ボーカルのピッチ修正からタイミングの微調整まで意のままに …… "Flex Pitch"

こちらも今回のバージョンアップの大きな目玉、その2、"Flex Pitch"。これまでも、他のDAWやプラグインなどで似たような画面でのエディットは経験済みの筆者だが、Logic Pro X上で実際に操作してみて、よりスマートなエディットが可能なのだと感じた。まずはこちらの画面を見てほしい。

Flex Pitch

これはヴォーカルの波形をFlex Pitchで分析したものだが、左のピアノロールに対応した音程が表示されているのが分かるだろう。画面右寄りに青白くハイライトされているのが現在エディット中のピッチで、完璧なピッチからのズレも視覚的に表示され、問題のある箇所も一目瞭然。四角い枠の周りに配置された6つの点をそれぞれドラッグすることによって、「ピッチ」「フォルマント」「音量」「ドリフト(しゃくり加減)」などが一瞬の内に調整可能だ。(複数波形選択・同時エディットも可能)そう、感の良い方なら、ここでも各操作子への動線が最小限に抑えられていることに気がついただろうか。他のプラグインソフトのように、ツール交換のためにいちいち画面外に出る必要がないのだ。音質変化も最小限に抑えられ、内視鏡を使った外科手術のような微に入り細を穿つエディットから、大鉈を振るうエフェクティブなアクションまで自在にこなす…そう、それがこの"Flex Pitch"の魅力なのだ。

音程以外にタイミングの補正も行える

複数のトラックを統合してコントロール …… "Track Stack"

この"Track Stack"という新しいフォーマットは、今までのバージョンの「フォルダ」に似たコンセプトを持つが、より使いやすく制作者の立場に立ったコントロール手法だ。

例えば、生ドラムのマルチトラックや、ヴォーカルパートなど、従来ではトラック数が嵩み、画面を見づらくしていたこれらの要素を整理、サブミックスを素早く作成したり(ここまではフォルダの概念にほぼ同じ)、異なる音源をレイヤーして重厚な音源を作成、これも"Track Stack"にまとめ、パッチとして保存することにより、あらゆる局面で即座にオリジナルセッティングを呼び出すことも可能だ。

Track Stack

また、サブミックス内のボリューム調整も、ミキサー画面に飛ぶことなく、波形やMIDIデータ左側にあるトラックヘッダにて、その場でアジャスト。制作に集中できる細かい配慮も嬉しいところだ。しかしこの便利さ、言葉で表現するには難しい。ぜひ自らの手と耳で、その良さを存分に味わって欲しい。

さらなる進化を遂げたMIDIエフェクト …… "Arpeggiator"

今までのバージョンにもアルペジエータは存在したが、従来はエンバイロメントの画面で、アルペジエータのオブジェクトを作成&結線し…と手順を踏む必要があった(これはこれで自由度が高くて良かったが)、この度のバージョンアップで強力なMIDIエフェクトとなっての登場だ。

Arpeggiator

様々なケースを想定して作られた、多彩なプリセットを選ぶもよし、単音からコードまであらゆるベロシティーで切り替えられる有機的なアルペジオを最大128ステップまで制作可能。また、このアルペジエータ以外にも、Chord Trigger、Modifier、Randomizerなどなど、合計9種類のMIDIエフェクトを搭載、それらを単体で使用するもよし、複数のMIDIプラグインを連結させて、より複雑なデータを瞬時に作成可能だ。使いやすさも相まって、楽曲に華を添える良きアイテムといえるだろう。(※JavaScriptを使って、完全オリジナルのMIDIエフェクトも作成可能。)

合計9種類のMIDIエフェクトを用意している

いかがだっただろう? 今回はUIの変更とともに、目玉となる新機能を4つ紹介してきた。次回はプラグイン周りを中心に、さらにディープなLogic Pro Xの魅力に迫っていきたいと思う。