発売を迎えたVisual Studio 2012

10月4日からの2日間、渋谷ヒカリエのホールを会場にWindows開発者向けの技術イベント「Microsoft Developer Camp 2012 Japan Fall」が開催された。基調講演を含むセッションの様子はUSTREAMで配信されている。主要テーマはWindows AzureとVisual Studio 2012だ。基調講演の冒頭では日本マイクロソフト デベロッパー & プラットフォーム統括本部業務執行役員の平野和順氏が登壇し、Visual StudioとWindows Azureの進化について振り返った。

日本マイクロソフト デベロッパー & プラットフォーム統括本部業務執行役員の平野和順氏

平野氏は開発者を取り巻く環境の変化について、スマートフォンのようなデバイスやソーシャルへの対応、クラウドやビッグデータの活用などが求められていると説明し、先進的なアプリケーションの開発にVisual Studio 2012を使ってほしいと訴えた。

ここ数年、Microsoftは全てをWindows向けに作ってほしいという非現実的な提案をしなくなった。多くの顧客がロックインされることに強く警戒していることを理解しており、マルチデバイスの対応やWeb標準技術の採用にも積極的になりつつある。先日発表されたJavaScriptベースの新しいプログラミング言語TypeScriptも、そうした取り組みの一環だ。

Scott Guthrie氏、Windows Azureの新機能を語る

続いて、米Microsoftから来日中のScott Guthrie氏に交代し、大きくアップデートされた最新のWindows Azureについて紹介が行われた。赤いシャツでおなじみのScott Guthrie氏はVice Presidentを務めるWindows Azure部門のトップだ。

Windows Azure部門のトップScott Guthrie氏

Windows Azureが発表されてから間もなく4年が経過するが、今年の夏に大きな更新が行われ、新しい機能がプレビュー版として発表された。これまでは、Windows Azureを利用するにはWebロールおよびWorkerロールと呼ばれるWindows Azure上で動作するアプリケーションを開発しなければならなかったが、通常のWebサイトやWebアプリケーションをWindows Azureで動かすことが簡単になった。Guthrie氏はWindows Azureの新しい機能である「仮想マシン」「Webサイト」「モバイル サービス」の3つを紹介し、実際にWindows Azureに接続してデモンストレーションを行った。

「仮想マシン」は、前に「VMロール」と呼ばれていた機能に相当し、Windows ServerやLinuxサーバーをWindows Azure上でホスティングできるサービスだ。サーバーの仮想インスタンスを占有できるため、管理者権限で自由にアプリケーションを動かすことができる。

「VMロール」と呼ばれていたころは、自前でWindows ServerがインストールされたVHDファイルを用意し、アップロードしなければならなかった。しかし、新しい「仮想マシン」の機能はポータルサイトからインスタンスを展開できるため、簡単にサーバーを調達できる。

これは、いわゆるIaaS(Infrastructure as a Service)に相当する層で、自由にサーバーをカスタマイズし、自由にアプリケーションをインストールできるが、構成管理はユーザーが適切に行わなければならない。

「Webサイト」は標準的なHTMLベースのWebサイトやASP.NET、PHPまたはNode.jsで記述されたWebアプリケーションを配置し、公開できるサービスだ。Visual Studioから配置できるのはもちろんだが、GitやFTPから配置することも可能だ。

サーバーは複数のユーザーで共有されるため、自由に構成することはできないが、「仮想マシン」よりもはるかに安価で、10サイトまでは無料で作ることができる。Guthrie氏は新しいWebサイトを立ち上げ、Visual Studio からアプリケーションを配置するデモンストレーションをしてみせ、迅速にWebアプリケーションを公開できるとアピールした。

また、アプリケーションが人気になり負荷が増加した場合、コードを変更することなくポータルサイトから簡単にスケールでき、必要に応じて占有のインスタンスに変更したり、インスタンスの台数を増やしたりできる。一時的に負荷が増大する季節もののイベントやティザーサイトなどに最適だろう。

「モバイル サービス」はWindows ストア アプリケーションやスマートフォンのアプリケーションで求められるユーザー認証やクラウドへのデータ保存を提供してくれる。サーバー側のコードを書かずに、標準機能だけでユーザー認証に対応したアプリケーションを開発でき、ポータルサイト内でテーブルの作成やデータ表示、モニタリングなどを行う管理ツールも提供される。

当然、これらもWindows Azureの柔軟性の恩恵を受けることができ、必要に応じてサービスをスケールできる。Guthrie氏は、これらWindows Azureの新しい機能を使ったアプリケーションが登場すること楽しみにしているとして締めくくった。