盛大な規模で開催されたFTF Americas 2012のTechnology Lab
FTF Americas 2012の初回レポートでもある程度概略をお伝えした「Technology Lab」であるが、会場のJW Marriott San Antonio Resort & Spaの40,080ft2(3680m2)のExibit Ballroom全体を使って盛大な規模で行われていた(Photo001)。このTechnology Labには、同社やスポンサーの提供しているソリューションや最終製品、開発中のプロトタイプまで幅広い範囲のものが並んでいる。今回は4つの部門(「Automotive」「Industrial,Health Care and Smart Energy」「Networking」「Enabling Technology」)別に、どんなものが展示されていたかをかいつまんでご紹介したい。
Photo001:内部レイアウト。出入り口のそばにはスポンサーブースが並び、奥にFreescaleが4つの部門に分かれてブースを設け、その周囲を囲むようにスポンサーブースが続く。左下にはMake It Challangeのコースと作業ブースが置かれている |
終始見学者が絶えなかったコンセプトモデル - Automotive
Photo001で中央上側に車の絵が描いてあるのがわかるかと思うが、これが基調講演でも登場したコンセプトカーである(Photo002~11)。一人乗りのバギーを模したものだが、あくまでもコンセプトモデルというか、同社の技術アピールのためのカタログ的な位置づけにあるので、実際にこれで走行ができるわけではない。ただ同社が提供する技術を盛り込むだけでなく、見て楽しめるといったコンセプトとして作られており、会場でも終始見学する参加者が絶えなかった。
Photo002:フロント側から。このアングルだと運転席手前のスクリーンは真っ白にしか見えない。構造的には一人乗りバギーといった感じ |
Photo003:座席右に配された、S12 MagniVを搭載したECU |
Photo004:S12を搭載したECU。場所はフロントのヘッドライトの間で、位置的には照明制御用と思われる |
Photo005:リアのエンジンを模した部分。実際にはエンジンそのものは動かないが、一応エンジンの動作が見られるようになっている |
Photo006:エンジン制御用ECU。インジェクタ制御用と思われ、同じものが2つ並んで2気筒用となる。その奥にエンジンがあるが、中を見せるのが目的なのでシリンダヘッドやクランクケースが透明アクリル製なのがわかる |
Photo007:コンソールはとりあえず速度計表示。左のアナログ速度計はダミーらしい |
Photo008:ステアリングにも液晶モニタが仕込まれており、右側にはタッチセンサと組みあわせた(と係員は言っていた)表示パネルが。ドリンクホルダーまで用意されているあたり、芸が細かい |
Photo009:リア全景。ロールケージ上面、ちょうど運転席の真上あたりには、デモ用の液晶モニタが |
Photo010:運転席の手前にも液晶表示が。撮影時はNASCARのビデオを流していた |
Photo011:Photo010はどうやって表示しているのだろう? と思ったら、運転席の下にプロジェクターが配されており、これで映像を投影していた。ここもFreescaleの製品を使って制御している |
ブースに目を向けると、i.MX 6を使った車載向けOpenGL ES 2.0のデモ(Photo012,13)や、OpenSynergyのCOQOS Dashsheet(Photo014~17)、キャディラックSTSの2013年モデルのグラフィッククラスタ(Photo018)やVybridを利用したクラスタボードデモ(Photo019~21)など、クラスタ向けの製品が目を引きやすい。
Photo014:独OpenSynergyが提供するCOQOSは、i.MX 6の上でMicroOSを動かし、この上にAUTOSARとLinux系OSを同時に動かすというもの。インスツルメントパネルのAUTOSAR対応は必須の方向であり、これを特殊なハードウェア無しで実現できるという点がポイント |
Photo015・16:COQOSのデモ。CANからの通信(これはAUTOSAR側で行う)を行いつつ、インスツルメントパネル機能(Photo015は電池残容量、Photo016は速度計)を表示してみせている。GUIそのものはAndroidで動作している |
Photo017:デモ機のハードウェアそのものは標準的なi.MX 6の開発ボードのみで実現されている |
Photo018:これは実際にキャディラックに搭載されるモデルとか。製造はDelphiで、i.MX514を搭載し、これがすべての処理を管理しているとか |
Photo021:「機械式」クラスタボードのデモ例。これはS12 MagniVを使って構成されている |
Photo022:「機械式というのは、4つのメータの駆動にステッピングモータを使っているという話で、このモータの制御とクラスタ中央の液晶パネルの表示を全部S12 MagniVで行っている。係員の話では「低価格向け」ということだった |
もっともこうしたクラスタ向けの製品はFreescale以外の半導体ベンダも多く手がけている部分であり、むしろこうしたクラスタ以外が同社の本領発揮の場でもある。実際Technology Labでも「MPC5676R」を使ったEV/HEVとエンジンの点火制御を行ったデモ(Photo023)や、「Qorivva MPC5634M」を使った4気筒ガソリンエンジンの点火制御デモ(Photo024,25)や、「S12 MagniV」を使ったモータ制御のデモ(Photo026,27)、電子パワーステアリングユニット(Photo028)、エアバッグユニット(Photo029)などの展示も行われていた。またVybridを使ったConnected Radioのデモも展示されていた(Photo030,31)。
Photo023:MPC5676Rに内蔵されるeTPU2を使い、HEV/HVのモータ制御に加えて、オプションで点火制御も行えるというデモ。奥の左側がモータ、右側がエンジン(を模したもの)で、これを切り替えて制御できるというもの |
医療機器やeReaderなど幅広く展開 - Industrial,Health Care and Smart Energy
こちらに属する製品はかなり多い。なにしろPhoto001で中央に配される"Connected Home"エリアで展示されている製品はほぼ全量がこれに属する。また、会場のエントランス付近に置かれたFreescaleのチップを搭載した製品ショーケースの大半もこちらに属する。ということで、まずは製品そのものの紹介から。
まずモジュールそのものとしてはiWaveの「Rainbow-G15M-Q7」(Photo032)、SECOのQUADMO747-X/i.MX 6(Photo033)、PhytecのphyFLEX-i.MX 6(Photo034)、NovTechのNOVPEK i.MX 6D/Q System(Photo035)といった具合にi.MX 6搭載製品が多く目立つが、TQのTQMa53 SoM(Photo036)とか、同じくTQのTQMa28 SoM(Photo037)なども展示されていた。
Photo032:i.MX 6に1GBのDDR3 SDRAMを搭載したCPUモジュール。フォームファクタはQseven R1.20に互換 |
Photo033:最大4GBのDDR3 SDRAMを搭載可能。フォームファクタはこちらもQseven R1.20互換 |
Photo034:メモリ搭載量は128MB~4GBまで。フォームファクタは同社のphyFLEX互換 |
Photo035:NOVPEK i.MX 6D/Q Systemは周辺回路を搭載したベースボードに、CPUを搭載したドーターボードを組み合わせる形のSystemだが、展示されていたのはドーターボードのみ。こちらも最大4GBまでのDDR3を搭載 |
Photo036:i.MX537を搭載する。動作周波数は800MHz、搭載メモリ量は512MB/1GBで消費電力は3W以下とされている |
Photo037:こちらはARM9ベースのi.MX28を搭載。動作周波数は最大450MHz。こんな小型モジュールでありながら、IEEE1588準拠Ethernetを2ポート搭載という、ちょっと面白い製品 |
さて、製品/開発キットとしてまず目立ったのがスマートエナジー関連。例えばConnected Homeのブースでは壁にかけられる形でTri CascadeのElka 700(Photo038)が展示されていたし、Allure Energy EverSense Energy Management System(Photo039)もやはり壁で動作展示が行われていた。いわゆるスマートメーカーに関しては、Kinetis K30を利用した新しいスマートメータソリューション(Photo040)のほか、IEQualizeのHome-Boxを組み合わせた包括的なホームマネジメントソリューション(Photo041~43)、様々な製品を組み合わせ可能なFreescale Networked Smart Gateway(Photo044~47)なども展示されていた。またスマートエナジーという意味では太陽光発電に関連して、自宅などに設置した場合にこの状況を確認できる低価格なモニターの例(Photo048)などもあった。またスマートグリッドを都市レベルで展開するためのソリューションの展示(Photo049)も行われていた。
Photo038:内部にはi.MX28とMC13226を内蔵する。この写真だけだと時計や温度計・天気予報を表示するパネルに見えるが、実際はスマートエナジーのゲートウェイとして利用することを前提にしており、IEEE 802.11nおよびZigBeeで様々な機器との通信も可能 |
Photo039:EverSenseは2012年1月のCESで発表された製品。出荷は2012年第3四半期中を予定しているとか。使い方については同社のプロモーションビデオが判りやすい |
Photo042:やはりKinetis K30をベースにしたスマートメータのリファレンスデザイン。Photo040のものに近いが、NFC関連の機能は無い。このスマートメータはホームエナジーモニタとZigbee SEで通信を行う |
Photo043:この画面はIEQualizeの製品をベースにしたもので、このため英語表記ながら数字が微妙にドイツ語風 |
Photo044:構成一覧。メインになるのは、中央の白いゲートウェイ。左の電話はVoIP、右のノートPCはネットワークにつないでの動画再生で、こうしたネットワークのルータ機能に加えて、左上にあるThinkEcoの「modlet」とも通信を行い、その結果を手前のiPadに表示しているという具合 |
同じように力を入れているのがHealthCare(ヘルスケア)の部門。WithingsのWi-Fi体重計(Photo050)や血圧計(Photo051)、様々なパートナーから提供されている各種健康関連機器(Photo052,53)などが展示されていたほか、開発キットとしてはメディカル・リファレンス・プラットフォーム(Photo054~57)を始め、いくつかのキットの展示があった。
Photo052:左上はA&Dの血圧計。その右の液晶モニタと、オレンジのボタンがついた腕時計状の機器はSonambaのSonamba Pro。Sonamba Proの手前にあるのがMyGlucoHealthのBluetoothベースのワイアレス血糖値計、その右がVitalographのasma-1(デジタル肺活量計)、一番右がInsuletのOminipod(インシュリンポンプ)。前列左はQuallcomm Lifeの2netというFDAが制定した医療向け通信規格(MDDS:Medical Device Data System)用のゲートウェイ。中央及び左はcorventisのNUVANT Mobile Cardiac Telemetry System。左側のプローブを心臓のそばにつけておくと、心電図をリアルタイムで取得、それを中央のMobile Transmitterで送信する仕組み。心臓病の患者の不整脈の状況をリアルタイムで確認できるものである |
Photo053:A&Dの血圧計用はこちらにつながっていた |
Photo054:「昨年もこういうキット展示してたよね? 昨年との違いは?」「今年はトランクを用意した。これに全部収まってる(笑)」もちろんそれだけではなく、細かくコンポーネントも変わっているとか |
Photo055:Tower Systemにつながるヘモグロビン濃度計。手前の丸い筒状のものは肺活量計 |
Photo056:こちらは1線式の心電図計 |
Photo057:SPIとはMED-SPIという肺活量計の結果。MPXV7025DPというDifferential式の圧力センサで測定している。SPO2はヘモグロビン濃度計の結果。これはあくまでサンプルということで、表示などはごらんのようにシンプル |
一般向け製品ということでは、まず最近の電子書籍のプラットフォームは殆どがE-Inkの電子ペーパー+i.MXということで、こちらを大々的にデモしていた(Photo058~60)ほか、PhilipsのGoGear Connect(Photo061)やKey IngredientのDemy Recipe Reader(Photo062,63)などが目に付いた。また個人向けとしては、例えば携帯用発電機であるTremont ElectricのnPower PEG (Photo064)は基調講演でも取り上げられたし、Connected Homeエリアにさりげなく展示されていたI'm Watch(Photo065)はイタリア製ということで、日本やアメリカでは代理店経由でしか購入できず、GoogleとかAmazon.comで"I'm watch"を検索するとサジェスチョンに"How to buy I'm watch"だの"I'm watch italy"だのが出てくるあたり、知る人ぞ知るという感じで人気は高いようだ。またアウトドア用のビデオとして有名なGoProのHD Hero2(Photo066)とかHoneywellのLynx Touch(Photo067)も展示されていた。
Photo064:MCF51JU32VFM(ColdFire+)にバッテリチャージ用のMC34763AEPR2、それと3軸加速度センサ(MMA8450QT)を搭載している |
Photo065:i.MX233搭載。I'm watchそのものは単体では時計表示程度の機能だが、Bluetoothでスマートフォンと連携することで色々操作や表示が可能というもの |
業務用機器もいくつかあり、SIMRADの航行用機器各種(Photo068)やLatnem TimeのAnalog Wall Clock(Photo069)や800P Whisper Print Time Clock(Photo070)、LOWRANCEのやはり船舶用機器(Photo071)などが展示されていた。また(分類としてはむしろAutomotiveに分類すべきなのかもしれないが)台湾FUNTOROのBus Seat Display(Photo072~75)などが展示されていた。
Photo068:説明が無かったので、具体的にどんなチップをどんな用途向けに搭載しているかは不明 |
Photo069:ただの壁掛け時計に見えるが、Kinetis K40を搭載し、同社の提供するATX/ATX6トランシーバと連携してms単位での精度を確保している製品とか |
Photo070:いわゆるタイムカードに近いものだが、感熱式プリンタを内蔵しているとか。制御にはやはりKinetis K40を利用している |
Photo071:手前は魚群探知/チャートプロッターのHDS-8 Gen2、奥は同じく魚群探知/チャートプロッターのHDS-5。どの辺にFreescale製品が搭載されているのか、は不明 |
Photo074:同じく運転席に置かれる状態表示画面。これは4つのタイヤの温度と空気圧を表示している |
Photo075:これはバスで各座席に設置されるディスプレイ。映画のオンデマンド再生だけでなく、TVやニュース、カメラ表示やナビゲーション画面など色々なものが表示可能という話であった |
一方開発リファレンス/キット類であるが、FSLBOT(Photo076,77)や、前回もご紹介したルンバもどき(Photo078,79)、モータ制御つながりで言えばMATLAN/Simulinkを使った開発環境(Photo080~82)、冷蔵庫のコンプレッサ制御とHMI制御のリファレンス(Photo083)や純粋にPMSMの制御リファレンス(Photo084)などモータ制御系、Kinetis K40/K60を利用した様々なオーディオプレイヤーのリファレンス(Photo085,86)や、まだリファレンスにはなっていないようだが、Vybridを使ったプレイヤーの話も展示されている話はこちらでご紹介済みである。ちょっと変わったところでは、arkessaのMosaic Serverを経由したM2Mのリモコン(Photo087~89)、あるいはActivity Monitor Reference Design(Photo090)などに加え、組み込み向けに機能安全をサポートした開発環境のデモ(Photo091,92)もあった。
Photo076:キットの形でこれを丸ごと購入可能。必要な開発ツール類も全部付属している。ちなみにFreescaleの直販の場合、まるごと全部だと199.00ドル、MMA8451というデバイスアダプタボードだけだと25.00ドルという値段がついている |
Photo077:歩行はこんな具合に体を左右に傾けながら、浮いたほうの足を前に進めておいて着地、という形になる |
Photo080:こちらのキットのベースはPXS20/PXS30 MCUで、Freescaleの提供するSFIO Toolboxを使ってSimulink上の制御モデルを動作させている |
Photo081:こちらがモデル図 |
Photo082:こちらが実際にSimulinkを使って動作させている…といいたいところだが、撮影時にはデモが行われておらず、ごらんの結果に |
Photo083:冷蔵庫のコンプレッサはセンサレスのPSMSをベクタ制御しており、これはMC56F8257 DSCで管理する。一方タッチスクリーン付のLCDパネルはKinetis K70で制御しており、このK70がMC56F8257の制御も行うという仕組み |
Photo088:Mosaic ServerになっていたQorIQ。Wirelessでつながっている関係でWi-FiのアダプタがUSBで接続されている |
Photo089:リモコン制御されていたのは、おなじみMindstorm NXT |
Photo090:MCF51MM256(ColdFire MCU)にMC34673(バッテリチャージIC)、MC13202(ZigBee)、MMA7660(加速度センサ)という組み合わせで構成されている |
Photo091:ターゲットボードはPXSファミリMCU。IEC 61508 SIL3に準拠という点が売りで、必要ならDual Coreを使ってlock step動作も可能である |
最後にもう1つ、Connected Homeエリアに展示されていたものを。液晶パネル付の冷蔵庫の制御パネルがFreescaleベース、という話であったのだが、全体はただのモックアップで、製品かどうかも不明であった(Photo095)。
多くの機器に搭載される通信プロセッサ - Network
まずNetwork部門の搭載製品から紹介してゆくと、Emerson Network PowerのCOMX-P1022 Module(Photo096)やCOMX-P4080、AdvantechのAMC-4201(Photo098)、TQのTQMP2020 Module(Photo099)、RadiSysのATCA-7240 Packet Processing Module(Photo100)、Embedded PlanetのEP4080A(Photo101)といったコンポーネントや、CiscoのAironet 3600シリーズAccess Point(Photo102)、TP-Link TechnologiesのDual Band Wireless Router(Photo103)といった製品が展示されていた(というか、他にもいくつか展示されていたが、KontronのAM4120の様にヒートシンクしか見えない、なんてものも多かったのでこれらは割愛した)。流石に通信プロセッサの部門でトップシェアのメーカーだけあり、搭載製品はかなり多かった。
Photo096:1.067GHz駆動のQorIQ P1022を搭載するCOM ExpressフォームファクタのCPUモジュール |
Photo097:説明にはCOMX-P4080とあったが、どうみてもCOMX-P4040の方であろう。最大1.5GHz駆動で、これもCOM Expressフォームファクタを採用 |
Photo098:最大1.5GHz駆動のQorIQ P4080を搭載するAdvanced MCフォームファクタの製品 |
Photo099:QorIQ P2020を搭載するCPU Module。動作周波数は1.2GHz |
Photo100:ATCA-7240自身は、メインにCavium NetworksのOCTEON IIをDualで搭載するが、それとは別にQorIQ P2020を搭載する(写真で言えば左上)というちょっと面白い構成 |
Photo101:1.5GHz駆動のQorIQ P4080に最大8GBのDDR3 SDRAM、128MBのNOR Flashも搭載し、これ単独でも動作するというちょっと珍しい構成 |
Photo102:IEEE 802.11n準拠で4×4 MIMO 3 Sparial Stream対応の製品。QorIQ P1023を搭載 |
Photo103:型番は掲載されていなかったが、構成から見てN600 Wireless Dual Band Routerと思われる。QorIQ P1014を搭載 |
さて展示の方に目を移すと、発表されたばかりのAirfast RFを使った基地局向けRFソリューションのデモ(Photo104)、QorIQ Convergeを使ったスモールセルベースステーションのリファレンスデザインの動作デモ(Photo105~108)や、QorIQを利用したIEEE1588のサポート(Photo109,110)、QorIQ P10xxシリーズを使ったマルチサービスゲートウェイの動作デモ(Photo111)などのほか、IEEE802.11acに対応したエンタープライズ・アクセスポイントの動作デモ(Photo112)などに加え、Kinetis K60を使ったVoIPベースのネットワークインターコム(Photo113~115)やQorIQを使ったSANベースステーション/NASの動作デモ(Photo116~119)などが行われていた。
Photo108:こちらはUser 0/1のPC。動画のストリーム再生やネットワーク速度の測定結果をリアルタイム表示 |
Photo109:QorIQの開発ボード2枚をイーサネットで接続し、IEEE1588を使って実際に時刻同期を取るという動作デモ。QorIQは全製品でIEEE1588のサポートを行っており、最大10GbEまで対応可能とのこと |
Photo112:QorIQ P1020/P1023を使い、Dual Card/Dual Band(例えばIEEE802.11ac+IEEE802.11n)を同時に利用できるとした。ただデモ機はまだ試作段階とあってか発熱が多いようで、扇風機で冷却していた |
Photo113:Tower Systemを使ったVoIPデモ機 |
Photo114:Arcturus Networkの提供するVoIP用の管理ソフト |
Photo115:Arcturus Networkは自社でもKinetis K60ベースのボードをリリースしており、会場では並んで展示されていた |
ワイヤレス給電などの新テーマも展示- Enabling Technology
この分野は言ってみれば「その他」ということになるが、色々と興味深いものが展示されていた。まずは基調講演でも登場した低消費電力レースの実機(Photo120~122)である。
Photo120:各MCUへの電源はご覧の通り2200μFの電解コンデンサ4つで、そのため本当に一瞬で使い切ることになる |
Photo121:その電源部への再充電や、各MCUのCoreMark実行状態の監視などは、裏に置かれたTowerSystemで全てまかない、結果をEthernet経由で出力するというもの |
Photo122:基調講演で示したプレゼンテーションは、あくまでもオーバーオールで、こちらは流れる電流量と時間の関係をプロットした、いわば生データ |
基調講演でもその性能の高さは示されていたが、こうして電流の値を見てみるとその理由が良くわかる。稼動時の消費電力そのものは8mAに達しており、これはTIのMSP430と同等レベル。ルネサス エレクトロニクスのRL78は6mA未満、Microchip TechnologyのPIC24は4mAを切っており、このピーク値だけ比較すればそれほど優秀とは言えない。ところが、処理が終わるまでの時間が圧倒的に短いのがKinetis Lの特徴である。Photo122ではKinetis Lがおおむね1秒、MSP430がおおむね2秒といった処理時間で示されているが、これは時間方向の解像度の問題であって、現実問題としてはMSP430の6分の1未満、0.3秒程度で処理が終わっているのではないかと考えられる。待機中の消費電流はどのMCUもほぼ同等に見えるので、もっぱら問題は処理を行っている稼働中の消費電流の時間方向の積に帰着するわけで、ここで単位時間あたりの処理性能の高いKinetis Lに軍杯が上がったという理解で良いかと思う。
ところで先日Windows 8のRTM入りが発表されたが、会場ではすでにWindows 8に対応したSensor Fusion Platformが展示されていた(Photo123,124)ほか、FTF期間中に発表されたFXOS8700CQという加速度と磁気の6軸センサの動作デモも行われていた(Photo125,126)。
Photo125:eコンパス用ということで、やはり加速度と磁気センサを内蔵したFXOS8700CQ。パッケージサイズは3mm×3mm×1.2mmとかなり小型 |
Photo126:eコンパスのサンプルアプリケーション |
また今回はワイヤレス給電は新しいテーマになっており、Technical Sessionでも"Freescale and Wireless Charging"というセッションが用意されていたが、会場にもリファレンスデザインの1つが展示されていた(Photo127~129)。
もう少し一般的なものとしては、i.MX 6を使った4画面出力のリファレンスキット(Photo130)とか、QorIQを使ったRapid Development Kitの紹介(Photo131)などもちゃんとブースを設けて説明していた。
Photo130:このリファレンスキットそのものは以前から同社が公開しているものに見えるが、4画面独立出力とか、フル3DやH.264 High Profile 1080p60のビデオ再生能力などを生かして、新しいアプリケーションが作れますという点を強調していた |
Photo131:画面に筆者が大写しになっている点はご容赦を |
FTF Japanでも見られる可能性があるものも
駆け足でTechnology Labの面白そうなものをご紹介してきた。ちなみにこれでも写真の半分は落としているのだが、それでもこの分量である。 筆者の場合、初日のほぼ全部と2日目の半分くらいを費やして、やっとTechnology Labの取材を完遂した(しかも結構駆け足である)が、まじめに説明を聞いて質疑応答を交わしていたら、多分3日間では取材が終わらないだろう、という分量であった。しかも今回はスポンサーブースは入れていないわけで、これまでやろうとすると一人では不可能、という分量の展示となっていた。残念ながら日本で開催されるFTF Japanにこのすべてが来るわけではないとは思うが、今年は会期が2日に拡大していることもあり、日本市場の関心の高いものは来る可能性があることから、興味ありそうなものはまたFTF Japanで改めて話を聞いてみるというのが面白いのではないかと思う。