QoSとは

QoS(Quality of Service)は日本語では「サービス品質」と訳されることが多い。ここで言う「サービス」とは、利用しているアプリケーションの機能と考えるとよいだろう。たとえば、WebブラウザであればWebサイトを閲覧する、IP電話であれば相手と通話する、動画ストリーミングのアプリケーションであれば動画を視聴するといった機能などだ。 ネットワーク上にはさまざまなアプリケーションのデータがやり取りされている。スイッチやルータなどで適切にアプリケーションのデータを転送することで、アプリケーションの機能の品質を確保する技術全般がQoSだ。

QoSの仕組み(DiffServ)

QoSの仕組みとして一般的によく利用されているのはDifferentiated Service(DiffServ)だ。DiffServは、ルータやスイッチなどのネットワーク機器で、パケットを分類して、優先度に応じたパケットの転送を行う仕組みだ。DiffServモデルでのQoS制御は、次のプロセスで行う。

  1. 分類(アプリケーションの種類に応じてトラフィックを分ける)
  2. マーキング(分類したトラフィックに優先順位となる目印を付ける)
  3. キューイング(複数のキューを使用し、マーキングなどに応じてキューに振り分ける)
  4. スケジューリング(キューに割り当てた優先度や帯域幅にしたがってトラフィックを送信)

図4 : DiffServの基本動作

まず、ルータやスイッチは受信したパケットを分類する。分類する基準はさまざまあり、主なものとして、「CoS(Class of Service)」「IPアドレス」「IP Precedence」「DSCP(Differentiated Service Code Point)」「TCP/UDPポート番号」などがある。これらのどの基準を採用するかは、設定に依存する。

分類した結果、パケットに目印を付けるのがマーキングだ。マーキングは、「CoS」「IP Precedence」「DSCP」などで行う。

マーキングしたパケットをインタフェースから出力するために、キューに入れることを「キューイング」と呼ぶ。キューとは、インタフェースからパケットを送信する前に一時的にパケットを待機させるメモリ上の領域である。優先度に応じてパケットを適切なキューへとキューイングする。キューイングすることによって、パケットを送信する順番を変更することが可能だ。

そして、キューイングしたパケットをどのような順番で出力インタフェースからネットワーク上に送出していくかを決定するのがスケジューリングとなる。 次の図は、DiffServによるQoS制御の例を表したものだ。

図5 : DiffServのプロセスの例。図中のVは「VoIP」、Fは「FTP」、Hは「HTTP」を表している

こちらは、さまざまなアプリケーションのパケットがバラバラな順番でやってくるネットワークにおいて、あらかじめ設定した優先順位に基づいて、VoIPパケットを最優先で転送している例だ。

QoSに対するネットギア製品の対応

ネットギア製品でQoSを利用できるのが、Prosafe Plus以上のカテゴリのスイッチである。ただし、設定可能なパケットの分類やマーキングの基準が異なるので注意が必要だ。 Prosafe Plusおよび10/100Mbpsのスマートスイッチでは、IEEE802.1pを利用したパケットの分類やマーキングを行うことができる。IEEE802.1pは、VLANタグ内のCoSを参照したパケットの分類やマーキングを行う。ギガビットスマートスイッチやL2/10Gフルマネージスイッチでは、IP PrecedenceやDSCP、TCP/UDPポート番号などのレイヤ3以上の情報を利用してよりきめ細かく分類とマーキングが可能だ。

また、キューイング/スケジューリング方式としてPQ(Priority Queuing)を指定することができる。VoIPパケットなど低遅延でなければならないパケットを転送するためにPQを利用できる。そして、各キューの重みを設定して、キューごとのスケジューリングの優先制御を行う。

表2 : ネットギア製品のQoSの対応

製品カテゴリ QoS
802.1p L3以上 PQの対応 キューの数
10Gフルマネージ 8
L2フルマネージ 8
Smartスイッチ 4
Prosafe Plusスイッチ × 4(固定)
アンマネージスイッチ × × × ×
※ スマートスイッチでL3以上の情報を利用できる

*  *  *

以上、本企画では2回にわたり、ネットワークスイッチの基本機能について解説してきた。実導入の際に検討しやすくなるよう、ネットギア製品を例に、実機のラインナップも紹介しながら解説したがいかがだっただろうか。

オフィスの裏でひっそりと稼働するネットワーク機器について難しいイメージをお持ちの方も多いと思うが、そこに備わる機能一つ一つはそれほど複雑ななものではないことをお分かりいただけたのではないだろうか。

本企画の内容がITスキルアップの一助となれば幸いである。