富士通は5月8日、富士通グループが培った製造分野での実践ノウハウ等を企業に提供する新たなサービス「ものづくり革新隊」についての記者説明会を行った。これは製造業の製品・サービスをICTで強くする「NextValue」活動の一環で、同社ではこの取り組みを通じて日本の製造業の支援を行っていきたいとしている。

ものづくり革新隊は、富士通が同社グループ企業の強みである製造販売の実践ノウハウや工場ロボットなどのツール、および優れた人材をサービスとして提供するというもの。これにより、製造業に携わる企業はローコストで効率的に、製品の性能向上や品質の強化、開発・生産スピードの加速などを実現できる。販売目標は今後3年で1,000億円を目指しているという。

説明会の冒頭に登壇した同社産業ソリューションビジネスグループ長 執行役員常務の花田吉彦氏からは、これまでの富士通の取り組みと、ものづくり革新隊ができた経緯について簡単に説明があった。富士通では、2004年にはTPS導入や現場改善システムの活用などにより製造時間の短縮、製造コストの削減などを実現させてきた。また、2007年には製造現場のエキスパートが企業と共に問題点の改善などを図っていくサービス「フィールドイノベーション活動」を行い、300件以上の実績をあげてきたという。ものづくり革新隊の取り組みはこれら過去の活動を踏まえたもので、製造全体のプロセスを見越した包括的なサービスを提供することができる。

この取り組みについて説明する、産業ソリューションビジネスグループ長 執行役員常務の花田吉彦氏

花田氏は「企画、設計、開発、調達、製造、品質管理を一括して行っている当社ならではの取り組みです。お客様のものづくり革新を強力に支援します。メイドインジャパンの製品が今後も世界一であり続けるために、この活動を通じて日本の製造業界に貢献させて頂きたいと思います」と力強く結んだ。

続いて登壇した同社民需ビジネス推進本部長の安楽孝氏からは、ものづくり革新隊の概要説明が行われた。同社では「頑張ろう日本の製造業、応援しますものづくり」というスローガンを掲げ、ものづくり革新を進めているという。富士通の強みは、独自のソリューションを通じて製造業の活動を全面的に支援できる企業であること。具体的にはモデル工場、グループ会社、富士通内部の技術部門/人事部門/共通部門で培った実践ノウハウ・ツール・人材を「ものづくりエキスパートサービス」(指導やサポートを行う)「ものづくりツール」(ロボットなどを提供する)「ものづくり受託サービス」(高度な専門業務を受託する)として提供する。

概要を説明する民需ビジネス推進本部長の安楽孝氏

ものづくり革新隊のコンセプトとサービスの全体像

富士通生産方式の実践事例で紹介された富士通ITプロダクツ(FJIT)は、スーパーコンピュータ"京"の製造でも知られている工場。TPSを高度な次元で導入しているという。富士通周辺機(FPE)工場はラインのオートメーション化などにより、中国で生産する場合と変わらないほどのローコストで製品が生産できるのが特長。安楽氏は「我々の自慢の工場です」とアピールした。

ものづくりエキスパートサービスでは、バーチャルに製品工場を再現することで、開発段階で設計の完成度と量産性を同時に、早期に検証することができる。具体的には「バーチャルプロダクト」でデータ上での設計問題の潰し込み/設計上での量産問題の潰し込みなどが、「バーチャルファクトリー」で製品にフォーカスした生産準備/作業現場にフォーカスした生産準備などが行えるという。

富士通生産方式の実践事例とものづくりエキスパートサービスの例

会場ではスライドでバーチャル製品工場のデモが紹介された

ものづくり受託サービスでは電気系の解析受託(シミュレーション)および品質管理に加え、自動機監視・保守などの運用オペレーションなども行う。サービスは2012年10月から順次開始予定で、2013年度以降さらにグレードアップした形で展開されるという。安楽氏は「日本のものづくり活動の全領域を総合的に支援します。是非、ご期待ください」と結んだ。

ものづくりツールの例とものづくり受託サービスの例

新サービスの提供スケジュールとものづくり革新隊の目指す姿

最後に質疑応答の時間が設けられた。今回のサービスで発揮される"富士通ならではのものづくりの強み"について聞かせてください、という質問に花田氏は「これまでも各分野に個々の専門サービスを提供する、ぶつ切れのサービスは存在していた。でも今後企業は、企画・開発から物流・品質管理まで、ものづくりの環境をトータルに考えて、一体的なシステムを構築することが重要になってくる。こうしたとき、トータルでソリューションを提供できる当社のシステムとノウハウは非常に強みになる」とした。

販売目標である"今後3年間で1,000億円"についての内訳は、という質問に安楽氏は「当社の製造分野での販売額の、10%から20%を想定している。新しいビジネスなので、今後は産業分野の成長路線に乗せて大きく伸ばしていきたい」と答えた。

ものづくり革新隊の規模やサービスを提供する業界についてのイメージを聞かせてください、という質問があった。安楽氏によると顧客サポートに関わる部隊は「ものづくり技術推進部」として汐留に10名が在籍しており、工場には現在のところ300名ほどの人材が配備されているという。また、サービス開始当初は製造業界の準大手以上のメーカーを対象にしており、その数はおよそ900社以上にのぼるとのことだった。