シュナイダーエレクトリックは11月8日、モジュール型UPS「Symmetra PX」シリーズの最大容量モデルである「Symmetra PX 250/500kW」を発表した。グローバル市場では、すでに2009年から提供が開始されており、国内では満を持してのリリースとなる。

「Symmetra PX 250/500kW」

ITビジネス 三相UPS・PDU担当ディレクターのピーター・シャンペーン氏

最大容量250/500kWモデルを日本市場に投入

「Symmetra PXシリーズは、第一世代の40kWモデルを提供して以来、サポートする容量を段階的に増やしてきた。Symmetra PXシリーズの進化と比例するかのように、当社の顧客企業も成長を続けている。Symmetra PX 250/500kWを国内市場へ投入することによって、この動きがさらに加速できる」と、ITビジネス 三相UPS・PDU担当ディレクターのピーター・シャンペーン氏の期待は高い。

今回、最大容量を250/500kWまでサポートした点について、ビジネス・デベロップメント 本部長の有本一氏はこう説明する。

「万が一の障害時、サーバなどの電圧が完全に復旧するには5~10分ほどかかる。そのため顧客の多くは、これだけのランタイムが確保できるUPSを待ち望んでいる。そこでSymmetra PX 250/500kWでは、500kW構成でバッテリフレーム4架が連結した状態で6分、最大8架のバッテリフレームで17分のランタイムを確保するなど、顧客ニーズに対して十分応えられる製品となっている」(有本氏)

出力容量によるバッテリ・システムの構成

DCのニーズに応える4つのメリット

データセンター(DC)市場の現状について、ピーター・シャンペーン氏は、「DCへのITシステムの集約、さらにクラウドコンピューティングの普及などによって、DCを大規模化しようという動きが進んでいる」と分析する。

このような状況下で、UPSにおいても、高可用性を実現しつつ、運用コストや管理・運用の手間を削減する製品が待ち望まれている。そこで同社は、Symmetra PX 250/500kWの国内提供によってDCの抱えるニーズに応えていく構えだ。

「Symmetra PX 250/500kW」の導入メリットは、(1)モジュール性、(2)冗長性、(3)拡張性、(4)高効率という4つのポイントにまとめられる。

1つめのモジュール性については、25kW単位で拡張可能な「パワーモジュール」やホットスワップで拡張できる「バッテリモジュール」によって、平均復旧時間(MTTR)を大幅に削減する。さらに従来のような受注製品ではなく、各モジュールを在庫として扱うことで、容量が迅速に追加導入できる点もメリットだ。

2つめの冗長性については、「N+1」というパワーモジュール構成を採用した点が大きい。

ビジネス・デベロップメント 本部長 有本一氏

「例えば100kWをサポートする際、従来のUPSの冗長化では、100kWのUPSを2つ用意する『2N』という考え方でサポートしていたため、200kWの容量が必要だった。しかし今回、25kW単位で拡張可能できるパワーモジュールに対応したことで、125kW(25kW×4+25kW)で運用できる。この『N+1』という考え方によって、可用性を確保しつつ、効率性を高められる」と有本氏は説明する。

3つめの拡張性については、「スモールスタートで導入できるため、段階的にDCを拡張したいと考える企業に適している」と有本氏は強調する。

例えば、250kWのフレームに100kWのパワーモジュールを搭載した後、DCの大規模化に伴って最大250kWまで増設できる。もちろん、設置するスペースは変わらないため、敷地面積に関わる追加コストもかからない。

4つめの高効率については、DCの規模に沿ったUPSを構築できるため、使用エネルギーのコストが適正化される点が挙げられる。エネルギー効率が高いことから、TCOの大幅な削減につながるのだ。

Symmetra PX250/500kWの導入メリット

また、従来の「Symmetra PX」シリーズと変わらず管理・運用できる点も特長だ。中核となる機能やNetwork Management Cardが従来製品と同じ仕様となっているため、管理者の負担を軽減できる。さらに管理・運用方法はそのままに、操作性を向上させる新たな取り組みもある。今回提供する「Symmetra PX 250/500kW」からは、10インチのカラーLCDタッチパネル・ディスプレイを新たに搭載し、管理者がより快適に操作できるようになったのだ。

大規模UPS市場でシェア拡大を目指す

今後の販売施策については、パートナープログラムを活用して、1万社近くの販売網からエリートパートナーを選りすぐり、「Symmetra PX 250/500kW」に関するトレーニングを強化していく構えだ。

パートナー企業が「Symmetra PX 250/500kW」を取り扱うメリットついて、有本氏は「IT系のSIerにとって、これまでは『UPSは自分たちのビジネスの領域に入らない』という意識があったかもしれない。しかしSymmetra PXは、ITのコンセプトに近い製品となっている。ITの延長線上で電源保護という領域までアプローチすることで、ビジネスの幅がより一層広がるはず」と説明し、パートナーのビジネス拡大を後押しする。

最後に有本氏は、「Symmetra PX 250/500kW」の展開についてこう語った。

「当社が強みとしているのは、小規模から中規模のUPS市場。今回、Symmetra PX 250/500kWを国内市場に投入することによって、当社の顧客層が確実に広がると予想している。Symmetra PX 250/500kWを契機として、向こう3年間で土台を築き、大規模UPS市場でシェアを拡大していきたい」(有本氏)

世界的なUPSブランドを訴求し、今まさに大規模UPS市場を攻略しようと意気込むシュナイダーエレクトリック。Symmetra PX 250/500kWが起爆剤となり、今後のマーケットシェアをどのように拡大していくのか、市場からは熱い視線が注がれている。