われるほか、今やあらゆる機器に搭載されるようになってきたセンサ各種が生み出す多種多様な信号の解析・処理手法をベーシックなものから、システムシミュレーションへの展開、ハードウェアへの簡易実装環境など、実地で役に立つ手法などが紹介される予定だという。

信号処理・画像処理分野の各セッションタイトル

さらに、通信・信号処理実装では、通信ソリューションエンジニアなどに向け、FPGAを用いた通信ソリューションを実現するための実装などを行うために、上流設計で使用するモデルとFPGA実装可能なモデルのギャップの解説や、FPGAベンダ大手のXilinxやAlteraが提供するARMコア搭載FPGAに対し、Simulinkを活用して、CおよびHDLコード生成により実装する設計手法などの紹介が行われる予定のほか、ルネサスシステムデザインの要素技術第一開発本部 ロジックIP開発部 主任技師である神谷衛氏による動画像向け画像IPコア開発に実際にHDL Coderをどうやって導入したのか、といったノウハウも紹介される予定だという。

通信・信号処理実装分野の各セッションタイトル

加えて、テクニカルコンピューティングでは、やはりこちらも話題のキーワードの1つである「ビッグデータ」時代の到来に合わせたトピックスが提供される。あふれかえるデータをどうやって活用できるものに変えていくのか、また取り込んだデータ処理の高速化手法や、データ解析手法の1つとしての「機械学習」など、データ分析担当者に向けた実用的な話題が提供される予定だ。特に機械学習は、東京工業大学大学院情報理工学研究科 計算工学専攻の杉山将 准教授がスピーカーとして登壇するセッションもあり、MATLABを用いた機械学習の実装法や応用事例などが紹介される予定だという。

テクニカルコンピューティング分野の各セッションタイトル

開発ターゲットとするシステムの高性能化、そして扱うデータの爆発といった面も含めて複雑さが増している現在。同社では、MATLAB/Simulinkを活用してもらうことで、そうした問題をシンプルにすることが可能になるとしており、そうした自分たちが抱える問題のシンプル化に向けた第一歩をMATLAB EXPO 2013で掴んでもらえる場として見てもらえればとしている。

なお、MATLAB EXPO 2013は無料で参加が可能であり、参加登録はすでに開始している。各セッションごとに定員があり、人気のあるセッションはすぐに埋まってしまう可能性が高い。特にMathWorksのエンジニアが話す講演以外にもパートナー企業や大学など、現場の人間による活用事例といった話も多く用意されており、自分の対象とする分野の企業がどのような形で活用しているのか、といったことを知ることができるのは大きな糧になるだろう。また、信号処理や画像処理、通信、実装/検証、テクニカルコンピューティングなどをテーマとした展示会場には同社のみならず30社のパートナー企業によるさまざまなソリューションの展示も行われているので、今、何らかの課題を抱えている人に対する答えが見つかる可能性が高い。開催まで残りわずか、参加してみようと思った方は、興味がわいたセッションに空きがあるかをタイムテーブルで確認し登録してみると良いだろう。

MATLAB EXPO 2013のタイムテーブル。各セッションごとに空きがあればチェックボックスにチェックを入れて来場登録をすれば、参加申し込みとなる