早稲田大学(早大)は7月29日、グリーン・コンピューティング・システム研究開発センターにて「情報・機械系融合ワークショップGCOE報告会」を実施し、早稲田大学で現在研究中の各種ロボットを含めた講演と、研究室見学ツアーを実施し、現在開発・研究で使用中の早大製ロボットたちの披露を行った。その見学ツアーで見たロボットたち6種類7体を紹介する(画像1)。

画像1。今回訪れた研究室は、とても雰囲気のあるちょっとした坂道を上っていった先にある

ヒューマノイドロボットというと、どうしても登場がセンセーショナルだったため、現在ではホンダのASIMOがその代名詞的な存在として見られることが多いが、ヒューマノイドロボットの研究・開発の元祖といえば、早稲田大学だ。日本のヒューマノイドロボット研究の父である故・加藤一郎教授が1970年に学科横断プロジェクトとして「WABOT(ワボット:WAseda roBOT)プロジェクト」をスタートさせて以来、現在までさまざまなロボットが開発されている。実に40年以上におよぶ歴史があるわけで、日本の(というよりも世界の)ヒューマノイドロボット研究を語るのに、同大は絶対に外せないのだ。

ちなみに現在はRTテクノロジーを活用した医療福祉機器なども研究されており、今回は2つほど披露されたが、やはりまずはヒューマノイドロボットから紹介しよう。今回はメディアに初お披露目というロボットはないが、マイナビニュースでは紹介したことがないロボットたちである。

最初は、WABOTから続く早大のヒューマノイドロボットの1つで、理工学術院の高西淳夫教授の研究室で研究・開発が進められている「WABIAN(Waseda Bipedal humANoid:早稲田二足型ヒューマノイド)」シリーズの「WABIAN-2R」(2RはNo.2 Refinedの略)と、そのWABIANシリーズで培われた技術と、今回は映像で紹介された、上半身型の情動表出ヒューマノイドロボット「WE-4RII(Waseda Eye - No.4 Refined II)」の技術を組み合わせた「KOBIAN-R」だ。

WABIANシリーズは「WABOT-1」(画像2)、「WABOT-2」(画像3)、「Hadaly-1」、「Hadaly-2」という具合で続いてきたヒューマノイドロボットの最新の研究プロジェクトので、1997年から研究がスタートし、現在も続いている。WABIAN-2R(画像4)は2006年に登場し、以来細かなアップデートを続けられている。特徴の1つがヒトと同様に「骨盤(腰に2自由度ある)」が存在すること(画像5)、つま先があること(ただし、今回の展示ではそのつま先は外されていた)から(画像6)、ロボットにありがちな「ヒザを曲げて歩く」をする必要がなく、ヒザの伸展歩行、つまりヒトと同じ歩き方ができるのである(動画1)。また、スポンジの上のような非常にバランスの取りづらい場所もWABIAN-2Rは歩くことが可能だ(動画2)。スペックは以下の通り。

  • 全高:1500mm/重量:64kg(バッテリ込み)※1480mm/63.8kgという資料あり
  • 自由度:41(首3、手3×2、腕7×2、体幹2、腰2、脚6×2、足1×2(受動))
  • センサ:6軸力覚、フォト、磁気式エンコーダ、ジャイロ
  • アクチュエータ:DCサーボモータ
  • 減速機構:ハーモニックドライブギア、タイミングベルト/プーリ
  • バッテリ:リチウムイオン

画像2(左):右が"伝説"のWABOT-1。その左は、早大と日立製作所が共同開発した2足歩行ロボット「WHL(Waseda Hitachi Leg)-11」。WABOT-2と共に1985年のつくば万博に出展された。画像3(右):WABOT-2。つくば万博に出展され、曲を弾いてみせた

画像4(左):WABIAN-2Rの全身。150cmほどなので威圧感はない。画像5(中):腰部(骨盤部分)の拡大。これとつま先によりヒザを伸ばした歩き方が可能。画像6(右):今回は外されていたが、本来は写真のつま先が曲がる足部が装着される。足部はWABIAN-2R用とKOBIAN用で異なる模様

動画
動画1。WABIAN-2Rがヒザを伸ばして歩く様子(動画を撮影したもの)
動画2。WABIAN-2Rがスポンジの上で歩く様子(動画を撮影したもの)

一方のKOBIANは、1995年(1996年という資料もあり)から始まった情動表出ヒューマノイドロボットWEシリーズの内、2004年に完成したWE-4RII(画像7)を上半身として、WABIAN-2Rの下半身に統合して2007年に開発された(WE-4RIIには「アイちゃん」という愛称がある)。2010年には自由度数の増加などの改良が施され、現在のKOBIAN-Rとなった(画像8)。全身で65の自由度があり、表情だけで24自由度がある(画像9)。表情は、怒り、嬉しい、驚き、ムカムカ、悲しい、怖い、困惑の7種類(動画3・4)。

  • 全高:1470mm/重量62kg
  • 自由度:65(頭(表情)24、首4、手4×2、腕7×2、体幹1、腰2、脚6×2)
  • 表情の自由度:24(目3、まぶた5、眉毛8、唇7、あご1)
  • センサ:カラーCMOSカメラ、コンデンサマイク、力、ガス、6軸力覚
  • アクチュエータ:DCサーボモータ、超音波アクチュエータ
  • バッテリ:リチウムイオン

ちなみにWE-4RIIは、全高970mm、重量59.3kg、59自由度となっている。

画像7(左):WE-4RII。ボールを目で追える。画像8(中):KOBIAN-R。こちらも、身長はWABIAN-2Rとだいたい同じ。画像9(右):顔のアップ。顔のサイズは高さ210mm×幅150mm×奥行き180mm。電源の入っていない状態でも結構豊かな表情をしている

動画
動画3。KOBIANの表情(動画を撮影したもの)
動画4。KOBIANの全身での感情表現(動画を撮影したもの)