Q:Technology Boosterという意味では、一番最初にプロセスを微細化してCMOSになってから、まず銅配線を入れ、次にCMP使いましょうという話になり、それでも足りなくなってきたので歪みゲートを入れて、SOIも入れて、High-K/Metal Gateも入れて、で、まあその次がダブルゲート、あるいはMulti-Gateなどとも言われますが、そうした経緯を経てきました。この先は何かTechnology Boosterがあるのでしょうか? それともこれはFinだから、最後のTechnology Boosterということに?

今考えられてる構造に関して言うとこれで最後と言うか、もっと画期的なものが出てくるかもしれませんけど、ここ10~20年で考えられた物を全部使い尽くしたという状態です。

Intelは、「我々が使ったやつを全部積み重ねてやって行くんだ」と言っていますけど、もう総出し状態。ただこの先のロードマップ、先ほども言いました様にスケーリングを続けていくんだと言ったところで、あと2~3世代すると物理サイズが10nm程度になってしまうので、そこに行った時にたぶん本当の物理的なデバイス動作としても限界、CMOSとしての動作の限界と言う所になりますので、そもそもがもう完全に違うコンセプトと言いますか、現象といいますか、そういった物を用いたものを持って来ない限りは、まあどうにもならないだろう、と。

Q:10nm未満に関しては、そもそもCMOSじゃ無いだろうという話も。

ええ、そう思います。それを一番切実に思ったのは、Finを作ってみた時に、Finの幅を10nm以下にして行くと、Vtのしきい値が量子効果でずれるんですよね。あれを見た時に、ああやっぱり10nm以下に持ってったらこれは無理だ、というのが実感としてあります。要するにVtの値が爆発的というか、目の前で動いてしまってる様子が出てくるんですよ。これを見たときに、「あ、この動きの制御は無理だろうなぁ」という感じを実感として持ってまして、そういう意味で言うと、他にも色々な問題はあるかもしれませんけれど、どうがんばっても10nmを切った所のFinの幅でお終いで、これ以上はもう無理だろうと。

Q:そのずれると言うのは、極少量入っている不純物の問題なのか、それとももう本質的に量子効果だけで?

量子効果だけで、本当にずれます。ですから、今のメカニズムを使って動作させようとする限りは、絶対に避けられない問題になってしまいます。なので、これより薄くするとというのは現実味がありません。その時のゲート長が、ではいくつになるか? というと、例えばFinの幅が5nmとするとGateの方は10nmなのか、それとも15nmなのか17nmなのか、というあたりまでの分解能は無いんですが。そう考えると、まぁ10nmの所までで終わりかな、と。現在22nmプロセスが進められていて、2~3世代をスケーリングで伸ばしていくと、まぁ10年後位にはこんな感じになっていくのかな(笑)、というのが予測されるロードマップみたいなものですね。

Q:すると、Technology Gapが出てきてしまう。30年後位に量子コンピュータを実現しましょうという事で、日立でも開発がされていると思いますが、その一方で、あと10年位で限界を迎える。2年に一回プロセスノードが進んで行く事を考えると、そのギャップが20年間生じることとなる。

ええ、困ってしまいますよね。まあただ良く言われるのは、鉄鋼業界もずっとやられてきて、どんどん品質を良くされてきて、でも最後はずっと同じと言うとそちらの方面に申し訳ないんですが、それでもずっと無くならずに続いていく、と。そういう形で言うと、CMOSそのものはずっと使ってくれてもいいのかなって思います。ただ、他にもっと大きなマーケットとか、応用なり、そういった物が出てくると言うのが多分正しい姿なのかなという気がしますね。

Q:それはいったん微細化についてちょっと置いといて、むしろマーケットを広げる方向に、more than的なということですか?

そちらの方だろうと私は思ってます。

Q:そうなった時に久本さんは何をされるのですか?

もう色々な、と言いますか。FinFET自体はもう10年、20年前の話ですので、10年位前から他の分野と言いますか、どちらかと言えばmore than的なものをずっと手がけておりまして、そちらの方が花開いてくれるのかなあ、と。

Q:ざっくりで結構ですが、今どういった分野をやられていると、言える範囲でお伺いしたいのですが?

例えで言うと、Finを使ってと言うとあれなんですが、先日SSDM 2011(*4)が開催されて、そこで2010年の発表に対するアワードを頂いたのですが、それは日立の斉藤がやってくれているものです。Finを使ってシリコンの発光ダイオード作るというものですね。

これもどちらかと言うと、例えばチップ間あるいはチップ内なのかな、あまり長距離ではなく短い距離のInterconnect的な所に光を持ち込むという様なものです。広い意味で言うと、私の頭の中ではmore thanなんですよ(笑)。そういったデバイスというのはまだまだ一杯必要とされているので、そういった物に今は注力しているというか、取り組んでいるという感じです。

(*4)SSDM 2011:国際固体素子・材料カンファレンス 2011(2011 International Conference on Solid State Devices and Materials)

Q:まだ光をベースとしたInterconnectの場合、MultiplexerとかDeMultiplexerなどの基本的な部品が小型化されていないといった話もあるんですが。

ええ、ただシリコンそのものが光ってくれると、導波路とかの方があまり問題が出てこなさそうなので。もちろん色々な物を作ろうとすると、実際には問題が出てくる事は承知の上ですが、それでも他の化合物系を持ち込んでとか、色々なチップを実装してとかといった事を考えるのに比べると簡単に出来てしまう、という可能性がある(笑)位の言い方しか出来ないですけれど。

Q:Light SourceとかLight Amplifireといった基礎的なComponentがあればあるほど製造が容易になる。

可能性が広がるというように思ってやらせて頂いております。