本誌を含めた各媒体が報じているように、Windows 8はスタートボタンおよびメニューを廃している。その理由はWindows 8を従来のデスクトップ型コンピューターだけでなく、キーボードを備えないモバイル型コンピューターでの利用を前提にジェスチャおよびタッチ操作を前提としているからだ。しかし、これまでWindows OSを使ってきたユーザーとって、スタートボタン/メニューの廃止はドラスティックな変化であり、その変わりざまに抵抗を感じる方も少なくないだろう。
そこで再び脚光を浴びているのが、Ivo Beltchev氏が中心となり、オープンソースベースで開発が続けられている「Classic Shell」である。本来は新しいWindows OSのスタートメニューになじめないユーザーのため、古いスタートメニューに変更するためのツールだが、Windows 8の仕様変更に伴い、"スタートボタン/メニューを復活させる"という目的で注目を集めるようになった。
Windows OSのカスタマイズに詳しい方なら定番に数えられるClassic Shellだが、バージョン3以降は日本語化されることなく、日本国内ではあまり知られていなかったのが現状である。そこに注目し、Classic Shell日本語化を行ったのが、数多くのソフトウェアを開発・販売している電机本舗だ。同社では、Classic Shellの日本語を強化したリビルド(ソースコードを実行可能なファイルに変換する処理を再び行うこと)したと説明。
執筆時点でのClassic Shell最新版はバージョン3.6.1だが、電机本舗版は「Classic Shell 3.6.1J」と末尾に"J"を付け、再配布版であることを明示している。もちろん本家と同じく無償使用可能だ。今回はこの電机本舗版「Classic Shell 3.6.1J(以下、Classic Shell J)」をWindows 8マシンにインストールし、これまでClassic Shellの存在を知らなかった方を対象に、その使い勝手や相違点を検証していく。なお、WebページではWindows 8 RTM版(Release To Manufacturing version:製造工程版)に関して言及されていないが、今回筆者が試用した限りでは、本家と同じくRTM版で問題なく動作したことを付け加えておく。
公式ページからダウンロードできるファイルは7z形式の自己展開型圧縮が用いられている。格納されている実行ファイルをダブルクリックし、インストールを実行する仕組みだ。セットアッププログラムは日本語化されていなかったが、セットアップ完了後の初回起動時に現れる設定画面は日本語化されている。後はWindows 9x系かWindows XP、Windows Vista/7のなかから好みに応じたスタートメニューのスタイルを選択すれば、Windows 8にスタートボタンが復活し、スタートメニューが使用可能になる(図01~04)。
Classic Shell Jと本家Classic Shellの違いは基本的に日本語化の有無だが、日本語化されているのはタブやボタン周りにとどまり、設定項目の大半は英語のまま。残念ながらすべての項目が日本語化されているわけではないようだ。もっとも、Classic Shell自体がそれほど難しい英単語を使っておらず、コンピューターの操作に慣れたユーザーなら困らないのは事実である。それでも日本語版をうたうのであれば、これらの項目も翻訳してほしかった(図05~08)。
Classic Shellと同じく"classicshell.sourceforge.net"にアクセスし、更新情報を取得している。実際に新しいバージョンがリリースされないと、どのような結果になるのか推測の域を超えないが、Classic Shell Jを使用していても本家Classic Shellが上書きされる可能性が高い(図09~10)。
そもそも多くのユーザーは新しいOSに惹かれながらも、これまで築き上げた環境を維持したがるものだ。またビジネスユーザーは、OSの進化よりも普段の業務を的確に遂行することを優先するだろう。何らかの理由でWindows 8に移行しなければならなくなった場合、Classic Shell JはWindows 7に似たデスクトップ環境を提供する欠かせない味方となるはずだ。それだけに電机本舗には、前述の日本語化範囲と合わせ、この点の対応を強く期待したい。
阿久津良和(Cactus)