日本でも、「プラチナバンド」と呼ばれる900MHz帯の電波割り当てを巡り、携帯電話キャリアが熾烈な争いを繰り広げているが、現在、世界中の通信事業者が厳しいビジネス環境に置かれている。ライバルに勝つには新たな手を打つ必要があるが、具体的にはどうしたらよいのだろうか。

今回、通信事業者の課題を解決する各種ソリューションを提供しているProgress Software Communication&Media部門のIndustry Vice Presidentを務めるSanjay Kumar氏と日本プログレスの代表取締役社長を務めるJB デュメルク氏に話を聞いた。

激しい競争にさらされる通信事業者

Progress Software Industry Vice President Communication&Media Sanjay Kumar氏

まずはKumar氏に、グローバルの通信事業者に見られるトレンドを聞いてみたところ、「コンシューマー対象のビジネス、企業対象のビジネスに分けて考えられる」と同氏は答えた。

コンシューマービジネスにおけるトレンドとは「加入者の奪い合いによる競争の激化」だ。ここでの競争に勝ち抜くカギとして、「ユーザーのニーズに合致したサービスを提供できること」を同氏は挙げる。「ユーザー一人ひとりがどのような趣味・趣向を持ち、どのようなサービスを利用しているかをきっちりと把握することで、各ユーザーに適したプロモーションやサービスの提供が可能になる。こうした仕組みをわれわれは提供できる」(Kumar氏)

企業向けビジネスにおけるトレンドとしては「ビジネスの拡大」がある。これまで回線ビジネスだけを展開していた通信事業者も生き残りをかけて、水道やガスといったインフラ関連のサービスや金融系のサービスに手を広げていくことが予想されるというのだ。

その理由を尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。

「通信事業者は、コンシューマーに対してと同様に、企業に対してもトラステッド・アドバイザーになっていくだろう。それと同時に、通信業界は顧客のニーズにこたえるために、通信事業に限らずどんなことでも手掛ける『スーパー・インダストリー』の方向に向かうだろう。すでに、日本の通信事業者はその要素を持っていると思われる。こうした状況においては、新たな業態を柔軟に受け入れることができる基盤が必要であり、われわれならそれが可能だ」

また、「カスタマー・セントリックになることが不可欠」と同氏は指摘する。顧客が必要とする情報をプロアクティブに提供していかなくては、飽きられてしまうというのだ。そして、同氏は「AppleやGoogleはカスタマー・セントリックというコンセプトの下、ビジネスをうまく展開していくだろう」という予想を示した。

目指すは「通信事業者の業務改善」

こうした通信業界のトレンドに対し、プログレスとしてはどのようなビジネスを展開していく算段なのだろうか。

同氏は、2012年の戦略として、「企業の規模を問わず、通信事業者の中でも顧客の声が直接上がってくる部門に対し、製品を訴求していくことを狙っている」と語った。その際は、日本のパートナーと協力して、日本市場のニーズに合った製品を提供していきたいという。

特に注力していく製品としては、「Progress RPM(Responsive Process Management)」がある。Progress RPMは「エンドユーザーが、どのサービスをどのようなシーンで利用しているかを的確に理解し、次のアクションへとつなげる仕組み」であり、同社の「Actional」「Apama」「Savvion」の各製品と管理ツールから構成されている。

加えて、企業のIT部門だけでなく、ビジネス部門のユーザーにフォーカスしたソリューションの提供を強化していくことも重点戦略の1つだ。「ビジネスユーザーが業務を理解するうえで必要なことはビジネスルールの整備」と同氏は指摘する。

これを実現すべく、2011年12月にビジネスルールのトップベンダーであるCorticonの買収が行われた。Corticon社のモデル駆動型アプローチは、ビジネスユーザーでもアクセスして保守まで行うことが可能であり、変化する市場の状況に応じて用意にルールを適用することを実現するという。

さらには、M2M製品を取り扱うベンダーとの協業など、ハードウェア、ソフトウェアの垣根を越えたクロスインダストリーな世界にシフトすることで、先進的な製品を提供していく構えだ。

最後に、日本市場に対する戦略を、日本プログレスの代表取締役社長を務めるJB デュメルク氏に聞いた。

「日本にオフィスを構えて20年。10年前から、パートナー経由で国内の大手通信事業者各社に技術提携を行ってきたが、『海外の技術を日本のパートナーとともに導入する』というビジネスモデルの下、行われてきた。これからは、技術提供だけでなく、顧客企業の業務改善にまで踏み込んだソリューション提供を行っていきたい」と、デュメルク氏。

今後、さらにグローバル化が進み、ますます日本の通信事業者は厳しい状況に追い込まれるだろう。そうしたなか、プログレスが提供するソリューションを活用することで、何らかのビジネスのヒントを得ることができるのではないだろうか。

Progress Software Industry Vice President Communication&Media Sanjay Kumar氏(左)と日本プログレス 代表取締役社長 JB デュメルク氏(右)