放送業界向けの機器やソフトウェアをグローバルで販売するAvid。放送業界においてもクラウドコンピューティングの波が押し寄せており、ビジネスモデルに変革がもたらされているという。今回、シニアバイスプレジデント ワールドワイドマーケティング Ron Greenberg氏とCTOを務めるTim Claman氏に同社の戦略について聞いた。

米Avid シニアバイスプレジデント ワールドワイドマーケティング Ron Greenberg氏

米アビッド シニアバイスプレジデント ワールドワイドマーケティングを務めるRon Greenberg氏は初めに、「われわれは技術だけでなく、熱意や独創性をリリースする機会を作っていきたい。素晴らしい作品を通して、クリエイターやメディア業界とつながっていることに喜びを感じる」と語った。

同氏は同社が重きを置いているテーマとして、「クラウドコンピューティング」や「新興市場」を挙げた。

「クラウドコンピューティングはメディア企業にビジネスモデルの変革を起こすとともに、ビジネスチャンスをもたらす」と同氏。同社のソリューションとしては、「Interplay Central」をクラウドベースで提供することで、ユーザーがPCや携帯電話のWebブラウザを用いて、メディアにアクセスしてテキスト・ビデオ・オーディオの操作を行うことを実現する。インターネットを介したコラボレーションも可能になるというわけだ。

また、ゼロからの立ち上げが行われている新興市場は現在、インフラの整備が進んでおり、同社にとってさまざまなチャンスがあるという。

同氏はこうしたなか、同社が抱えている課題として、「異なるプラットフォームに対するコンテンツの同時配信」を挙げた。「今や、1人のユーザーが複数のデバイスの画面でコンテンツを閲覧する時代だ」と同氏。

同社がこの課題の解決策として提示するのが「インテグレーテッド・メディア・エンタープライズ(IME)」だ。IMEは「オープン・メディア・カタログ」「メディア・リポジトリ」「モジュラー式オープンアーキテクチャ」から構成されるフレームワークだ。同氏は「われわれはIMEによって、メディア企業のビジネスをエンドツーエンドでつないでいく」とアピールした。

米Avid CTO Tim Claman氏

米Avid CTOを務めるTim Claman氏からは、同社が提供する製品についての説明がなされた。同社の製品は「個人向け」「プロフェッショナル向け」「メディア企業向け」に分類することができる。

個人向けの製品としてはビデオ編集ソフト「Avid Studio」や「M-Audioキーボード/コントローラ」が、プロフェッショナル向けの製品としてはオーディオ編集システム「Pro Tools」やシェアドストレージ「ISISシリーズ」が、メディア企業向けの製品としては前述の「IME」や「Interplay Central」が提供されている。

今年10月には、最新のPro Toolsシリーズとして、コントローラ「Pro Tools|HDX 」と「Pro Tools 10 ソフトウェア」が発表された。「コントローラとコンソールがセットで提供されるPro Toolsシリーズは幅広いラインアップが魅力」と同氏。

HDXの特徴としては、既存の「Pro Tools|HD Accel カード」と比べて、5倍以上のDSP処理能力が挙げられた。このほか、2倍のI/O、1000 dB以上の追加ヘッドルーム、4倍のトラック数が実現されている。Pro Tools 10においては、ストレージ性能とコントロールの統合が向上しているという。具体的には、拡張ディスクキャッシュにより録音・再生時のレスポンスが向上したことで、ネットワーク接続ストレージやローカルドライブの活用で最大数のトラックを実現している。

Ron氏は今後の抱負について、「日本市場には大きなチャンスがある。エンドツーエンドでデジタルワークフローを普及させることで、メディア企業の生産性を向上させたい」と語り、締めくくった。