NVIDIAは、12月14日、15日の2日間、中国・北京市の国家会議中心(China National Convention Center)においてGPUコンピューティングに関する技術会議「GPU Technology Conference Asia」(以下、GTC Asia)を開催。そのオープニングキーノートには、同社共同創始者で社長兼CEOのJen-Hsun Huang(ジェンスン・ファン)氏が登場し、GPUを活用し省電力かつ演算性能に優れたハイパフォーマンスコンピューティング(以下、HPC)環境構築を推進することを訴えた。

GTC Asiaの会場となった中国・北京市の国家会議中心(China National Convention Center)

GTC Asiaには中国内外から約1500人がGPUコンピューティング関連のセッションに参加

ハイパフォーマンスコンピュータの分野では西欧諸国に遅れをとっていた中国は、2010年11月にNVIDIA製GPUを採用したNational Supercomputer Center in Tianjin(国家超級計算天津中心)の「天河一号A」が、スーパーコンピュータ500傑の1位を獲得したこともあり、産学あげてGPUコンピューティングを推進している。また、今回のGTC Asia開催にあたっても、中国教育省が、NVIDIAが推進するGPUコンピューティング言語アーキテクチャ「CUDA」に関するカリキュラムを、2012年後半から同国全省の数百の大学において実施し、毎年約2万人の学生に対してGPUベースの並列処理について教育していくことを発表するなど、HPC向けアプリケーション開発を加速する意向を示しており、NVIDIAのHPCビジネスにとっても戦略的重要拠点となる。

2009年にスタートしたGTCは、今回のGTC Asiaで7回目を数え、これまでのべ1万人もの参加者を集め、GPUコンピューティングに関する何百もの研究成果やセッションが行なわれてきた。そして、今回北京で開催中のGTC Asiaでは、24カ国から約1500人が参加し、2日間で70のセッションが設けられており、最新のGPUコンピューティングに関する研究成果が披露されている。

GTC Asiaのオープニングキーノートに登壇したジェンスン・ファンCEO

拡大するGPUマーケット

GTC Asiaのオープニングキーノートに登場したジェンスン・ファンCEOは、まず、GPU市場の最新動向に触れ、ワークステーション向けのグラフィックス機能からスタートしたGPUは、時代とともにその用途やデバイスを拡大し、いまやタブレットや携帯電話からテラFLOPSの処理能力を誇るデータセンター向けのスーパーコンピュータまで、すべてのコンピューティング製品に欠かせない存在にまで浸透していると指摘。とくに、GPU市場においてはもっとも新しい用途となるGPUコンピューティングは、同社が5年前にCUDAをアナウンスして以降、この4年間で年平均成長率166%というハイペースで拡大を続け、いまや45億ドル規模の単体GPU市場において2億ドルの売り上げを実現するまでになっているとアピールした。

現在の単体GPU市場において、GPUコンピューティング用途向けのTeslaシリーズの売り上げは2億ドルを占めるまでに急成長している

また、ファン氏は、世界遺産にも登録されている中国の代表的な仏教遺跡、敦煌莫高窟においては、文化財保護の目的から全石窟を1.3ギガピクセルのデジタルカメラで撮影した映像をもとに360度の3Dドームシアターで仮想体験が提供する計画では、同社のGPUを採用したシステムが採用されるほか、米イリノイ州シカゴのアドラー・プラネタリウムでは世界最高解像度の28K×8Kピクセルを実現する計画でNVIDIAのGPUが活用され、で星々の映像を楽しむだけでなく、NASAのスーパーコンピュータと連係して宇宙の誕生のシミュレーションなどを楽しめるようになると、GPUがわれわれの生活に新しいユーザー体験をもたらす存在になっていると説明。これらの最先端映像技術も、何年かすればPCや家電製品にもたらされるようになるはずだと、今後もGPUは飛躍的な性能向上を続けていくという見方を示す。

GPUの活用例として、世界遺産の敦煌莫高窟に建設が計画されている3Dドームシアターへの取り組みを紹介。GPUの技術と性能が、文化財保護にも活かされるまで、身近な存在になってきていると説明

シカゴのアドラー・プラネタリウムでは、28K×8Kピクセルの超高精細プラネタリウムの計画に同社のGPU搭載システムが密接に関わっていると言う

ファン氏はさらに、GPUこそがPC業界において古いものを破壊する技術の中核と位置づける。同氏は、数人で3Dビデオゲーム向けプロセッサの開発すべくNVIDIAを創業した当時、現在最大のゲームデベロッパであるEA(Electric Arts社)の従業員は60人程度でしか存在せず、まさにイチから3Dゲーム市場を作り上げてきたと振り返る。しかし、いまではゲーム市場はエンターテイメント分野ではもっとも成長を遂げているジャンルとなり、メジャーゲームタイトルの売り上げは、映画の興行収入を大きく上回るまでになっていると説明。その急成長を支えているのが、GPUのたゆまない高性能化と、継続的に革新的な技術を展開してこられたからだと分析した。

GPUの進化とともに、ゲームの描画品質やインタラクティブ性を高めてきた

ゲーム市場はすでに映画の興行収入を上回るまでに成長

エンターテイメント市場において最後発のビデオゲームの成長が著しいことは、マーケティング会社の調査でも明確だ

Battlefield 3では、DirectX 11のテッセレーションやグローバルイルミネーションなどの最新グラフィックス技術を活かして、より写実的な描画を実現