【インタビュー】
現在もCS放送のカートゥーンネットワークで放映されている「パワーパフガールズ」が日本に初上陸したのは2001年のこと。それから10年、本国である米国はもちろん、日本でもおなじみのキャラクターに成長した。そこで、日本におけるキャラクタービジネス事情も合わせて、"パワパフ"の人気の秘密を聞いてみた。
「パワパフはカートゥーンネットワークの中でも特にユニークなキャラクター」と語るのは、カートゥーンネットワークでパワーパフガールズのライセンスを担当する森川隆美氏。その理由は、上陸当時のメディアの取り上げられ方にあった。
「カートゥーンネットワークのターゲットはキッズ。パワーパフガールズも米国ではキッズ向けにアパレルや玩具を展開しています。ところが日本で正式に紹介される前にパワーパフガールズを取り上げたのは大人向けのファッション誌や情報カルチャー誌でした。いわゆる他のアニメーションのキャラクターとは違い、先にクリエイターや情報感度の高いユーザーに認知されたこと、これが他のキャラクターとはまったく違う部分です」
なぜパワーパフガールズは日本のクリエイターに愛されたのか。パワーパフガールズがもつ個性として、これまでのアメコミキャラと違う部分に"デザイン"がある。
「登場の仕方にも現れているんですが、(パワーパフガールズは)デザイン的な部分で話題になった点で革新的なキャラクターなんですよね。それまでのアメコミキャラで二頭身で目が大きく、輪郭線がハッキリ描かれたものは多くありませんでした。パワーパフガールズは日本人に受ける要素を持つ造形なんです。それに色使いも基本的に原色でカラフル、ビタミンカラーが多く使われています。原作者のCraig McCrackenが日本のカルチャーを意識したのか、あるいは影響を受けたのかは分かりませんが、アメコミのキャラの中でも逆輸入キャラ的な存在として受け入れられたんだと思います」(マインドワークス・エンターテインメント代表取締役・近藤健祐氏)
ところで、日本ほどキャラクターグッズが日常に溢れている国は他にないだろう。森川氏によれば「アメリカには雑貨という概念もない」そうで、日本市場での商品展開をプレゼンする際には毎度苦労するそうだ。
「海外では"キャラクター=キッズのもの"というイメージが根強く、雑貨や大人が買う文具などを商品化されることが多くありません。でも日本ではキャラクターを使った雑貨や文具は当たり前のように販売されていますよね。最近ではこの手法が海外でも注目され、日本で企画したものを米国で販売したいというリクエストも増えてきました。彼らが言うには、クッションのような大きなものからバッグストラップにもなる小さなぬいぐるみまで、キャラクターの造形がきちんと再現できている商品は他にないと言うんです。日本のこだわりがこんなところで評価されるんだなぁと思うと嬉しくなります」(森川氏)
アメリカのターゲットはあくまでもキッズでしたが、最近では"トゥィーン"(tween、チャイルドとティーンの中間層で年齢で言えば8~12才くらい)がキャラクター業界のトレンドを引っ張っている。このターゲットにハマるキャラクターが生まれれば、それこそ"ドル箱"である。一方、日本はというと、"18~24才の若いOLをターゲットにすると女子中高生も購入する"とあって、実際のターゲットより少し年齢層が高めの人にヒットするデザインを考える。
ある調査によれば、本来のターゲット層であるキッズ層(5~6歳)の市場はこの5年で50%近くにまで減っているそうだ。これは少子化もあれば、ビッグヒットにつながるキャラクターも生まれていないことの表れでもあるだろう。逆に20~30代は百数十%に増加。こうした購入層を意識したデザインも"売れるキャラクターグッズ"には必要になる。
では、産声を上げたばかりのキャラクターをヒットさせるにはどうしたら良いのだろう。これを近藤氏は「ライブハウスに立つアーティストとファンの関係」に例えると分かりやすいという。
「いきなりビッグヒットを狙うのか、百人規模のライブハウスからインディーズ活動を行うのか、売り方にはキャラクターに合わせた箱を考えなければなりません。たとえばデビューしたてのアーティストがいきなり武道館に立ったら変でしょう? 一方でインディーズ活動をしているアーティストは、評判になればファンも増えて徐々にライブをやる箱が大きくなっていく。キャラクタービジネスも同じで、まずは志向の合う人の集まる雑貨店で様子を見て、徐々に売り場を拡げていく。これがターゲットの志向と合うと、全国展開のショップに入荷され『あれ? あのキャラクター、最近良く見るね』なんて口コミで広がって行くんです」(近藤氏)
人気キャラクターに共通するモチーフ、それは"丸い"ということだ。パワーパフガールズももちろん丸い頭に大きな目、角のない輪郭である。またガールズ世代を意識するなら「ピンク、キラキラ、星、ハート」が人気アイテムだそうだ。大人向けには無彩色やパステルの色使いが人気。特に「JUNK FOOD」が往年のキャラクターを手書き&かすれ風にプリントしたTシャツを発売し、その人気は日本でも飛び火している。
とはいえ「色」に関しては流行はあまり関係ない、と近藤氏。これまで"赤や水色のキャラクターは人気が出ない"と言われていたが米国の絵本から飛び出した「犬のクリフォード」は赤、そして最近映画化もされたベルギーの「スマーフ」は水色と、しっかりしたキャラクター設定とデザインがあればそのジンクスはあてにならない。
「結局は個性なんでしょうね。カートゥーンネットワークの本社スタッフにも"日本は独特。何がヒットするのか予測がつかない"とよく言われるのですが、パワーパフガールズも色のジンクスを越えたキャラクターです。色使いもそれまでにない原色が特徴的、癒し系とは対極にいるのも、人気キャラクターのセオリーからは外れています(笑)。そこが逆に玄人受けした要因なのかもしれません」(森川氏)
たしかに、パワーパフガールズのバブルス、ブロッサム、バターカップはいつも元気いっぱい。底抜けに元気で明るいストーリー展開で、私たちを楽しませてくれるスーパー幼稚園児だ。
キャラクターには本来、世の中を明るくする力がある。それにどんなキャラクターにも大人が癒されてしまうのも確かなこと。だからキャラクターが日本を明るくする期待を込めて、私たちはグッズに手を伸ばしてしまうのかもしれない。「今日も街は救われた! サンキュー。パワーパフガールズ! 」とタウンズヴィル(パワーパフガールズが住む街)が元気になるように。
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