アドビ システムズは、最新のクリエイティブソリューションを紹介する『Adobe Creative Cloud & CS6』発表イベントを「品川ステラボール」にて開催した。本レポートでは、同イベント第1部に行われた同社代表取締役社長であるクレイグ・ティーゲル氏の挨拶と、デジタルメディア事業部門Creative Pro担当バイスプレジデントのマーラ・シャーマ氏による基調講演を紹介する。

30周年を迎えたアドビ システムズの変革

アドビ システムズ代表取締役社長のクレイグ・ティーゲル氏

発表イベントの冒頭でティーゲル氏は、変わりつつある世界と、その変化に対応する同社の変革を語った。

「変わりつつある世界とは、デバイスの多様化だ。インターネットによるコンテンツ配信は、従来のデスクトップPCはもちろん、タブレット端末やスマートフォン、さらにスマートテレビといったデバイスにまで及んでいる。当然、それらのデバイスに合わせたコンテンツの配信も必要とされる時代になり、Facebookなどの人気ソーシャルメディアの登場も、変わる世界の一員を担っている」

また、設立30周年、日本法人創立20周年を迎えた同社では、その間に様々な市場のイノベーションを牽引し、いろいろな形で未来を作ってきたとのこと。例えば、デスクトップパブリッシング、Webパブリッシングの革新・革命、企業向けのリッチなインターネットアプリケーション作成などで重要な役割を果たしてきたとしている。デジタルマーケティングの事業についても、テクノロジーの開発や企業買収などによって、変革のリーダーとなってきたと説明。実際、新聞の広告、映画やTVの特殊効果、ゲーム、モバイルコンテンツ、Webサイト、デジタルマガジンなど、様々なコンテンツの中にアドビの技術が使われているのだ。

アドビ システムズの歴史

そしてティーゲル氏は、今後の世界においても「コンテンツや意見の発信方法も変化させる、その時のお手伝いをしたいと考えています。そして今、創作への意欲はかつて無いほど強く大きくなっています」とし、「本日は新たな世代のイノベーションの幕開けとして、新しいAdobe Creative Cloudを紹介したいと思います。アドビの変革の中でも大きなマイルストーンとなり、私たちの未来への大きな第一歩となります」とコメントした。

基調講演で語られた現在、そして未来への対応

デジタルメディア事業部門Creative Pro担当バイスプレジデントのマーラ・シャーマ氏

基調講演でシャーマ氏は、ティーゲル氏が触れたデバイスの多様化やソーシャルメディアの普及といった時代の変化に対して、同社が出した答えがCreative Cloudであり、Creative Suite 6(CS6)であると説明した。

「これまで無かった変化がマーケットに起こっています。それは、多くのデバイスの普及です。年間でスマートフォンは5億台売られ、2014年までに4億というタブレット端末が販売されると考えられています。そして、Facebookのユーザーは10億人に達し、平均的なコンシューマーは1日あたり1時間のWebブラウジングをします。ですから、コンテンツやデバイスを利用する時間がどんどん増えているのです」

こうした変化は、同社のコアカスタマーであるデザイナーにとって、デスクトップPC向けのWebサイト制作に注力するだけではなく、タブレット端末やその他のデバイスでも美しく見せる工夫が必要になったことを意味するという。そして、アップルストアやGoogleプレイでのパブリッシュや、キャンペーン用コンテンツをFacebookなどのSNSへ一斉配信する、といった展開も課題になるとのこと。

その結果、クリエイティブな作業のフローやプロセス、パブリッシングそのものが大きく変化していると説明。この変化に対応するには、デザイナーの才能だけではなく、何度も繰り返して利用できるオープンなデザインが必要であり、どんなプラットフォームでもフレキシブルに対応し、集約できるアプリケーションも重要であるとしている。

「Creative Suite 6」が実現する4つの新技術

こうしたニーズに応えるのが、この度発表されたCreative CloudとCS6だ。CS6は、これまでに無いほどの最高のリリースとなっており、マーキュリー・パフォーマンス・エンジンを「Photoshop」でも「Illustrator」でも利用可能にしたパフォーマンスの進化、ユーザーインターフェイスの進化、レスポンシブなレイアウトテクノロジーと可変グリッドレイアウトによる様々なデバイスへの対応、画像のシフトや移動、消去などが自在に行える新技術という、4つの重要な点を挙げている。

さらに、クリエイター同士や、クリエイターとクライアント、もしくはユーザーとのコミュニケーションを実現する場としてCreative Cloudを提供。Creative Cloudについては、各種アプリケーションの最新バージョンがリアルタイムで入手できる点や、月間または年間契約でアプリケーションを利用できる「サブスクリプションプラン」の解説も行われ、同社が新しい時代においてもデザインやパブリッシング業界を牽引していくという意欲が伝わってきた基調講演となった。