CEOの名前で謝罪文が発表されるなど、大きな波紋を呼んだiOS 6の「マップ」。地図としての基本機能に多くの問題を抱えており、いわゆる方向音痴のユーザーにとって悩みの種だ。そこにリリースされた「MapFan+」は、無料ながら音声ナビ機能を搭載するなど、アピール性じゅうぶん。早速、基本機能を試した結果を報告したい。

iOSアプリ「MapFan+」は、インクリメントPが提供する地図/ナビゲーションアプリ。同社は従来からiPhone向けに「MapFan for iPhone」を提供しているが、MapFanはオンライン/オフライン地図を切り替えて利用できる、ハイブリッド仕様となっている。

注目すべきは、このアプりが無償だということ。地名検索やルート検索、音声ナビゲーションなど基本機能はひととおり用意されるため、つどデータを読み込むことに抵抗がなければ、iOS 6標準の「マップ」に代わる地図アプリとなりうる。地図データをアプリ内部に持つ「MapFan for iPhone」は、容量1.5GB超というサイズがiPhoneのストレージを圧迫するが、こちらは24MBとコンパクト。サーバ上のデータは随時更新されるため、常に最新の地図を利用できるメリットもある。

懸念があるとすれば、地図データの「重さ」だろう。表示された地図を「MapFan for iPhone」と見比べても情報差は確認できないところから、「MapFan+」の地図データは相当に情報量が多く、高速移動時には画面の書き換えにキャッチアップできない可能性がある。通信状態が芳しくないときも同様だ。その点を踏まえ、「マップ」と比較しつつ、次の5項目について検証してみた。

オンライン利用のみだが安心して使える地図アプリ「MapFan+」が無償で公開

* 地図としての信頼性

iOS 6の「マップ」は、「MapFan+」の開発元であるインクリメントPの地図データを利用しているため、信頼性という意味で一抹の不安を覚えるユーザもいることだろう。しかし、筆者が都内を半日かけて移動したかぎりでは、地名や施設名に誤りは発見できなかった。具体例を挙げれば、浜離宮恩賜庭園近くに表示される謎のハングルも海底にある駅も、「MapFan+」では表示されない。「マップ」の誤りは、あくまでApple側のエンジニアリングに問題があると考えてよさそうだ。

新橋駅付近の地図を「マップ」と比較したところ。情報量の差は一目瞭然だ

* 地図の表示

はっきり言って、「MapFan+」の地図データは重い。徒歩で地上を移動しているときは問題にならなかったが、電車で移動しているときにはデータの欠落がしばしば発生、画面上に白い部分が目立った。今回はカーナビゲーション機能を検証していないが、街中を移動中はともかく、高速道路での利用にはオフライン地図が必須と感じた。いっぽうの「マップ」は時速100km前後で走る東海道線でも、データが欠落することはほとんどなかった。

ただし、情報量の多さは地図アプリとして強力な武器になる。コンビニエンスストアやファストフード店など、チェーン店はアイコンとして表示されるし、幹線道路や鉄道、主要交差点の名称もしっかり表示される。この点は、「マップ」に比べて圧勝といっていい。

東海道線で移動しているところ。基地局の切り替えが頻発するためか帯域が安定せず、地図上には白いエリアが目立った