次なる挑戦は米国市場――。31日に行われたソフトバンクの決算説明会の壇上で、孫正義社長はそう宣言した。ソフトバンクでは米Sprint社の買収を足がかりに、米国市場での事業展開も視野に入れていきたい構えだ。孫正義氏は「ソフトバンクがSprint社を買収したことで、3つのシナジー(相乗効果)を創出できる」と意気込んだ。Sprint買収による3つのシナジーとは何なのか。

孫社長はソフトバンクの決算説明会の壇上で、次なる挑戦は米国市場と宣言した

孫社長が唱える3つのシナジーとは、スマートフォン、ネットワーク、V字回復のノウハウ。日米では市場が異なるので流行のスマートフォンも異なる、と一般的には思われている。しかし孫社長は「ガラケーの時代から、グローバルスタンダードのスマートフォンの時代になった。実際、日米の市場で売れているスマホは似たものが多い」と説明する。Sprint社の買収により日米の市場でソフトバンクが調達するスマートフォンの台数は、NTTドコモの倍以上、KDDI(au)の4倍近くになる見込みだ。これにより、交渉力が増す効果を期待しているという。「購買力が世界規模になることで、我々がスマートフォンに望む機能やコンテンツ、希望の金額、そういったものの交渉力が一気に高まる。これこそが、最大のシナジーです」と強調した。

Sprint買収により3つのシナジーを創出できると説明する(写真左)。スマートフォンの販売台数は年間2,170万台となる見込みだ

ネットワーク設備への投資額は、133億ドル(1.2兆円)となりChina Mobileに次ぐ世界2位の規模となる。これにより、ソフトバンクおよびSprintが必要とする周波数に対応するスマートフォンを世界規模で調達しやすくなる。購買力・交渉力の向上はSprintにとっても大きな利益となる可能性が高い。米国市場でAT&T、Verizonに次ぐ第3位のポジションにあり「端末の調達で苦戦を強いられてきた」(孫社長)状況が改善するとみられるからだ。

登壇する孫社長(写真左)。ネットワーク設備への投資額は、China Mobileに次ぐ世界2位の規模になる

ソフトバンクでは日本テレコム、ボーダフォンジャパン、ウィルコムをV字回復させた経営ノウハウをSprint社にも活かしていくという。「経営ノウハウというものは、目に見えない一番大きな資産。Sprint社に根付かせることで、現在16%ほどのモバイル営業利益率を何年かで30%水準にまで回復させる」との考えを示した。

日本テレコム、ボーダフォンジャパン、ウィルコムをV字回復させた経営ノウハウをSprint社にも活かしていく

両社では現在、シナジーミーティングと呼ばれる会議を毎週開催しているという。「お互いが学び合っている。その結果、これはいける、という自信を深めている」とし、手応えを感じつつある現状について報告した。

孫社長は「Sprintはまだ我々の傘下にあるわけではないので、指示・命令などは一切行なっていない。お互いが学び合っている段階」とシナジーミーティングの役割について説明した

ちなみに決算説明会では、買収額についても言及があった。昨年末から今年にかけて、為替が円安傾向にある。Sprint社の買収には201億ドルの資金を要したが、ソフトバンクでは為替が82円程度のときに全額を調達したという。これは31日現在の為替(1ドル91円)で資金を調達しなければならなかった場合と比べて、約2,000億円弱も安く買えたことになる。孫社長は「為替の動向を予想して、素早く手を打ったのが良かった」と安堵の表情で話した。ちなみに、この2,000億円という額は決算の純利益の項目には計上していないという。

Sprint社の買収資金は手当済みで、調達資金の全額を為替ヘッジ済み。為替予約締結レートは平均82.2円だった

(記事提供: AndroWire編集部)