2013年の連ドラ第一弾、1~3月クールでは、『とんび』の最終回視聴率が20%を超えたほか、胸に響く名ゼリフの多かった『最高の離婚』、ファンタジーな設定ながら実は深いテーマだった『泣くな、はらちゃん』など、ドラマ好きをうならせる作品が続出。好スタートに続く4~6月クールは、新年度のスタートであり、意欲的なチャレンジ作品がラインナップされた。

TBS系列の連続ドラマ『空飛ぶ広報室』で主演を務める新垣結衣

たとえば、『ガリレオ』は福山雅治の相棒を吉高由里子に変え、『雲の階段』は主演に同枠『家政婦のミタ』父親役の長谷川博己を起用、『ダブルス』は伊藤英明&坂口憲二の熱血俳優W主演で、『35歳の高校生』では米倉涼子がミニスカ女子高生など、いかにも攻めの姿勢が明確な作品ぞろい。 今回もドラマ評論家の木村隆志が、全作品の初回放送をウォッチ。俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていきます。

今クールの主な傾向は、[1]フジの水10枠が復活 [2]"ポスト『相棒』"は男女コンビ [3]変化球学園ドラマ [4]ミステリアスな主人公 [5]劇作家の脚本の5つ。

傾向[1] フジの水10枠が復活

TBSに惨敗が続いた日曜9時枠から撤退したフジテレビが、今度は水曜10時枠で日テレに勝負を挑む。最初のバトルは、家族問題がテーマのフジ『家族ゲーム』と、医療ミステリーの日テレ『雲の階段』。どちらもシリアスな作品だけに、視聴者争奪戦は必至だ。 フジテレビの水10といえば、かつて『ショムニ』、『お水の花道』などのヒット作や、『彼女たちの時代』などの名作を生み出した枠。最高クラスのスタッフに加え、幅広い年代の女性支持を集める櫻井翔や、15年ぶりの民放連ドラ出演となる鈴木保奈美などキャストにも気合が感じられる。

傾向[2] "ポスト『相棒』"は男女コンビ

『相棒』のロングヒットを受け、「安定した視聴率をマークできる上に、シリーズ化しやすい」事件解決モノは今回も多い。なかでもテレ朝は「4本全て事件解決モノ」と完全に割り切った。 そして、『確証』の高橋克実と榮倉奈々、『ガリレオ』の福山雅治と吉高由里子、『潜入探偵トカゲ』の松田翔太と蓮佛美沙子、『お天気お姉さん』の武井咲と大倉忠義と、男女コンビの作品が目立つ。『相棒』に負けない名コンビシリーズが生まれるか。

傾向[3] 変化球学園ドラマ

新学期の季節らしく、力の入った学園ドラマがラインナップされた。ただ、学校問題に立ち向かうのは普通の先生ではなく、『幽かな彼女』では霊感の強い教師&幽霊が、『35歳の高校生』では生徒役の米倉涼子。両作品ともイジメやモンスターペアレンツなど、扱うテーマが似ているため、どこまで本質に迫れるかの勝負になりそう。 さらに、ネクストブレイク候補が揃う生徒役にも注目。特に『35歳の高校生』には、新川優愛、小島藤子、宮崎香蓮、広瀬アリス、水野絵梨奈ら、注目の若手女優がズラリ。

傾向[4] ミステリアスな主人公

『幽かな彼女』では香取慎吾が霊感の強い教師を、『家族ゲーム』では櫻井翔が変人家庭教師を、『雲の階段』では長谷川博己が離島に移住した無資格医師を、『潜入探偵トカゲ』では松田翔太が心を閉ざしたクールな探偵を、『TAKE FIVE』では唐沢寿明が窃盗団リーダーの大学教授を、『お天気お姉さん』では武井咲が黒装束の無愛想女を、『35歳の高校生』では米倉涼子が謎のアラフォー女子高生を、それぞれ演じる。 謎に包まれた過去や、型破りな方法で問題解決する姿は、口コミになりやすく、『家政婦のミタ』を思わせるダークなキャラ設定も目立つ。高視聴率につながるか。

傾向[5] 劇作家の脚本

『間違われちゃった男』は、劇団『東京セレソンデラックス』主宰の宅間孝行が舞台を自ら脚本化。一方、『ラスト シンデレラ』の中谷まゆみは、ひさびさの連ドラ執筆となる。それぞれ古田新太、篠原涼子というコメディに秀でた主人公をどう料理するのか。さらに、個性的なキャラたちとのかけ合いなど、笑いどころを抑えた"劇作家ならでは"の脚本に注目。

これらの傾向を踏まえたオススメは、重厚な人間ドラマとミステリーから目が離せない『雲の階段』、爽やかな恋と成長の物語が見られそうな『空飛ぶ広報室』、万全のスタッフで臨む『家族ゲーム』。さらに、シリーズ化へ一直線の『確証』、競い合うような演技合戦が見物の『TAKE FIVE』、米倉涼子ワールドを凝縮した『35歳の高校生』、シリーズものの『ガリレオ』『遺留捜査』も楽しめそう。

一方、裏オススメは、使い古されたキャラとセリフがつらい『ラスト シンデレラ』、昼ドラのような展開で先が読める『鴨、京都へ行く』、ストーリーの間延びをテンションでごまかしがちな『間違われちゃった男』。いずれも初回放送では、脚本・演出ともに意外性に乏しく、物足りない印象だった。巻き返しに期待したい。

【おすすめベスト3】
No.1 雲の階段
No.2 空飛ぶ広報室
No.3 家族ゲーム

【おすすめワースト3】
No.1 ラスト シンデレラ
No.2 鴨、京都へ行く
No.3 間違われちゃった男

次項では4~6月クールのドラマ作品の寸評&採点を一挙披露!