シーメンスPLMソフトウェアは11月25日、米国にて10月17日に発表していた次世代3次元設計ツール「NX 8」に関する説明会を都内にて開催した。

シーメンスPLMソフトウェア代表取締役社長兼Siemens PLM Software Vice Presidentの島田太郎氏

冒頭、シーメンスPLMソフトウェア代表取締役社長兼Siemens PLM Software Vice Presidentの島田太郎氏は、NXのこれまでの進化とものづくりのあり方に触れ、「高機能化や高性能化により、ものづくりはさまざまなものを組み合わせないと行けなくなってきたほか、知識やベストプラクティスといった人に付くものをCADへとどう統合していくか、そしてユーザーエクスペリエンスのような、新しく登場してきた感覚をPLMの世界に持ち込みたいという思いでNXに機能を追加してきた」と、これまでを振り返った。また、日本でのものづくりに求められることとして、「単に日本でモノを作って輸出すれば良いという時代は終わり、グローバル市場で勝たなければいけない時代になった。そのためには、グローバルで設計を行い、コンカレントに米国やインド、中国、東欧など世界中の地域と一緒に設計できるような機能が求められるようになっており、それによりグローバルで勝負できる製品の設計が可能になる」と、グローバルへの対応が従来以上に求められるようになっていることを強調する。

また、そうした要求がある一方で、「CADの仕組みが難しくなりすぎた。その結果、設計者が紙などに設計図を書いて、それをオペレータが翻訳してCADに落とし込む、といったことも生じるようになった。こうしたことを我々は辞めさせたいと思っている。設計者が自らCADデータを作らないことは、建築現場に設計者が行かずに建物が建てられるのと同様にリスクが大きい。そのためには設計者が気軽に使えなくてはいけない。また、複雑な設計要件の中から、必要なものだけを容易に使えるような提供形態を用意する必要がある」と、ユーザー側への変化を促すほか、「日本の製造業と一緒に仕事をする上で、ツールの品質向上は絶対条件。我々の親会社であるSiemensは製造業であり、我々は唯一製造業の下で設計ツールを提供するソフトベンダという位置にあり、そうした意味では、品質を重視したツールを提供していくことを誰よりも重視している」とした。

NXのこれまでの進化と今後の方向性

Siemens PLM Software NX製品ライン担当シニア・マーケティング・ディレクタのPaul Brown氏

そうした考えのもと開発されたNX 8では、「従来以上に高密度で高精度な情報をCADで提供していくことを目指している」(Siemens PLM Software NX製品ライン担当シニア・マーケティング・ディレクタのPaul Brown氏)とのことで、世界各地のユーザーから募ったニーズをもとに機能強化などが図られた。実際にNX 8では390を超す新たな機能が追加されたが、その中でも主なテーマは4つだという。

NX 8における4つの主なテーマ

1つ目は、要件が正しく満たされているかどうかを可視化し解析するツールとして「HD3D」をあげた。NX 8では、CADデータから進捗情報やコスト情報、設計者情報など通常CADデータに含まれないような周辺データを瞬時に確認したり検索したりすることができ、それを製品の設計に落とし込むことができるようになっている。

それぞれのパーツベンダや誰が作業をしたのか、といった情報もパッと見でわかるようになった

2つ目は多分野にまたがるような設計をどうやってまとめていくのか。1つの機器を作り出すためには、3D CADだけでなくさまざまな設計ツールや手法を用いて開発が行われている。さらに高機能化などにより複数のチームが1つの機器の設計・開発に携わるようになっており、NX 8ではこうした複数のチームが単一のコンポーネントに対して作業を行うことが可能となった。

具体的には、パートモジュールの機能を活用することで、ミスマッチなく外観、内部などの設計を同時並行的に行うことが可能となる。これにより、複数ユーザーが同時並行して1つのコンポーネントの設計を行い、それを最終的にサイズの誤差などなく組み合わせることが可能となるという。

コンポーネントの1部分を別の設計者に振り分けて細部の設計を行うことなどが可能になった

3つ目は解析能力の強化。例えば、ハイテクの電子部品であれば、熱や空冷関係の要素と構造強度を同時解析したいというニーズがあったり、ガスタービンなどでは熱や気流の解析などを同時に行いたいというニーズなどがあり、こうした複雑化する解析要求に対して検証機能ではなく「トポロジ最適化機能」が追加された。これを活用することで、これまで要件確認のためのシミュレーションが、その前から使うことができるようになり、例えばパラメータ値を入力することで、システム側が効率の良い値にするためにはどうすれば良いかの提案をしてくれたりするようになるという。

また、メカトロニクスの分野では制御系がどのように機能するのかも併せて解析したいというニーズが高まっており、「制御はMATLAB/Simulinkと連携することで、制御設計にはMATLABを、その裏側で3Dのモーションシミュレートを行うことができるようになり、メカと制御の障壁を下げることができると考えている」(同)としており、実際にSiemensにてそうした連携を目指した装置開発のアプローチが行われているとする。

各種の解析機能の強化も図られた

そして4つ目が製造現場に関わるさまざまなプロセスへの対応が図られたことである。各種の製造現場で求められる機能を統合したことで、パーツの使いまわしや情報を製造現場で提供できるようにし、それぞれのパートごとにプログラムを用意する必要性をなくしたほか、加工機械側の動作シミュレーションなども含めた検証が可能となった。

加工する側の機械の動作などもシミュレーション上で再現することが可能となった

なお、同氏は「我々はNX 8を活用してもらうことで、密接にMCADとECAD、これまで別々の領域とされていた2つのCADの隔たり、そして制御との壁を取り払いたいと思っている」と語っており、今後もユーザーのニーズに見合った機能強化などを図っていくことを強調している。