さる3月6日からドイツ・ハノーバー市で開催されたヨーロッパ最大のIT見本市「CeBIT 2012」では、主要マザーボードベンダー各社がIntelの次期メインストリームCPU "Ivy Bridge"(アイビー・ブリッジ/開発コード名)に対応したIntel 7シリーズチップセット搭載マザーボードのラインナップを披露した。しかし、Intelは、2月末に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「Morgan Stanley 2012 Technology, Media & Telecom Conference」において、Ivy Bridgeの出荷が当初より3週間ほど遅れる見通しであることをアナウンスしており、4月上旬にも出荷されると見られたIvy Bridgeの市場投入は4月末以降にずれ込んだ格好だ。

CeBIT 2012の会場となったハノーバー・メッセ

Intel 7シリーズチップセット搭載マザーボードラインナップを公開したGIGABYTE Technologyブース

MSIもIntel Z77搭載マザーボードのラインナップを公開

マザーボードベンダー関係者によると、「Ivy Bridgeは当初、PCリフレッシュサイクルにあわせて今年初頭に発表される計画だったが、3Dトライゲートトランジスタ技術を採用する22nmプロセスによるCPU製造が安定しないため、昨年末には市場投入時期が4月になると告知されていた」と言う。しかし、このスケジュールも後退したことで、すでに中国市場ではASUSTeK ComputerやECSのIntel Z77マザーボードがフライング販売されている。さらに、CeBIT会場では複数のマザーボードベンダーがIvy Bridgeの発売を待たずにIntel 7シリーズチップセット搭載製品の販売を開始する意向を示すなど、混乱が生じ始めている。

その一方で、主要マザーボードベンダー各社は、現行のIntel 6シリーズチップセット搭載マザーボードでもIvy Bridgeが利用できることを告知しており、新たにマザーボードの購入を検討しているユーザーの中には、Intel 7シリーズ搭載製品の登場を待つべきか、低価格化が加速しているIntel Z68など現行製品の購入に踏み切るべきか、頭を悩ませている方もいるようだ。

そこで、本稿では、CeBIT 2012会場で取材した内容を踏まえ、Ivy Bridgeプラットフォームとして投入されるIntel 7シリーズチップセットの最新事情をまとめてみよう。

Ivy Bridgeの新機能活用にはIntel 7シリーズ搭載製品が不可欠

マザーボードベンダー関係者の話によると、「Ivy Bridgeで新たにサポートされる機能を利用するためには、Intel 7シリーズチップセット搭載マザーボードが不可欠になる」と言う。その対応表と、Intel 7シリーズの基本仕様を筆者がまとめたのが下の表だ。

この表を見ても分かるとおり、Intel 7シリーズが現行のIntel 6シリーズチップセットから大きく進化するのは、USB 3.0ポートのサポートと、より多くのチップセットでSSDをHDDのキャッシュとして利用できるようにするIntel Smart Response Technologyに対応すること、そして、Ivy Bridgeでサポートされる"新機能"を実現することだ。

このIvy BridgeとIntel 7シリーズチップセットの組み合わせでのみ有効になるプラットフォーム機能としては、サスペンド中にもメールやRSSなどのアップデートを行なうIntel Smart Connectや、高速な起動を実現するIntel Rapid Start Technologyといった、Ultrabookのウリにもなっている機能がある。また、より安全なオンライン決済やインターネットアクセスを可能にするIntel Identity Protection Technologyは、同世代のCPUとチップセットの組み合わせでしか機能しないため、Ivy Bridgeの購入を検討しているのであれば、素直にIntel 7シリーズチップセット搭載製品を待つほうが得策と言える。その一方で、パフォーマンスチューニングなどが可能であれば、Ivy Bridgeの新機能は必要ないということであれば、現行チップセット搭載マザーボードを格安に購入することもアリと言えるだろう。

Intel Z77プラットフォームのブロックダイヤグラム

さて、日本市場でもIvy Bridgeの投入より若干早く市場投入がされると見られているLGA 1155対応のIntel 7シリーズチップセットは、コンシューマ市場向けにIntel Z77とZ75、H77の3製品をラインナップ。Intel Z77/Z75チップセットのみが、CPUのPCI Express 3.0出力を分配してデュアルグラフィックス機能などを実現できるほか、CPUオーバークロックなどのパフォーマンスチューニングができるのは、現行のIntel 6シリーズと同じだ(ただし、CPU内蔵グラフィックス機能をサポートしないIntel P65の後継製品は用意されない)。

LGA1155のデスクトップ向けIvy Brdigeは、サーバー・ワークステーション向けのXeonともダイを共用するため、「Ivy BridgeベースののエントリーCPUを除けば、PCI Express 3.0 x16に加えてx4もサポートされる」と、マザーボードベンダー関係者は指摘する。ただし、「そのx4レーンを有効にできるのは、Intel Z77マザーボードとの組み合わせのみとなる」(同関係者)と言う。その一方で、「このPCI Express 3.0 x4をどのように利用するかは、マザーボードベンダー次第」と指摘する関係者もいる。同関係者は、「x4出力を追加のUSB 3.0やSATA 6Gbps、Thunderboltコントローラへの接続に使うベンダーもいるようだ」と言うように、PCI Expressスロットのレール配分や、機能制限などは、量産モデルが登場するまでは分からない状態だ。

なお、前掲の表には企業向けモデル向けチップセットのIntel Q77やIntel B75の基本仕様も掲載したが、これらのチップセットを搭載したマザーボードは主にシステムインテグレータやOEM向けという位置づけで、一般市場に流通する製品はごくわずかになる。

同じIntel Z77マザーボードでも、CPUからのPCI Expressスロットの配分は製品ごとに異なる

ハイエンド製品では、高級オーディオ用コンデンサを搭載するなど、サウンドクオリティにこだわった製品も増えている