NECパーソナルコンピュータは、初心者および初級者が利用できることを目指した、新たなコンセプトのPCとして、「とことんサポートPC」を11月2日から発売する。この製品がうまれたきっかけとその狙いを、同社の高塚栄執行役員常務に聞かせてもらった。

NECパーソナルコンピュータ「LaVieとことんサポートPC」

その名があらわすとおり"サポートを起点にした"製品

NECパーソナルコンピュータ 高塚栄執行役員常務

同社の高塚栄執行役員常務は、「とことんサポートPCは、PCの使いやすさをハードウェアの観点から追求した製品ではない。またシニアが使いやすいということを目指したものでもない。専用電話窓口などを活用し、初心者がPCを使えるまで徹底的にサポートすることを目指した製品。お客様がPCでやってみたいと思ったことをまるごとサポートする」と、ハードウェア中心ではなく、むしろサポートを起点に開発した製品であることを強調する。

「LaVie S」シリーズをベースに製品化した「とことんサポートPC」は、CPUにCeleronを採用するなど、スペック面ではあまり先進性は見られない。そして、初心者には使いやすいとされるタッチパネルの搭載すらも見送っている。

NECパーソナルコンピュータ コンシューマPC商品企画本部コンシューマ商品企画部・北崎秀子主任

実は、そこにも同社ならではのこだわりがある。NECパーソナルコンピュータ コンシューマPC商品企画本部コンシューマ商品企画部・北崎秀子主任はこう説明する。

「確かに、タッチパネルには、使いやすい部分がある。しかし、タッチ機能に対応したアプリケーションソフトは現時点では限定的という状況にある。タッチパネルに慣れてPCを使えるようになるのではなく、マウスとキーボートを使った操作に慣れてもらい、その次には一般的なPCを購入し、利用してもらう、いわばステップアップのための最初のPCとして活用してもらいたい。そのために、使い方を電話窓口などを通じてサポートしていくのが、とことんサポートPC」だとする。

初心者・初級者の声から開発がはじまった

この製品開発の発端にあるのは、初心者・初級者の声だった。

「一昨年、こんな状況に遭遇した。50代の女性がPCを購入し、子供に初期設定をしてもらい、Yahoo!のポータルサイトに接続することができたものの、そこから先にどんなことをしたらいいのかわからないという場面を目の当たりにした。自分が住んでいる地域の天気予報を見られることや、出かけたい場所までの乗り換え方法や所要時間がわかるといった使い方を教えるとすぐに使えるようになる。しかし、そこでもブックマークという使い方を教えないと、また天気予報を利用するのに手間がかかる。つまり、Yahoo!につながればあとは自由に使ってもらえるのではないかという誤解が我々にあったのではないかと反省した。また、自分の子供のPCの使い方をみても、こんな使い方をしたらもっと便利なのにという要素がたくさんある。知ればもっと便利になるにも関わらず、それを知る手段がないという初心者・初級者の状況を解決することが、いまこそ必要だと感じた」と高塚執行役員常務は語る。

こうした高塚執行役員常務の体験をベースに、NECパーソナルコンピュータでは、グループインタビューなどを通じた市場調査を開始した。その結果、導き出したポイントが、「使い始めの導線」「使い方そのもの」「困ったときの頼り」という3つの観点からの解決策の提案だった。

北崎主任は、「使い始めでは、なにができるかわからない、それを知る手段がない、どこから初めていいのかわからないという声があがっていた。また、使い方そのものとしては、キーボード入力で『きゃ、きゅ、きょ』といった小さな文字や、記号などの入力が難しいという声のほか、はがき作成を途中で挫折してしまった、ソフトを使用している時にどこをクリックしていいのか迷ってしまうという課題があることがわかった。さらに、操作がわからなくて困ったときには、紙のマニュアルを読むのが苦手であること、周りに聞く人がいないこと、子供からプレゼントしてもらったものの遠方なのでいちいち操作に関して聞きにくいという声もあった。こうした点を、ハードウェアやソフトウェアの工夫だけに留まらず、専用マニュアルや専用コールセンターによる、まるごとサポートによって解決していく」とする。

同社がこのPCの名称を、「とことんサポートPC」に決めたのも、ハードウェアおよびソフトウェアそのものを初心者向けに改良したという点だけに留まらず、CS(カスタマサティスファクション)ナンバーワンを標榜する同社が、そのインフラを活用して、PCを使えるまで徹底的にサポートするPCであるという、サービスウェアまで含めた提案型製品であるという意味を込める狙いがあったからだ。

ハード・ソフト両面の工夫もぬかりない

もちろん、ハードウェアの工夫の観点では、ローマ字入力に最適化した形に色分けした専用キーボードや、やりたい作業をすぐに呼び出せる「おてがるメニュー」を表示する「ソフト」ボタンなどを装備。さらに実際に操作するソフトウェアと操作を解説する動画を並行的に表示できる「動画ナビ」といったソフトウェア面での充実も図っている。

キーボードはローマ字入力に使用するキーが色分けされ、改行などの漢字も使用されている

「ソフト」ボタンを押せば、「おてがるメニュー」を表示。困ったらここを押せばメニューに戻る

「おてがるメニュー」の画面。インターネット、写真、メール、はがきという4つから選択できるほか、「おすすめネットサービス」ではSNSの利用も簡単にできるようにした

また、初めてPCを使う際に基本を学ぶことができる「はじめてガイド」は、B4サイズ12ページで構成され、キーボードのページを開いてそのまま本体に乗せれば、PC本体のどこにどんなコネクタが搭載されているのかといったこともひと目でわかる工夫がされている。初めての人がつまずきやすいローマ字入力のために、入力早見表も「はじめてガイド」の最終ページに用意されている。

「はじめてガイド」。表紙にはシニアなどの写真を使用するという案もあったが、コールセンターのオペレータの写真をあえて採用した

「はじめてガイド」のキーボードのページを開いてそのまま本体に乗せれば、PC本体のどこにどんなコネクタが搭載されているのかがわかる

コールセンターの声を製品作りに積極的に反映

そして、当然のことながら、初期設定のサポートについても万全の体制をとっている。PCの初期設定やインターネットの設定、プリンタやデジカメの接続設定までを行う初期設定出張サービスを用意。購入日から1年間有効で、無料で1回利用できる。初心者にとっては大きなハードルである初期設定も、PCの料金のなかに最初から含めているのだ。

そして、これらのサポートに加えて、毎日午後10時まで電話でサポートする専用コールセンターが、ずっと無料で利用できるのが「とことんサポートPC」の最大の特徴だといえる。

「とことんサポートPCの専用コールセンターとしたことで、ここにかかってきた問い合わせは初心者であるという前提で対応することができる。通常のコールセンターサービスでは、事前に問い合わせの目的を音声案内で聞くといったことも行っているが、専用コールセンターではすぐにオペレータが出て直接対応する。また、専門用語を使わずに対応するといったことにも配慮した体制を構築している」とする。

高塚執行役員常務によれば、「とことんサポートPC」の開発には、コールセンターが積極的に関与したという。「初心者はどんなところでつまずいているのか、どんな質問が多いのか、コールセンターはどんなところで対応に苦労しているのかといった生の声を聞き、それを製品づくりに反映した。言い換えればコールセンターがサポートしやすい製品にも仕上がっている」と語る。コールセンターの声を反映したモノづくりはこれまでにも行ってきたが、「とことんサポートPC」は、それ以上に密接な関係によって作られた製品ということになる。まさに、コールセンターがサポートしやすいPCが完成したともいえよう。

将来的にはデスクトップ製品への展開の可能性も

実は、NECパーソナルコンピュータでは、とことんサポートPCの販売数量が一気に拡大するとは考えていない。まずはノートPCの「LaVie」シリーズ1機種に限定しているということもあり、全出荷量の1%程度に留まるとみている。だが、認知度が高まり、新たにPCでのテレビ視聴機能の搭載などの要求が高まれば、デスクトップPCの「VALUSTAR」シリーズでも「とことんサポートPC」が設定される可能性もあるだろう。

CSナンバーワンを実現するNECパーソナルコンピュータが、初心者および初級者向けのフラッグシップPCとして投入した「とことんサポートPC」がどんな形で市場で評価されるのか、これからが楽しみだ。