東京メトロでは3月21日の正午より、全9路線でデータ通信の利用が可能になった。これによりNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの4社が提供しているモバイル通信機器の利用者は、駅構内はもちろん、トンネルを走行中の列車内でもデータ通信を継続して行える。同日、報道機関向けには取材用の専用列車が用意された。

東京メトロの路線図(同社ホームページより)

3月21日より新たに利用可能となった路線と区間は、以下の通り。銀座線(浅草駅~神田駅)、丸ノ内線(新宿御苑前駅~新中野駅、中野坂上駅~中野新橋駅)、有楽町線(和光市駅~小竹向原駅、千川駅~要町駅)、南北線(目黒駅~市ケ谷駅)。連絡線の設置工事を行っている有楽町線と副都心線の一部区間(小竹向原駅~千川駅)については、平成28年度中に完了する予定だという。

列車の走行中でも地上と同じようにネットが利用できる(写真左)。一度も圏外になることがなかった(写真右)

今回の開通事業により、利用者はWebサイトの閲覧やメールの送受信のほか、TwitterやFacebookに代表されるようなSNS、Googleマップや乗り換え案内などインターネットにつなぐ必要のあるアプリ・サービスなどがシームレスに利用できるようになる。

TwitterやLINEなどがリアルタイムで利用できる(写真左)。インターネットラジオも途切れることなく楽しめるだろう(写真右)

囲み取材に応じた東京地下鉄の事業開発部 IT担当課長の畑中一浩氏は、苦労した点について「地下鉄のトンネル内での工事は、終電の後から始発までの短い間しか作業時間が許されていない。その点が非常に困難だった」と語った。列車の走行中もインターネットを利用したい、という要望はかねてから多かったという。「本来であれば5年くらいかかる工事を急ピッチに進め、結果的に1年ほどで整備が完了できた」(畑中氏)のも、そうした利用者の声が後押しした影響があってのことだろう。

囲み取材に応じる畑中氏。「通勤、通学のスタイルが大きく変わっていくのでは」と語った

畑中氏は、トンネル内でも通信が行えるようになったことの利点について「地震などにより、トンネルの中で電車が止まってしまうようなケースでも通信が行える。これにより不安が軽減される効果が期待できるのではないか」と語った。なるほど緊急災害時に正しい情報がすぐに得られるのであれば、利用者の安心にもつながるだろう。なお東京メトロでは、これまで通り「車内ではマナーモードにし、通話は控える。優先席付近では電源を切る」ことを継続してお願いしていく方針だ。

東京メトロでは今後とも「車内ではマナーモードにし通話は控える、優先席付近では電源を切る」ことを車内アナウンスなどを通じて啓蒙していく

通信速度については「実効速度で3~4MBは出ていると認識している。Webページを閲覧する上では充分な速度」と話した。インターネットの通信速度は様々な要因で変化するが、同日走行中の車内で記者が個人的に計測した結果では、下り速度20MB以上はゆうに出ている様子だった。

報道機関向けの専用車は、白金高輪から王子神谷までを走行した

通信速度を数回にわたり計測してみたが、充分な値が確認できた