JR東日本が実施した東京駅丸の内駅舎の報道公開では、駅舎内に開業する「東京ステーションホテル」の一部も公開された。全6タイプの客室の中から「パレスサイド」「ドームサイド」の2室と、開業当初から存在したトンガリ屋根の内部を活用した最上階の「The Atrium」だ。デザインコンセプトは「ヨーロピアン・クラシックと現代デザインの調和」という。

復原工事が進む東京駅丸の内駅舎。2~3階の窓のほとんどがホテルの客室である

左側の大きな赤い四角が「The Atrium」。右下の小さな赤い四角がホテル入口

1915年に開業し、約100年の歴史を持つ名門ホテルが、復原された国の重要文化財・東京駅丸の内駅舎で、その歴史、格調、快適さにおいて新たな1ページを刻むことになる。ホテル全体のインテリアデザインには、英国のリッチモンド・インターナショナル社を起用し、国内・海外から上質な素材を選んだという。

夕日や夜景を楽しめる「パレスサイド」

3階建てとなった丸の内駅舎のうち、2~3階の大半をホテル客室が占める。「パレスサイド」は東京駅の正面玄関と丸の内オフィス街に面した西向きの部屋。客室数は81室あり、最も多いタイプだ。広さは26~58平方メートル。公開された部屋は40平方メートル。窓から皇居に通じる行幸通りが見えるほか、次々に建てられた丸の内のビル群が並び、夜には商業スペースのにぎやかな明かりを楽しめる。高層ビルはほとんどがガラスのため、そこに映った空の色も楽しそうだ。

「パレスサイド」客室

ベッドは国内最高級のセミダブル

入室してまず驚くところは天井の高さだ。2階は約3.7m、3階は約3mもあるという。日本の中央駅として建てられた駅舎の堂々たる姿を生かすと、内側はこれくらいゆったりとした天井高になる。この高さを引き立てるように、窓も縦長で採光も良好。ベッド側の壁のボードも2mの高さで、広々とした室内を演出している。この天井を楽しむために優雅なデザインのシャンデリアを採用している。これは部屋によってデザインが異なるとのこと。

リビングスペースには英国伝統のウイングバックチェアを配した一方で、ミラーには現代的なデザインを使う。伝統と現代の調和を感じ取れる

この部屋はツインルームタイプで、ベッドは120mm×200mmのセミダブルサイズ。シモンズ社製で、クッションの高さは8.25インチと国内最高クラス。照明もこだわり、ベッドサイドの読書灯はLEDを使い、明るく拡散しない光源で同室者に配慮した。足元灯もバスルーム、トイレの照明と連動して通常の30%程度の明るさとなり、夜中に起きてもまぶしくならず、目が覚めないように考えられている。

最新式トイレが外国人観光客をうならせるはず

ゆったり入れるバスタブがうれしい

洋風でまとめられている室内設備の中で、バスルームとトイレは日本らしさを強調した部分といえる。バスタブはたっぷりと体を伸ばしてくつろげるサイズとなり、トイレはTOTO製のタンクレス、センサー開閉タイプの最新式だ。

窓からの眺め。ガラスに映る朝陽と夕陽、行幸通りの並木や夜景を楽しめる

作動音がある冷蔵庫はキャビネットに格納。棚と引き出しには茶菓などがある。落ちないキャップの「フロム アクア」

東京駅を行き交う人間模様を眺める「ドームサイド」

駅舎の南北に再現されたドーム。その内側は丸の内北口と丸の内南口で大勢の人々が行き交う。そのドーム内部に面した部屋が「ドームサイド」。最も東京駅らしい部屋と言えそうだ。客室数28室で広さは30~44平方メートル。公開された部屋は44平方メートル。雑踏に面し、ドームの響きもあってにぎやかそうだが、そこはちゃんと考えてあって、部屋の窓は二重構造になっている。

窓からの眺め。工事中は利用客の保護のため、下の吹き抜け部分がふさがれているが、下方に行き交う人々を眺められるという

雑踏の音を遮断する二重サッシ。列車の音、駅の案内放送などは完全に遮断される……、鉄道ファンには寂しいかも

こちらは天井高がさらに高く、約4mもある。円柱のドームに面しているため、部屋が「く」の字になっており、ベッド側とリビング側の空間にゆとりがある。また、こちらのタイプはウォークインクローゼットがあるので、衣装の多い女性も安心だ。それ以外の水まわりなどの設備は「パレスサイド」と同じ。ちなみに、テレビは「ドームサイド」「パレスサイド」が40インチ。他の部屋のテレビは、「クラシック」が32インチ、「スイート」は50インチとのこと。インターネット設備はホテル全館で無線LANを使用可能。客室は無線LANの他に有線LAN接続も利用できるという。

ドームサイドはさらに天井が高い

サイドテーブルにセキュリティボックス。照明はLEDの白い光

広めのリビングスペース。40インチのテレビが小さく見える!?

ベッドサイドテーブルの下部は暗証番号式の金庫になっている。ところで、テーブルの上のメモ用紙に注目。なんとホテル特製で原稿用紙をデザインしている。東京駅といえば、政界、産業界のセレブだけではなく、歴史に残る作家にも愛用された。「違う! カンヅメにされたんだ」と怒られそうだけど、ここで生まれた作品といえば松本清張の小説『点と線』があまりにも有名だ。『点と線』といえば、東京駅ホームの5分間の見通しが事件の鍵になる。そういえば、ドーム下の改札口が見えるなら、トレインビューの部屋はあるだろうか? 「いくつかできる予定です。ただし……、ホームを見通せる部屋はございません。中央線の高架ホームができてしまいましたので」とのこと。

水回り設備やインテリアは客室共通。ただし「スイート」以上はブロアバスとなる

メモ帳は原稿用紙をイメージ。文豪気分になれるかも

陽光降り注ぐ「The Atrium」の朝食は宿泊者限定

東京駅の中央部はドームではなく、三角スレート屋根になっている。これも開業時当時の姿に忠実な構造だ。ただし、中身は当時と異なる。開業時、この三角屋根部分は屋根裏として使われていなかった。今回はここを広さ400平方メートル、高さは最高で9mの広場「The Atrium」とした。皇居側から見ると当時の姿だが、中央線ホーム側の傾斜部分はガラス張りになっていて、そこから太陽の光が降り注ぐ。逆に夜は室内の明かりを透過させ、夜景の中で東京駅の存在感を示すという。

「The Atrium」は宿泊客専用ラウンジとなり、朝食が供される予定。94席で個室やライブラリースペースも用意される。フレンチのシェフによる朝食は、オーガニックベジタブルやフルーツ、ハム、ベーコンなど約50種類の料理を楽しめる「コンチネンタルブッフェ」が2,800円。さらにオムレツやスクランブルエッグなどの卵料理を追加した「アメリカンブレックファスト」が3,600円。焼き魚をメインとした和定食が3,800円とのこと。ここはステーションホテルに泊まらなければ利用できない。

「The Atrium」の中央線側は大きなガラス張りとなった。皇居側の壁には赤レンガを残した部分も。国指定重要文化財の中でくつろぐという実感が演出される

2層構造の「メゾネット」や1室だけの「ロイヤルスイート」も

東京ステーションホテルには、今回公開された他に4種類の部屋タイプがある。「クラシック」はダブルベッドで、ビジネス客の長期滞在にも適しているという。「メゾネット」は2層構造で、リビングルームとベッドルームが独立している。スイートは駅舎突塔の最上階にあり、広い空間やブロアバスを装備したハイクラス。4室のうち2室は2層構造となる。「ロイヤルスイート」は駅舎中央の3階に1室だけ。窓の正面で行幸通りが見通せて、皇居に向かい合う景観となるとのことだ。

東京ステーションホテルの客室の種類と料金

客室 広さ(平方メートル) 料金(部屋単位) 室数
クラシック 23~47 3万30~5万6,595円 29室
パレスサイド 26~58 3万5,805~7万6,230円 81室
ドームサイド 30~44 3万8,115~5万6,595円 28室
メゾネット 65 11万5,500円 7室
スイート 72~120 20万7,900円 4室
ロイヤルスイート 173 80万8,500円 1室