【レポート】
ARMベースの4コアプロセッサでは他社に先んじてリリースされたNVIDIAの「Tegra 3」だが、昨年末にはASUS Eee Pad Transformer Primeでの採用が発表され、今回のCESでは同プロセッサ搭載の初のスマートフォンも登場するなど、モバイルデバイスの話題性が高い昨今のIT業界ではホットな製品の1つだ。今回、NVIDIAのTegra製品担当者にインタビューする機会を得たので、Tegraの現状と今後について話を聞いてみた。
米NVIDIAでTegra担当製品マーケティングディレクターのMatt Wuebbling氏によれば、今年はTegra 3にとって3つの主要マーケットでの飛躍が見込めるとNVIDIAでは考えているという。1つが、すでに冒頭でも挙げた「ASUS Eee Pad Transformer Prime」のようなタブレット市場で、クァッドコア製品ならではのパフォーマンスと省電力性を活かした製品展開が可能になるとみている。Eee Pad Transformer Primeでは、すでにAndroid 4.0 "Ice Cream Sandwich" (ICS)のアップデート提供が開始されており、当初TIのOMAP4のみで展開されていた同OSが、かなり最速のタイミングでTegra 3にも最適化されたことがトピックとして挙げられる。このタブレット市場には「クラムシェル型」の従来のノートPCのような製品も含んでおり、特に今年後半にも登場するといわれている「Windows 8」が主力ターゲットの1つになるという。
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昨年9月にMicrosoftが米ロサンゼルスで開催したBUILDカンファレンスでも紹介されていた、Tegra 3搭載タブレットのデモ機で動作するWindows 8。6月に公開された最初のデモから特別なアップデートはないが、HD動画再生やMetroスタイルUIにおいてもスムーズに動作している様子がアピールされている |
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2つめがスマートフォン市場で、今回のCESでは富士通の製品が展示されたにとどまるが、より幅広い製品ラインナップや具体的な製品展開については2月にスペインのバルセロナで開催されてる「Mobile World Congress (MWC)」で詳細が発表される見込みだ。Wuebbling氏はスマートフォンでTegra 3を搭載するメリットとして、省電力性をトピックの1つとして挙げている。例えばスマートフォンの稼働時間の8割以上はバックグラウンドでメール受信等を行う、いわゆる「スリープ」状態にあり、この際の「動作はしているが、そこで要求されるパフォーマンスは極小」という処理をこなすのにTegra 3が向いているという。Tegra 3は低クロック周波数動作に特化した「5つめのコア」を備えており、他のARMベースの競合製品と比較しても低消費電力での動作が可能だという。またクァッドコアという仕組み自体、高クロック周波数のデュアルコアプロセッサと比較すると電力効率が高く、もしOSやアプリが最適化されていればより低い消費電力での動作が実現できる。これがより高度な処理が要求されがちなタブレット(PC)だけでなく、スマートフォンでもTegra 3が力を発揮できるという理由だ。
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Tegra 3を初搭載したスマートフォンがCESの富士通ブースでデモストレーションされている。「Super Hi-Spec Quad Core Smartphone」のキャッチコピーで、画像効果を多数使用したゲームのプレイにおいても十分なパフォーマンスが実現できていることがアピールポイントだという |
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そしてNVIDIAが新たに見つけたTegraにとって3つめのフロンティアが「車載システム」市場だ。CESのNVIDIAブースではTesla社の電気自動車が展示されており、ここでTegraを採用した車載システムのデモストレーションが行われている。カーナビゲーションやエンターテイメント、車のコントロールパネルを司る部分にTegra 3が採用されているほか、運転席のメーター類が表示されるパネル部分にもTegra 2が採用されており、2つのTegraプロセッサが車に搭載されていることになる。Tegra 3がメインプロセッサとして採用された理由として、まず車載ディスプレイの大画面制御に十分なパフォーマンスを持っていること、そして電気自動車で致命的な問題となる電力消費効率の高さがポイントに挙げられるという。このあたりの背景はスマートフォンでのそれに近いといえるだろう。これまでモバイルデバイス中心にTegraのOEM展開を進めていたNVIDIAにとって、新しいパートナー企業とのビジネスを模索するうえで車載システムは潜在性の高い市場といえるかもしれない。今後は車載システムやPOS、サイネージ等での採用例が多いWindows Embeddedの市場とオーバーラップしていくのかもしれない。
今後のTegraについては、まず現状の1.3-1.4GHzだけでなく、スマートフォン向けに1.2GHz版のほか、より上位の1.6GHz版など、クロック周波数の変更でバリエーションを増やしていく方向を採ることが、CESでの各社の展示から判明している。「スマートフォンにクァッドコアプロセッサは必要なのか?」というよくある疑問に対し、Wuebbling氏はクァッドコア自体は省電力性の面でペナルティにならないこと、必要なときに十分なパフォーマンスを提供できる点を挙げ、「Tegra 3のデュアルコア版」といったバリエーションを用意する計画はないとしている。現状のTegra 3ではTSMCの40nm製造プロセスを利用しているとみられ、今後QualcommやTIといったライバル各社から提供されるクァッドコア製品が28nmを採用していくことを考えると、この差が不利になる可能性も考えられる。だが同氏は「40nmでダイサイズが大きくなること自体はコスト面からも大きな不利にはならない。むしろクァッドコア+GPU向けの最適化や5つめの"Ninja"コアのアピールが重要になるだろう」とコメントし、Tegra 3ならではのメリットを打ち出すのが重要とのスタンスだ。
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Tegra 3にはパフォーマンス要求に応じて複数のコンフィグレーションがあることが確認されている。例えばASUS Eee Pad Transformer PrimeではTegra 3の動作クロックは1.3-1.4GHzとなっているが、先ほどの富士通のスマートフォンでは1.2GHz、さらにこの写真にあるLenovoのIdeaTabでは「1.6GHz」のスペックも確認できる |
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また現状のTegra 3 (開発コード名: Kal-El)に続き、第4世代の「Wayne」、第5世代の「Logan」、第6世代の「Stark」がロードマップで示されている。Wuebbling氏によれば「Wayneは当初のロードマップどおり」でリリース計画が推移しており、おそらく今年末から来年初頭にかけて市場投入が発表されるとみられる。Wayneの詳細については明らかにされていないが、「Dedicated Cores (特定用途向けコア)」の強化が中心になるという。具体的にはGPUコアを増やしてGPU処理能力を引き上げるほか、専用デコーダなど用途別演算装置の搭載など、より個々の用途に最適化された演算ユニットを次々と搭載/強化していく方向性を採るという。もちろん、CPU自体の処理性能もブラッシュアップで引き上げることになるが、それ以上にCPU以外の部分の機能強化が目立つことになるだろうというのが同氏の説明だ。これら目的別コアでトランジスタを適度に割り振り、プロセッサ全体のバランスを保つのがTegraの基本方針だといえる。なお、GPUでのCUDAサポートについては「現時点でのサポートは明言しないが、将来的には絶対に必要になる」とのことで、いずれか近い世代でCUDAプログラミングがTegraでもサポートされるだろう。
(記事提供: AndroWire編集部)
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