【インタビュー】
2012年6月2日、日本科学未来館にてオライリー・ジャパンが主催するカンファレンス「Maker Conference Tokyo 2012」が開催された。これに先立ち、同カンファレンスで基調講演とパネルディスカッションに参加するため来日したDale Dougherty(デール・ダハティ)氏に話を聞く機会をいただいたので、その模様をお伝えしたい。なお、同氏はMakeのファウンダーでMaker Faireの共同創設者であり、ホワイトハウスから「変革の旗手(Champion of Change)」と呼ばれている。
──はじめに、来日した印象を教えてください。
デール氏:Make関連で来たのは初めてだが、以前家族で観光旅行できたことはある。その時はとても美しい、文化が美しい国だと感じた。
──「Make」ムーブメントというくらい、雑誌「Make:」の果たした役割は大きいと感じますが、なぜここまで大きな影響があったのでしょうか。
デール氏:まず、ものづくりをする人の好奇心のエネルギーはすごい、ということが言えると思う。以前からさまざまなものを作る人は数多くいたが、個々で独立していた。それをつなぐことができたのが「Make:」であったのではないだろうか。
──現在ではインターネットがあるので、「Make:」(雑誌)なしでも個々のMakerがつながることはできるのではないかと思います。それでも雑誌Make:の存在価値はあると思われますか。
デール氏:(インターネットで見つかる情報と違って、Make:ではまず完成形を提示して、そこから詳細な製作記事を提供している。だからこれから始めたいと思っている人に対して価値を提供できていると思う。
──個人的には、日本ではMakeムーブメントという言葉にオライリーという色がついてしまっている印象があります。それについてはどうお考えでしょうか。
デール氏:オライリーがMAKEという言葉の商標を取っているわけではないし、オライリー一社のものだとも思っていない。オライリーはあくまでMaker達をリード、フォローしていく立場だと考えている。Makeムーブメントを動かしているのは、オープンソースと同じように、参加しているみんなの力によるものだ。
だからみなさんも、自由にMAKEという言葉を使用してもらえればと思う。
──日本では、興味があってもやる前からあきらめてしまう人が多くいます。そういう人もMakerになるために、どのようなことを米国などではしてきたのでしょうか。
デール氏:道具の入手方法や部品の入手方法など、初めての人が躓きやすいところからきちんと説明して、なるべく入るための敷居を下げるようにしている。また、はじめようとする人達に、孤独ではないんだよ、仲間がいて一緒にできる場所があるんだよ、ということを伝えるようにしている。例えばスポーツにもチームやクラブがあって、そこに行けば練習できるのと同じように、Makerにもそういうものがあるということを伝えている。
──コミュニティがあるのは良いことだと思いますが、そういうところですごい人が活動しているのを見ると萎縮してしまって、やる気がなくなってしまうことがあります。そうならないようにするために必要なことはどんなことでしょう。
デール氏:すごい人も、昔は素人だったんだ、と伝えることは重要だ。
(同席していたオライリー・ジャパン社長のジョン・ムーア氏)オライリーではさまざまなArduino関連書籍を出版しているが、一番売れているのは「Arduinoをはじめよう」だ。だから、多くの人は萎縮せずにMakerとしての一歩を踏み出してくれているのではないかと思っている。
デール氏:雑誌のMake:では、どうしてもよくできた完成形を提示することになってしまうが、Maker Faireではさまざまなレベルの人が参加できる雰囲気を維持することを非常に重要視している。
誰でも作ることはできる、頭の中で考えていることを外に出していくことは誰にでもできること、ということをメッセージとして伝えていきたいと思っているからだ。
そして、何か作ったらそれをいろいろな人に見せ、その反応を見たいと思うだろう。そのためにMaker Faireは開催されているんだ。
──「MAKE」という単語にはさまざまな「作る」という意味が含まれていますが、Makeムーブメントではどの意味が中心となっているとお考えでしょうか。
デール氏:どれが中心という気持ちはなく、さまざまざ「作る」を含めるために広範囲な意味を持つ「MAKE」という言葉を使っている。消費に対する言葉としての「作る」だ。
また、それがホビーなのかビジネスなのか、その境界線はあいまいで良いと思っている。仕事にしたからMakerではない、とは言いたくないね。
──Makeムーブメントと、従来からあるDIY(Do It Yourself)ではどこが違うと思われますか。
デール氏:確かに、MakeムーブメントはDIYから生まれてきたものだ。しかし、DIYというと、自分のためのものを作るとか、壊れたものを修繕するとかいう意味合いが強く、テクノロジーからは少し遠い印象がある。また個人的な目的で行われることというイメージも強い。MAKEはもっと社交的で、エレクトロニクスを中心とするテクノロジーを使うという印象だ。
──MAKEムーブメントを教育の現場に持ち込む際のことを教えてください。またその際、先生の教育はどのように行いますか。
デール氏:まず、学校の中に「Maker Space」を確保するということがある。これは実際の空間という意味だけではない。
次に、後者の質問の回答になると思うが、どういう教え方をするかが重要になる。
まずは子供達がすぐに入ってこられるような、敷居が低くて簡単な課題を体験してもらう。子供達は作るのが大好きなので、体験させると飛びついてくる。そうして課題を体験しながら、失敗やチームワークを学んでいってもらう。
そうやって子供達が問題を解決することの手伝いができているのはうれしいね。
──失敗してもいい、ということをどう伝えていけば良いのでしょう。
デール氏:どうやってもいい、ということを伝えている。学校では決まったルートを教えてしまうので、そこから外れたものは失敗だと思ってしまうが、実際にはそうではないということを示してやる必要がある。
ルートから外れたものを失敗として排除しない、失敗を再定義することが必要だと思う。
──米国ではMAKEムーブメントに関連する業務がビジネスとして成立していると見えますが、日本でも成立するでしょうか。
デール氏:先日、ハードウェアのワークショップをパロアルトで行った。これはサプライヤーやメーカー、キットの組み立てを行う人などさまざまな人がきていて、情報やアイデアを交換する場にもなっている。
いろいろな人達がいろいろなアイデアを持ち寄ることで、一件一件は小さい研究開発費でも、創造性の高いものを作ることができるのではないかと思っている。
──実は、私の知人がMAKEムーブメントをベースにしたベンチャー企業を立ち上げてました。
デール氏:日本でもそういう人が出てきているのはうれしいね。ネットで販売して反響を生んで、当初考えてもみなかったものがビジネスとして成り立つ、というのはよい流れだと思う。
また、その製品やサービスをMaker Faireに出展してもらって、そこで来場者の意見を直接聞いて、さらに良いものを作っていけるような流れができるといいと思うね。
──最後に、これから日本のMakerに対してどういうことを期待しますか。
デール氏:今回は、これから支援しよう、ということで来日したので、まだ今すぐどうということはないが、なにしろ一番に言いたいのは、日本のMakerのみなさん、もっといろいろ作って僕に見せてよ、ということだね。
先ほども言ったが、成功か失敗かは自分の定義次第だ。自分たちの文化、自分たちの伝統をベースとして、作りたいものを作っていけばいいと思っている。
先日もイタリアに行ってきたが、イタリアならではの考え方、ものづくりの方法があった。なにかを作るとき、日本ならではの考え方、作り方があるだろうから、それを大切にしてもらいたいと思っている。
──ありがとうございました。
Maker Conference Tokyo 2012の翌日には韓国で初めてのMaker Faireが、その次は台北で開催されるなど、Maker Faireの拡大は非常に活発だ。日本の秋に毎年開催されていた「Make: Tokyo Meeting」も「Maker Faire Tokyo」に名を変えて開催されるとのことなので、この名称変更により、何がどう変わるのかも含め大変期待されるところだ。
なお、2012年8月には岐阜県大垣市にて「Make: Ogaki Meeting」が開催されるので、中部、関西圏の方々はそちらにも足を運んでみるとよいだろう。
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