品切れ続出の大人気となったデアゴスティーニ・ジャパンの週刊『ロビ』。全70号のパーツを組み立てるとフレンドリー・ロボット「ロビ」が完成するというものだが、その開発を手がけた高橋智隆氏の個展が現在開催中だ。

「ロボ・ガレージ10周年EXPO×柏タカシマヤ開店40周年記念 ロボットクリエーター 高橋智隆 展」がそれで、会場は柏タカシマヤ地下2階の催会場、会期は4月24日(水)から5月6日(月・振休)まで。入場料は一般500円、学生200円、小学生未満無料となっている。

「ロボットクリエーター 高橋智隆 展」は柏タカシマヤにて5月6日まで開催されている

優れたデザイン性で評価される高橋氏の国内初個展

今年で開業40周年を迎える柏店では「感謝・感動・未来」をテーマに様々なイベントを予定しており、その一環として高橋氏にオファー。氏が設立したロボ・ガレージもちょうど10周年ということで話がまとまり、今回の展覧会が実現したとか。展示には「"ロボットと暮らす未来"を、子どもから大人まで沢山の人にイメージして欲しい」との想いを込めたという。

関係者を招いてのレセプションでの1コマ。左から、展覧会を企画した高島屋柏店宣伝部の高田氏、同店店長の牧野考一氏、ロボ・ガレージ高橋智隆氏

展覧会開催とロボ・ガレージ10周年の御礼の言葉を述べる高橋氏

これまでも高橋氏のロボットが何体か展示されることはあったが、国内での本格的な個展開催は初めて。会場には、「クロイノ」や「ロピッド」などロボ・ガレージから発表されたオリジナル・ロボットをはじめ、パナソニック乾電池のマスコット・ロボット「エボルタ」シリーズ、ロボカップ世界大会5連覇を果たした「VisiON(ヴィジオン)」シリーズなど、高橋氏がこれまでに手がけたロボットたちが勢ぞろい。

もちろん、週刊『ロビ』のコーナーもあり、まだ4体しかないという「ロビ」の完成体もお披露目されている。ロビを組み立て中の人は要チェックだ。

さらに、打ち上げが近づき要注目の国際宇宙ステーションでのロボット実験「きぼうロボットプロジェクト」の最新情報も展示。高橋智隆ファンはもちろん、ロボットファンなら必見の展覧会と言えるだろう。

会場風景

会期中にはトークショーやワークショップも開催。特に5月3日には高橋氏のトークショーも開催される

また、展覧会に合わせて、高橋氏のトークショーも開催。4月27日(木)の1回目に続き、2回目が5月3日(金・休日)15時に行われる。参加希望者には、当日10時より柏タカシマヤT館3階エントランスにて、先着130名に整理券を配布。なお、トークショー会場は展覧会場とは異なり、柏タカシマヤステーションモールS館隣りの「TKPシアター柏」となっているのでご注意を。

また、高橋氏が顧問を務めるヴイストンによるロボット・デモンストレーションとワークショップも、展覧会場横のスペースで2日から6日まで毎日開催される。デモンストレーションは、第1部10:30~10:50、第2部14:00~14:20、第3部17:00~17:20の1日3回。

ワークショップは事前の申し込みが必要で、各回定員30名、有料(プログラムによって材料費が異なる)となっている。詳細は柏タカシマヤWEBサイトにあるPDFファイルで確認して欲しい。

さて、ひと通り展覧会の基本情報をお伝えしたところで、以下、見どころをまとめたフォトレポートをお届けしよう。

高橋氏とロボ・ガレージ10年の歩み

会場に入ると、まずはパナソニック乾電池のマスコット・ロボット「エボルタ」君がお出迎え。2008年にグランドキャニオンの高さを登り切る長持ち実証実験に挑戦した初代モデルだ。

グランドキャニオンに挑戦した初代「エボルタ」君がお出迎え

最初のセクションとなる「Section1 ロボットクリエイター 高橋 智隆」では、高橋氏の誕生から現在までをまとめた年表と、ゆかりのアイテムを展示。ロボットイメージの原体験となった『鉄腕アトム』、ガンダムやマクロスのプラモデル作りや、釣りと道具作りに熱中した少年時代など、高橋氏のルーツも垣間見ることができる。

取材時に行われた会場ツアーで、高橋氏は「子供の頃に影響を受けた人たちといま仕事ができているのが嬉しい。同じように、この展覧会をきっかけにロボット開発者を目指す子供たちが現れてくれれば」と語った。

高橋氏が5歳の時に初めて作ったという「エメロン(?)ロボット」の写真

高橋氏自作のリールとルアー。大きな目のルアーはロボットの顔に通じるものが

続く「Section2 秘密工房のヒミツ」では、部品ケースが壁一面に積み上げられた、高橋氏のロボット製作現場を再現。机の上には、工具やスケッチ、ガソリン代わりのレッドブルなどが散らばる中、足裏の電磁石で鉄板上を歩く「電磁吸着歩行」システムを採用した最初期のオリジナル・ロボット「マグダン」も展示されている。

机の上には、2001年開発のオリジナル・ロボット「マグダン」が

これまた高橋氏の自作によるロボット用キャリングケースにも注目

「ロボットギャラリー」には、「ロビ」をはじめ高橋氏のロボットが一堂に!

「Section3 ロボットギャラリー」では、高橋氏がこれまでに手がけたロボットたちが勢ぞろい。その多くが四面ガラスケースに展示されており、細部までこだわリ抜いたデザインを様々な方向からじっくりと堪能することができる。

このセクションの最初にあるのが、デアゴスティーニ・ジャパン 週刊『ロビ』のコーナー。ここにロビの完成体も展示されている。

毎号組み立てていくのを楽しみにしている方も多いと思うが、完成体はまだ4体しかないそうで、これまで一般に披露される機会はほとんどなかった。「ロビ開発過程」として、スケッチや頭部のプロトタイプも展示されているので、ロビファンは必見だ。

まずは大人気の「ロビ」のコーナー

「ロビ開発過程」のケースには頭部のスケッチや検討用のモデルが並ぶ

完成体はまだ全部で4体というロビだが、ケース展示の他に、デモ用にもう1体が登場!

取材時には、高橋氏自らによるロビのデモも行われた

ロボ・ガレージから生まれたスター! オリジナル・ロボットたち

ロビのコーナーの奥には、ロボ・ガレージのオリジナル・ロボットたちが並ぶ。"電磁吸着歩行"の最終型で鉄腕アトムをモチーフにした「ネオン」。米『TIME』誌で紹介され、高橋氏の名を世界的なものにした「クロイノ」。スリムなボディでモデルウォークをこなす女性型の「エフティ」。高い運動性能で"走る"ことが可能になった「ロピッド」。どれもロボ・ガレージのスターたちと言えるだろう。それぞれに搭載された特徴的な技術もパネルで解説されているので、そちらもぜひチェックして欲しい。

2003年開発の「ネオン」。「電磁吸着歩行」システムを搭載したラジコン・ロボット

2004年開発の「クロイノ」。米「TIME」誌で紹介され、高橋氏の名を世界に轟かせた

2006年に開発された女性型の「エフティ」。しなやかスリムなボディでモデルウォークもこなす

2007年に京商から発売された「マノイ PF01」。クロイノを元に量産キット化

2009年開発、高い運動性能を誇る「ロピッド」。ライオンの洗剤「ナノックス」のCMにも色を変えて出演

「ロボカップ」V5を達成した「VisiON」シリーズも揃い踏み!

高橋氏がデザインし「ロボカップ」で5連覇を果たした、TeamOSAKAの「VisiON(ヴィジオン)」シリーズも一挙に展示されている。

ロボカップは"西暦2050年までに、人間のサッカーの世界チャンピオンチームに勝てる、自律型の人型ロボットチームを作る"ことを目標に毎年開催されている世界大会。

TeamOSAKAは、このロボカップ出場のために、ヴイストン、大阪大学 石黒研究室、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)、そして高橋氏のロボ・ガレージなどで2003年に結成された産学連携チームだ。2004年から2008年まで毎年、VisiONシリーズの新型機を開発してヒューマノイドリーグに出場、5年連続で優勝を果たす快挙を成し遂げた。

その歴代モデル5体が揃い踏み。来場の際は、毎年どのように進化していったのか、じっくりと観察してみて欲しい。

2004年優勝の初代「VisiON」。全方位カメラを搭載した頭部が特徴

2005年の優勝機「VisiON NEXTA(ネクスタ)」。ボディの傷がロボカップの激戦を物語る?

2006年の優勝機「VisiON TRYZ(トライズ)」。全身ブラック

2007年の優勝機「VisiON 4G」。足元を見るためのサブカメラが搭載された

2008年の優勝機「VisiON Vgos(ヴィーゴス)」。シリーズ最終型にして頭部の全方位カメラを廃止し、前方カメラ1台のみを搭載

乾電池じかけの小さなチャレンジャー! - 「エボルタ」シリーズ

展覧会場を入ってすぐの場所に2008年のグランドキャニオンチャレンジ用モデルが展示されていたが、ロボットギャラリーの奥にも、エボルタ乾電池の長持ち実証実験用に作られた「エボルタ」シリーズがまとめて展示されている。

2009年のル・マン24時間耐久、2010年の東海道五十三次走破、2011年のハワイ・トライアスロンと、それぞれのチャレンジに合わせて作られたモデルは、どれも小さなものではあるが、工夫が凝らされている。

また、「Section4 ロボット シアター」でも、チャレンジのムービーなどが上映されているので、そちらも忘れずに観ておきたい。

2009年のル・マン24時間耐久走行に挑戦した「エボルタ ル・マン」

2010年の「エボルタ 東海道」。充電式エボルタ電池を搭載、1日1回の充電で東京から京都まで東海道五十三次500kmを走破

2011年の「エボルタ トライアスロン」はラン用とバイク用を展示

そして、宇宙へ - 今年打ち上げられる宇宙用ロボットの最新情報も

最終セクション「Section5 そして、宇宙へ」では、「きぼうロボットプロジェクト」の最新情報を紹介。同プロジェクトは、高橋氏と、電通、東京大学先端科学技術研究センター、トヨタ自動車が共同で進めているもの。

今夏、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」ヘ向けて宇宙用ロボットを打ち上げ、今冬には日本人初のISS船長となる若田光一氏と対面。世界初となる、宇宙での人とロボットの対話実験を実施する予定だ。

ネーミングは一般公募により、宇宙用ロボットは「KIROBO(キロボ)」、地上用およびバックアップ用ロボットは「MIRATA(ミラタ)」と決定。取材時にはつくばのJAXAで実験中ということで展示されておらず、残念ながら対面することはできなかったが、ここでもスケッチと頭部の開発モデルが展示されているので注目。

「Section5 そして、宇宙へ」では、「きぼうロボットプロジェクト」を紹介

宇宙用ロボットのスケッチや頭部の開発モデルを展示。取材時は残念ながらお留守

そして会場のラストを締めくくるのは、「15ネンゴ、アナタハロボットトクラシテル。」と「高橋智隆に聞く10の質問」という壁面展示。ここもしっかり読みこめば、高橋氏の考えるロボットの近未来ビジョンを知ることができるだろう。

展覧会のラストには高橋氏の近未来ビジョンが。「iPhone9には手足頭が生えているはず」と予言!?

以上、駆け足で展覧会の内容をレポートしてきたが、いかがだっただろうか。さほど広い会場ではないものの、現物のロボットたちを一度に見られる貴重な機会ということで、ロボット好きは観て損ナシの内容だ。ゴールデンウィーク後半に突入し会期も残りわずかとなったが、柏まで行ける方は、ゼヒ実際に足を運んでみて欲しい。