ワイルドな風貌に孤高の魂を宿し、あらゆる物質を切り裂く爪と驚異的な治癒能力を持つ、スーパーヒーローのウルヴァリンを主人公として描いた映画『ウルヴァリン:SAMURAI』が公開された。同作は、すでに全世界の興行収入が22億ドル(2200億円)を突破しており、世界的な大ヒット作となっている。そんな作品でひとりの日本人モデルが女優デビューを果たした。パリコレクションなどで活躍するトップモデルのTAOだ。彼女はなぜ演技の世界に飛び込んだのか。その理由を聞いた。

映画『ウルヴァリン:SAMURAI』で女優デビューしたTAO

――同作で役者デビューされたということですが、"女優TAO"としてインタビューを受ける心境はいかがですか?

新しいことにチャレンジしている感じがします。

――撮影終了からかなり時間がたっていると思うのですが、今、改めて撮影を振り返ってみての感想を教えて下さい。

懐かしく感じます。こうしてインタビューを受けながら「ああだったなぁ」、「こうだったなぁ」と撮影の様子を思い出すんですけど、本当に楽しかったです。あんなに楽しかった数カ月は人生で初めてでした。

――撮影期間はどのくらいだったのですか?

シドニーから始まって、途中で日本に二週間くらい滞在して、全部で五カ月弱くらいだったと思います。日本は、東京と広島の鞆ノ浦というところで撮影を行いましたね。

――本作はハリウッド映画ですが、物語の舞台が日本ということで、少しは安心して臨めたんではないかと思うのですが。

はい。私の役柄であるマリコの祖父のお葬式シーンを増上寺で撮影したんですが、実際にそこには私の祖父のお墓があるんです。昔から法事で何度も行ったことがあって、なにか不思議な共通点を感じました。

――それは面白い縁ですね。

そうなんです。スタッフの方を「トイレこっちだよ」って案内できるくらいでした(笑)。

――今回、演技に挑戦したキッカケを教えて下さい。

きっかけはヒュー・ジャックマンとジェームズ・マンゴールド監督です。それまで私はお芝居をやろうと思ったことがなかったんです。でも、ヒューの恋人役と聞いて、それならやってみたいと思い、オーディションを受けました。ヒュー以外のハリウッドスターをいいなと思ったことがないくらい、彼を尊敬しているんです。そして、2回目のオーディションでジェームズ・マンゴールド監督と出会い、"この人と仕事がしてみたい"、"芝居をやってみたい"と思ったんです。だからこの二人との出会いが私にとって大きかったですね。彼らに出会えたからこそ演技に挑戦する気になれたし、夢中になれたんだと思います。

――H・ジャックマンさんのどんなところに惹かれたんですか?

彼の出演作を初めてみたのは『ソードフィッシュ』(2001年)で、作品を観たときに「この人凄くカッコいいな」と思ったんです(笑)。その後、ブロードウェイにも出演するような、歌も踊りもできるエンターテイナーだということを知り、自分がミュージカルのファンだったことも重なって、ますます好きになりました。

――そんなH・ジャックマンさんと初めて会ったときの感想を教えて下さい。

初めて会ったのは最終オーデションのときでした。ポロシャツに短パンという凄くラフな格好で、それまで劇中のヒューしか観たことがなかったので、見慣れない感じがしてビックリした記憶があります。そして、ガタイがよくて背も高く、それでいて、とても気さくで優しさのオーラを纏っていました。

――演技をしているときとのギャップがかなりあったということですかね。

ウルヴァリンは怒りを体現しているようなキャラクターだからということもあるのですが、撮影中、彼はずっと眉間にシワを寄せているんです。彼と戦い合うシーンのある方なんかは、「戦っているシーンの彼は本当に恐い、本当に殺されるんじゃないかと思うくらいだよ」と話していました。でも、カットの声がかかって椅子に腰掛けた途端、凄く優しい普段のヒューに戻るんです。それが不思議でたまらない感じでした。さらにお化粧を落として、オフの状態のヒューに会うと「この人誰?」って思うくらいのギャップがありました(笑)。

旧友と再会するために日本を訪れたウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)。そこで、日本人女性のマリコ(TAO)と恋に落ちるのだが、その先に待っていたのは彼の人生を大きく変えてしまうほどの出来事だった。初めて"限りある命"を意識した彼は、その後、さらなる過酷な運命を辿ることに……