MathWorksは11月2日、東京・台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAでMATLAB EXPO 2011を開催した。昨年の東京ミッドタウンホール&カンファレンスから場所を移しての開催であるが、やはり午前中は基調講演、午後は複数トラックに分かれてのテクニカルセッションが行われた。ということで、午前中の基調講演に関してレポートしたい。
基調講演にはまずMathWorks Japanの梨澤利隆氏(Photo02)による挨拶から開始された。梨澤氏はまずMATLABの2011Aバージョンが出荷されたことに簡単に触れた後で、「2011年はご存知の通り大変な年だった」とした上で、それでも自動車生産台数が14カ月ぶりにプラスに転じ、前年比では20%ものアップになった事を紹介して「こうした景気回復は、現場が地道な努力を積み重ねて改善を図って行った結果だ」とした上で、そうした改善のお手伝いをしたい、と締めくくった。
これに続きMathWorks本社のSameer Prabhu氏(Photo03)による"Technical Computing and Model-Based Design:Driving Innovation and Efficiency - 2011 and Beyond"と題した講演が行われた。
氏の講演はまずFLUXNETの活動を紹介するところから始まった(Photo04,05)。
Photo04:これはBWC(Berkeley Water Center)の提供するFLUXNET関連設備のマップ |
Photo05:FLUXNETのミッションステートメントの説明 |
FLUXNET自体は世界的な活動で、例えば日本国内でも森林総合研究所がこのネットワークに参画しているが、FLEXNETを通じて莫大なデータが集められても、それを適切に処理しなければ意味がない(Photo06)。
MATLABの最新バージョンでは、これを効率的に行えることがまず示された(Photo07)。また、日本におけるさまざまな事例も同時に紹介された(Photo08)。
Photo07:アルゴリズムを簡単に変更できること、演算能力をスケーラブルに拡張できることがMATLABの強みであることを説明した |
Photo08:ミツバのリバーシブルワイパーは昨年紹介されたものと同じものではないかと思う |
さて、ここからが氏の講演の本題である。まず現在の開発のトレンドとして、
- スマートシステム
- 複数の分野にわたるエンジニアリング
- グローバルエンジニアリング
という傾向が見え、これが「超高速化する市場」に繋がることを説明した。
まずスマートシステムだが、例えば10年前には複数のデバイスに分かれて存在していたものが最近では1つのシステムに集約されている事を紹介し(Photo09)、さらに例えばiPhoneを使って聴診器を音声分析させるといった応用例も示した。
Photo09:携帯電話はその最たるものではあるが、以前に比べると多機能な製品が増え、それが低価格に提供されるという図式は多い |
Photo10:これはiPhone上でマイクの入力を音声処理した例。こうした応用を簡単に行えるのもスマートシステムの一例という事だそうだ |
こうしたスマートシステムの場合、問題はソフトウェアである。ソフトウェアが動作するデバイスは飛躍的に増えており(Photo11)、もう少しすると数億行に達するという試算もある(Photo12)。スマートデバイスをスマートに作るのはなかなか大変、ということだ。
2つ目の複数分野におけるエンジニアリングというのは、最近のエンジニアはある特定領域だけをやっていれば済むという話になっていない事を示している。つまり、専門分野への深い知識は必要だが、それと同時に専門でない分野の知識も広く持っていないと開発に支障が出るという話である(Photo13)。
3つ目がグローバルエンジニアリングである。例えばGMの場合、複数拠点で同時に開発を行うといった事が行われている(Photo14)。
こうしたトレンドにより実現するのが「超高速化する市場」である。例えば携帯型音楽プレーヤの場合、500万台を販売するのに必要な年数がどんどん短縮しつつある(Photo15)。