Bluetooth SIG(Special Interest Group)は、定評ある近距離無線技術の最新版、Bluetoothコア仕様バージョン4.0(Bluetooth v4.0)を正式に採択しました。ポピュラーな無線技術の待望の超低消費電力(ULP)型となる、Bluetooth low energy(Bluetooth LE)がこのバージョンの大きな特長です。
Bluetoothバージョン2.1 + EDRやバージョン3.0 + HS(「クラシックBluetooth」とも呼ばれる従来のBluetooth技術)とBluetooth v4.0には、多くの共通点があります。いずれも、免許不要の2.4GHz帯RFのISM(産業・科学・医療用) バンドで動作する低コストで近距離通信向けの、相互運用可能な堅牢性の高い無線技術です。
ただ、1つ大きな相違点があります。従来のBluetooth 技術が「低消費電力」の無線接続であるのに対し、Bluetooth v4.0のBluetooth low energy技術は最初から「超低消費電力(ULP)」の無線技術として設計されています。
従来のBluetooth技術は「接続指向型(connected oriented)」の無線通信で、携帯電話とワイヤレスヘッドセットをつなぐようなアクティビティ性の高い接続に理想的な固定接続インターバル技術でした。これに対しBluetooth low energy技術では、用途に応じて数ミリ秒から数秒まで設定可能な可変接続インターバルを採用しています。さらに、Bluetooth low energy技術は接続速度(リンクアップタイム)が非常に速いため、通常、「接続されていない」状態(節電状態 - この時、リンクする双方は互いを認識し合っている)にいることができ、この状態から、本当に必要な時にだけ、可能な限り短時間での接続(リンクアップ)により、通信を行うことができます。
Bluetooth low energy技術の動作モードは、少量のデータ(数バイト)を低頻度(毎秒数回から1分に1回、そしてさらに低頻度)で送信できます。これにより、完全な非同期通信が可能な、小型ワイヤレスセンサ(データを0.5秒ごとに交換)やリモコンのような周辺機器などからのデータ送信に適しています。
2種類のチップについて
Bluetooth low energyアーキテクチャは、Bluetooth low energyデバイスとBluetooth v4.0デバイスの2種類のチップで構成されています。Bluetooth low energyチップは、Bluetooth規格に新たに導入された、超低消費電力での動作に最適化された技術です。このデバイスは他のBluetooth low energyチップやBluetooth v4.0チップ(送受信にアーキテクチャのBluetooth low energy技術の方を利用した場合)と通信することができます(図1)。Bluetooth v4.0デバイスは、従来のBluetooth通信とBluetooth low energy通信の両方に対応しています。
Bluetooth v4.0チップは、従来のBluetoothと全く同じように利用できます。このため、新型のBluetoothチップを搭載した携帯電話、パソコン、PND(小型カーナビシステム)、その他デバイスは、従来のすべてのBluetoothデバイスおよび今後登場するBluetooth low energyデバイスと通信可能です。ただ、Bluetooth v4.0チップは従来のBluetoothとBluetooth low energyの双方に対応する必要があるため、Bluetooth low energyデバイスほど超低消費電力での動作に最適化されていません。
Bluetooth low energyチップは、3V、220mAhのCR2032などのボタン電池で長期間(数カ月から数年)動作します。これに対し、従来のBluetooth技術(およびBluetooth v4.0)は通常最低2本の単4電池(容量はボタン電池の10倍から12倍で、許容ピーク電流もずっと高い)の容量を必要とし、さらに多くの場合、持続時間は数日から最大でも数週間(利用方法によって異なる)です(単4電池より低容量の電池で動作する非常に特殊な従来のBluetoothの使用方法も存在します)。