コンビニの店頭には、様々な種類のエナジードリンクが並んでいる。「栄養ドリンク」とは違った新しさが若年層を中心支持されているが、最近では日中のリフレッシュ目的にも飲める商品が登場しているという。
エナジードリンクとは、疲労回復を目的に飲用するのが一般的だと思っている方も多いかもしれない。一見どれも同じような飲み物に見えるが、どのような違いがあるのだろうか。エナジードリンク事情に詳しい、味香り戦略研究所の味ブランド戦略部部長 兼 味覚参謀の菅慎太郎氏に話をうかがった。
そもそもエナジードリンクって何?
――「エナジードリンク」という飲料は、どのように定義されるのですか?
菅さん「ここ2~3年に出てきたドリンクです。明確な定義はありませんが、従来製品の例を挙げると、オロナミンCやデカビタのような飲料です。ただしこれらの健康飲料は、ビタミンCやクエン酸を補給するという機能性が前面に出ていたのに対し、エナジードリンクは、カフェインなどふだん飲み慣れているドリンクに健康要素がプラスされたものです」
――「エナジードリンク」と、従来の健康飲料や栄養ドリンクとの違いは何でしょうか?
菅さん「エナジードリンクは、日常飲むことを想定しているので、薬っぽさをいかに排するかというところに重きが置かれています。また、中身の飲みやすさはもちろん、飲用シーンや持ったときの缶のデザインも含めて、飲んでいるところを見られるということを意識した『スタイリッシュさ』が求められています」
――最近「エナジードリンク」が人気ですが、その理由は?
菅さん「ソーシャル時代の今は、物的充足よりも心的充足が求められており、エナジードリンク製品も体の健康以上に心の健康のチャージに重きが置かれているためではないでしょうか。
例えば、なぜスターバックスコーヒーがはやっているか考えてみましょう。中身(コーヒー)はもちろんですが、インテリアや環境、"スタバでコーヒーを飲む"というスタイル自体が価値観として捉えられているからであると考えられます。つまり、コーヒーやケーキなどで空腹を紛らわすという身体的充足があるとともに、『スタバでおしゃれな時間をすごした』という精神的な充足が、利用者に支持されているのです」
エナジードリンクはリフレッシュにも最適
――エナジードリンクはどのようなシーンで飲用されているのですか?
菅さん「エナジードリンクが登場した当初は、夜やクラブシーンで一定の支持を得ましたが、ここ1年ほどは日常生活での飲用が増えており、コンビニでの販売も広がりました。元々若年層の飲用が多いですが、中でも女性の飲用率が上がってきています」
――なぜ、エナジードリンクが女性の支持を集めているのでしょうか?
菅さん「気合いを入れる、気持ちを切り替えるために飲む人が、働く女性を中心に増えているからではないでしょうか。また、スタイリッシュに飲めるため、エナジードリンクは女性のニーズに合致しています」
――女性の支持が高い飲み物として紅茶や緑茶が挙げられます。これらとの違いは何ですか?
菅さん「紅茶の場合、渋みがありますよね。舌に残りますし、比較的味が重いので継続飲用がしにくいドリンクだと言えます。緑茶等の場合はミネラルウォーターと同じく日常生活に浸透していますので、飲みやすい反面、メリハリが効きません。
ですので、喉が渇いたときはお茶、気持ちが渇いたときのエナジードリンク、というようにスイッチングしているのが現代のビジネスパーソンの飲用形態だと思われます」
――エナジードリンクにも、様々なバリエーションがあるのでしょうか?
菅さん「主に苦味があるものと酸味があるものに大別できます。それをわかりやすくまとめたのが以下の表です。
――味によって飲用シーンが変わってくるのですね。詳しく教えてください。
菅さん「酸味(=クエン酸)の強いものは、一日の疲労回復ということで夜の飲用が想定されます。一方、苦味の強いものは、コーヒーと同様、朝の目覚め、気持ちの切り替えという働きがあります。
そうした用途に合わせて各社製品を分析し、アンケート調査と合わせて分類をしたところ、実際に飲まれている商品とその中身が一致していることがわかりました」
――エナジードリンクの女性支持がここ1,2年増えているということですが、この表の分布だと、どのシーンの飲用が広がっているのでしょうか?
菅さん「かつてはクラブシーンなど、夜型だったニーズが日中の時間帯に広がってきています。日中は若年層や女性にとどまらず、更にその上の層も含めた幅広い支持を拡大しています。各飲料メーカーも注目している時間帯です」
「飲み方」にも注目が集まる
――改めて、日中にエナジードリンクを飲むことの最大のメリットは何ですか?
菅さん「生活スタイルが変化している現代では、自分の体だけでなく、心とどう対話しながら食生活なり健康を考えていくかということが重要です。特に若年層には、アニメ・ゲーム文化の影響もあって、"燃料をチャージする"という感覚でエナジードリンクに親しんでいる人が多いようです。
そうしたエンタメ性が製品には問われていて、飲料メーカー業界のトレンドにもなっています。今はおいしい、健康にいい、だけでは売れないのです。飽食の時代に心の空腹を満たせるのがエナジードリンクの最大のメリットだと考えます」
――成分や効用だけでなく、どう飲むかというスタイルも大事だということですね。
菅さん「そうですね。例えば、先述の表で昼間の位置に分類されている『リフレッシャーズ』は、スタバのブランドが持つ"カフェでの気分転換"、"ゆったりとする"など既存のイメージが付加され、"栄養を取る"、"気持ちを上げる"など、限定的だったエナジードリンクの可能性を拡大する役割を果たしていると思います」
――消費者も飲用シーンに合わせて、どのエナジードリンクを飲むか選択していく必要がありますね。
菅さん「おいしいだけでは記憶に残らないし、エナジーという位置づけを持たなくなってきてしまいます。ちょっとクセのある、ズレた感じが自分に対する変化を呼び起こします。"エナジーを補給する"という感覚で、日中オフィスでの飲用がこれから更に増えていくでしょう」
「スターバックス リフレッシャーズ」詳細
今回インタビューの中ででてきた「スターバックス リフレッシャーズ」は、6月25日より全国の「セブン-イレブン」で先行発売されていたエナジードリンク。価格は200ml入りで191円(税別)。ラインナップは「スターバックス リフレッシャーズ・クールライム」と「スターバックス リフレッシャーズ・ベリーベリーハイビスカス」。
「スターバックス リフレッシャーズ・クールライム」は、ライムとミントの味と風味が特長的なドリンク。ライムのすっきりとした味わいが強く、後味がとてもさわやかだ。
「スターバックス リフレッシャーズ ベリーベリーハイビスカス」は、その名の通りベリー味のドリンク。ハイビスカスの甘い香りが特長だ。炭酸も強すぎず、グイグイ飲むことができる。甘酸っぱい味わいで、眠気を吹き飛ばしてくれる効果も期待できそうだ。