疲れがとれない、集中力が落ちた……そんなことを感じているあなた、ひょっとすると睡眠が問題かもしれない。米国の場合、組織や会社に勤務する人の3人に1人が睡眠時間が6時間を切っているという。睡眠不足による生産性の損失は年間632億ドルという試算もある。問題の大きさがに気がつき始めた企業の中には、社員の睡眠問題に取り組むところもある。

Wall Street Journalが、睡眠不足がちな米国人の実態と企業の取り組みをレポートする記事「たっぷりと睡眠を(原題 : Go Ahead, Hit the Snooze Button)」を1月に掲載している。ここでも紹介したように、Incも米国の2013年、快適な睡眠に注目が集まると予測するなど、米国では睡眠への関心が高まっているようだ。

まずは実態を見てみよう。National Sleep Foundationなどの機関の調査によると、米国で民間企業に勤務する人のうち、睡眠時間が6時間を切っている人は4060万人、比率にして約30%という。米国人の6割が夜中に目が覚めるなどの問題を毎晩、あるいは頻繁に感じているとのことだ。

30歳以上の社会人で十分な睡眠がとれていないとする人の74%が、眠気が仕事に影響していると認めている。傾向としては、病院勤務などシフト制で夜間勤務がある人に多いが、保険金融業の27.4%、科学・技術サービスや専門家の28.2%、情報技術28.2%など、さまざまな業種で睡眠問題がみられるようだ。

Harvard Medical Schoolの調査によると、睡眠が原因で社員が最大限の力を発揮できないことによる生産性の損失は年間632億ドルにものぼるという。

企業側も重い腰を上げ始めたようだ。コロラド州エイヴォンにあるリゾードホテルPark Hyatt Beaver Creekは1月、従業員と顧客の両方に快眠の大切さを伝えるイニシアティブを開始したという。リゾート顧客が殺到するピーク時、ホテルのスタッフの中には怒りっぽくなるなどの現象が出るため、マネージャーはなるべく早期にスタッフのストレスを把握し、休むよう促しているという。

金融機関のGoldman Sachsは2011年、社内で睡眠の重要さを説く講演を開いた。招かれたのは、睡眠の重要性について著書『Sleep for Success』を持つコーネル大学の心理学者James Maas氏だ。講演を聞きたいという社員が会場の収容人数を上回ったため、社内でブロードキャストすることになったという。

同じく大手のProcter&Gamble(P&G)は2012年、睡眠専門家のNancy Rothstein氏を本社に招いて睡眠の重要性について講演をしてもらった。そこでRothstein氏は、ベッドに入る少なくとも1時間前にコンピュータやタブレットなどのデバイスの画面を切るなどのアドバイスを行ったという。周知のように、画面が発する光が睡眠のためのホルモンであるメラトニンの分泌を抑えてしまうためだ。同社はこのほか、Rothstein氏が手がけた睡眠のためのパイロットプログラムを2カ所の設備で導入している。

それでも、ベッドの中でも手軽に利用できるタブレットやスマートフォンが主流の時代、睡眠はこちらが意識しないと得られないと覚悟してスイッチをオフにしよう。