日本マイクロソフトは9月5日、新サーバOS「Windows Server 2012」の提供開始を発表したが、同社はそれにともなう記者説明会を開催し、新機能の概要を説明した。
同社はWindows Server 2012を「New Cloud OS」と位置づけており、そういったOSが求められるサーバを取り巻く環境の変化について、日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 本部長 梅田 成二氏は、「もはや、クラウドへの移行は疑う余地がない。最近は、SNSの発展やビッグデータというトレンドによって、無限のコンピュータリソースを必要としている。また、アプリケーションとサーバの関係も変わりつつあり、アプリは、サーバ、ストレージ、ネットワークのプールから、必要なものを引き出して使用しており、それらの場所も特定されなくなっている」と述べた。
そして同氏は、クラウドOSに必要なものとして、「オープンな開発環境」、「クラウドとオンプレミスの一元的なシステム管理」、「シングルサインオンなどの共通IDとセキュリティ基盤」、「オンプレミスからすぐにクラウドに移行できるプラットフォームとしての仮想化」を挙げた。
これらを踏まえ、Windows Server 2012は、「仮想化の進化」、「クラウド連携」、「さらなるコスト削減」、「事業継続オプション」、「モバイルワーク」の5つのポイントで機能強化されている。
仮想化では、Hyper-Vのスペック向上、高速化が図られている。また、これまでクラスタ構成が必須であったライブマイグレーションがクラスタ構成が不要になったほか、仮想CPUを4から64、VMごとのメモリが64GBから1TB、ホストごとのアクティブなVMが384から1,024、同時ライブマイグレーションが1から無制限になるなど対応環境が強化されている。そのほか、Windows ServerとWindows Azureの一部異なっていたHyper-Vが統一になり、OSが完全同一となった。
クラウド連携では、ネットワークの仮想化が追加されたほか、ID連携により、クラウド上でのシングルサインオンが可能になっている。
ネットワークの仮想化では、1つのネットワークを複数の顧客で共有でき、双方で同じIPアドレスを利用できるマルチテナントを実現している。これにより、オンプレミスとクラウド連携が可能になり、オンプレミスの延長線上でIPアドレスの体系を維持したまま、パブリッククラウドを拡張基盤として利用できる。
コスト削減では、ストレージの仮想化やデータの重複除去がサポートされた。ストレージの仮想化は、記憶域のプールで、社内の物理HDDを束ねて、1つの大きなストレージに見せかけることができる。また、あらかじめ物理容量以上の容量を定義し、容量が不足してきてから実際の物理ディスクを追加するという運用が行える。
重複排除では、ファイルを分割して、それぞれで重複がないか判断して、同一であれば削除するアルリズムを採用しているという。とくに仮想デスクトップ環境では、OSの共通部で大きな削減効果があり、梅田氏によれば、80%程度の容量が削減ができるという。また、一般的なファイルサーバであれば4-5割の容量が削減できるという。
事業継続オプションでは、Hyper-Vレプリカがサポートされた。これは、稼働中の仮想マシンをバックアップマシンに送信し、レプリカを作成する。その後、5分おきに差分をコピーし、1時間ごとに戻ることが可能なリカバリーポイントを作成する。
そして、モバイルワークでは、VDIの高速化と、DirectAccesにより、ユーザー操作のいらないリモートアクセスを実現する。
VDIでは、RemoteFXによるRDP 8.0の高速化が行われている。RDP 8.0では、テキストを先に、動画を後で送るなど、コンテンツによって送る順番を変え、ユーザーエクスペリエンスの向上を図っているほか、これまではクライアント側でコーデックしていたが、サーバのGPUを使い、コーデックして送る仕組みも採用され、帯域幅を抑えての転送が可能になった。
74万台がターゲット
IDC Japanの資料によれば、2011年の日本のサーバ稼動台数は220万台で、このうち73%がWindows Serverだという。そして、73%のうち、45%(74万台)がWindows Server 2003であり、これらのリプレースがWindows Server 2012のターゲットだという。梅田氏は、とくにアプリケーションサーバやDBサーバの置き換えを中心に狙っていくとした。