3つの業界に関する市場動向

説明会の後半は、Xilinxが現在大きなシェアを握っている3つの業界に関する市場動向の説明が簡単に行われた。まずはTV業界に関して立平靖氏(Photo19)が説明を行った。同社は2012年のCESにて、TED(東京エレクトロンデバイス)と共同で4K2Kディスプレイに関するデモを行ったが、氏はこの内容に触れながら(Photo20)、TV業界のトレンドが明確に4K2Kなどに移行しつつあることに触れ、こうしたマーケットでXilinxの7シリーズが既に有力なソリューションになっている事を説明した(Photo21)。

Photo19:同社ビデオアーキテクトの立平靖氏。氏は本国Xilinxのマーケティングにも所属しているとの事

Photo20:アップスキャンコンバートをリアルタイムで行ったり、複数のストリームを同時に表示したり、といったデモをCESで実演して多くの関心を集めたとの事

Photo21:別のプレゼンテーションによれば、2010年~2015年における液晶TVの出荷動向予測は40型以上のクラスが大きく伸びるという話で、このクラスの液晶だと4K2Kに移行が技術的に可能なので、高品位画像を期待するユーザー層に4K2Kは浸透してゆくと予測しているそうだ

氏によれば、例えばHD画像から4K2KのアップスケールはKintex-7でまかなえる程度の負荷だそうで、今年第2四半期にはこうした高品位TVに向けたDisplay Target Reference Designをリリースするという話であった。4K2Kでは没入感を高める仕組み、あるいは画面サイズが大きいので従来の1080p映像などを表示する場合に余った場所に様々なサービスを付け加えるといった事が差別化になる(これがPhoto21の左側で、TVに様々な機器が接続されている理由でもある)そうで、開発者がこうした部分に集中できるように、それ以外のコモディティの部分をリファレンスデザインでカバーしてゆきたい、との事だった。

次に放送業界側からの状況が佐藤亮氏(Photo22)より説明された。とりあえず家電業界は4K2Kに向けて突き進んでいるが、現在のコンテンツは映画館用などのごく一部のコンテンツを除くとほぼ1080pなので、これをアップスキャンで4K2K化しているのが現状である。なので、放送局側も早く4K2K化を進める必要があるのだが、今は問題が結構多いため、Xilinxはそうしたポイントにソリューションを提供してゆくという話だった(Photo23)。

Photo22:同社フィールドアプリケーションエンジニアの佐藤亮氏。当初はブロードキャストシステムアーキテクトの安藤洋史氏が説明予定という話だったが、都合が悪くなったとかで佐藤氏が説明を行った

Photo23:主要なポイント。撮影素子そのものもさることながら、これを圧縮/伝送するための仕組みがまず必要という話であった

具体的には、まず撮影素子周りで、4K2KあるいはSuper Hi-vision(8K4Kグレード)の映像撮影のためには、撮影素子のインターコネクトも高速なものが必要だし、カメラと記憶装置間も高速なインターコネクトが必要になる。このソリューションを提供するのが第一点。2つ目が圧縮方法で、既存のMPEG-2やH.264では4K2K以上の解像度だとデータ量が大きくなりすぎる。そこで現在H.265/HEVCという新規格が現在策定中であるが、これに向けたCodecのIPをパートナー企業と開発中というもの。そして最後がEthernet化の話で、現在はまだ映像をそのまま流している形だが、これをEthernet化してゆくというトレンドが明確なので、これにむけたソリューションを提供してゆくという話であった。

Photo24:現在はSD/HD/3G/6G-SDI(Serial Digital Interface)がカメラと記録機器の間に使われているが、既に10Gとか12Gの規格も標準化されている。10G-SDIだと4K2Kがぎりぎり間に合う計算である。Xilinxは既に10G-SDIのソリューションを7シリーズで用意しており、これを提供してゆくという話

Photo25:例えばSuper Hi-vision(8K4K)を120fpsで撮影すると、非圧縮でのデータ量は72GB/secにも及ぶそうで、これは確かに何らかの圧縮技術が必要である

Photo26:2番目の10GbE AVBというのはIEEE1588で規定されていう時間同期/帯域保障の転送プロトコルである。これを使うことで、映像などを妙にずれたりデータが欠落したりすることなく伝達できるというもの

最後は角野訓志氏(Photo27)により、ワイヤードシステムに関する話があった。ここで言うのは、100Gbpsとかの高速転送の有線ネットワークの話である。Photo28は、最近市場が盛り上がり始めている100G Network機器の内部である。外部との接続はもちろん光なのだが、内部は一旦電気信号に変換した後に、各々のモジュール間をInterlakenでつなぐのが一般的(というか、他に規格がない)である。問題は100Gbpsともなると、Interlakenを使っても結構な本数のI/Oピンが必要になってしまうことで、なのでより転送速度を高速にする(図で6.25Gの場合と10Gの場合が併記されているのはそういう理由である)方向にトレンドが進みつつある。最近ではメモリもInterlakenで接続するといった形になっているそうだ。そのInterlakenに関して、XilinxはInterlaken IPとして一番シェアを持っていたSarance Tecnologyを2011年5月に買収しており、同様にOmiino/Modelwareといった、100Gbpsクラスのルータを構築するのに欠かせないIPやソリューションを提供しているベンダもやはり2011年中に買収しており、これによってこうした高速ルータに必要なソリューションを提供できる、としている。特にInterlakenに関しては、7シリーズになってSerDesが高速化されたことにより、より少ないピン数で製品を構築できるようになったことを強調した(Photo30)。

Photo27:ワイヤードシステムアーキテクトの角野訓志氏

Photo28:Interlakenは元々CiscoとContina Systemsが共同開発したインタフェース。プロトコルはSPI-4.2互換ながら、より広い広帯域で利用できる

Photo29:Omiinoの買収は2011年3月に、Modelwareの買収は同5月にそれぞれ行われた

Photo30:Xilinxの6シリーズと7シリーズの性能概要。ピン数は6シリーズ、7シリーズともにほぼ変わらないが、7シリーズでは性能が大きく向上している

ちなみに角野氏によれば、100Gbpsの転送をInterlaken経由で行う場合、概ね150~160Gbpsの帯域が必要で、これは45mm角のパッケージで200pin分に相当するとの事。I/Oピンはそもそも500pin程度がMaxなのに、メモリなどのI/Oを含むと800pin近くが必要になるとのことで、Virtex-7シリーズを使っても100Gbpsのルータは複数個が必要になるとの事。まだデータセンターなどのマーケットでは100Gbpsへの移行が進んでおらず40Gbpsが主流だが、実はこの40GbpsのルータならばVirtex-7は1つで構築できるので最適だし、ワイヤレスの基地局などの用途では既に100Gbpsが「今すぐもってこい」と言われており、こうしたマーケットに向けて複数個のVirtex-7でのソリューションを提供してゆくという話だった。

今回の事例紹介は、どちらかというとトップエンドのVirtex-7向けの話がメインで、KintexやArtix向けの話はまた今後という感じではあるが、相変わらずハイエンド向けのデマンドが強いことを伺わせる内容であった。