毎年この時期に発表されている、グッドデザイン大賞。今年度も11月23日~25日に開催される「グッドデザインエキシビション2012」で一般来場者からの投票を受け付けたのちに発表されることになっており、その注目度、期待度は日に日に高まっていることだろう。そこで、本企画では、発表に先駆け、各業界のクリエイターに最終候補として残っている15作品のなかから優れていると思う作品を独自に3つ選出してもらい、その選考理由とともに紹介していく。第2弾は、クリエイティブラボ PARTYのクリエイティブディレクター・清水幹太が登場する。
今回、清水氏は選考基準について「プロダクトなどは、実際触ってみないと難しいので、基本的に、"人と人"の間に存在するもの、そこを"気持ちよくする何か"としてデザインを捉えて、素敵なものはどれだろう、と考えました」とコメントしている。その結果選んだ作品3点は以下の通り。
タニタ食堂/株式会社タニタ
企業というのは、なんでわざわざ集まって企業などというものをやっているのかというと、集まらないとできない何かをするためなのだと思います。お金なんて、天下の回りものです。経済活動の中で、人から人へと回っていく。消費者にとっての、そしてきっと働いている人たちにとっての企業は、それを回していく中でどれだけみんなにとって値打ちのあることをできるかでしかないのだと思います。だから、ただの空気標語みたいなものではなくて、具体的な活動の中でしっかり「意志」が伝わってくる企業はとても素敵で、かっこいい。価値をつくる、のではなくて、価値を表現する、そのために働いて活動する。そこが徹底してデザインされている感じが、グッドということなのだろうと思います。
ライン/NHN Japan 株式会社
私はそんなに使っていないのですが、「LINE」は素晴らしい芸人根性を持ったサービスだと思います。クローズドなコミュニケーションサービスというのは、ちょっと前にTwitterなりfacebookなりの、幅広いコミュニケーションにみんなが少し「?」となった段階からいろいろ模索されてきています。その中で、LINEは、クローズドへの回帰という考え方の変化に満足しないで、そういったコミュニケーションをいかに豊かなものにするか、というところに凄い推進力で進んでいる感があります。その徹底したユーザー目線からは、「あらゆる手を使って楽しませることを考える」芸人魂に近いものを感じます。それが、余計なステップを排除した新しいユーザーインタフェースにもつながっている。そこに、とても誠実な形の「デザイン」があるように思いました。
みんなの家/帰心の会+仙台市+釜石市+特定非営利法人@リアスNPOサポートセンター
たとえば、仕事が忙しくて余裕が無くなると、どうしても周囲に対して辛く接してしまうことが多々あります。食事も適当になってしまうし、睡眠も適当になるし、対人関係も乱暴になってしまいがちです。そうなると悪いことばかりなので、そういうときに深呼吸して、落ち着いて丁寧にやっていければと思うのですが、それすら忘れがちです。それを被災地の状況と比べてしまうことは良くないとは思うのですが、このプロジェクトは、そんな被災地という混乱した現場に「深呼吸」のようなものを与えるデザインなのだと思います。物理的なクオリティ・オブ・ライフの向上ではなくて、被災者自身の行動から本質的なクオリティ・オブ・ライフの向上につなげていく。そこに目線を向けているところがとてもグッドデザインだと思いました。
なお、近年、グッドデザイン大賞を受賞した作品は、2011年度が本田技研工業の「カーナビゲーションシステムによる情報提供サービス」、2010年度がダイソンの「エアマルチプライアー」、2009年度がワークヴィジョンズ+岩見沢レンガプロジェクト事務局の「岩見沢複合駅舎」、2008年度がトヨタ自動車の乗用車「iQ」となっている。
クリエイティブディレクター・清水幹太
東京大学法学部在学中(のち中退)から都内のデザイン事務所を経てDTP組版等に従事。2005年12月より株式会社イメージソース/ノングリッドに参加し、本格的にインタラクティブ制作に転身。クリエイティブ ディレクター/テクニカル ディレクターとしてウェブサイトからデジタルサイネージまで様々なフィールドに渡るコンテンツ企画・制作に関わる。2009年11月より株式会社イメージソース執行役員、2011年4月より株式会社パーティー クリエイティブディレクターに就任。カンヌ国際広告祭 金賞、AdFest グランプリ、東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ、One Show Interactive Gold Pencil等、受賞多数。
第3弾では、デジタルハリウッド学校長の杉山知之が登場する。