英Wolfson Microelectronicsは2月24日、都内で新製品の発表会を開催し、HDオーディオをサポートする製品としてオーディオDSP「WM0010」およびノイズキャンセリングソリューション「WM2200」を発表した。既報の通り、WM0010は低消費電力、WM2200は包括的なノイズキャンセルを実現するが、それぞれの特徴的な技術について発表会で語られた内容をレポートしたい。

ホスト側のオーディオ処理を代替

WM0010は、従来はホスト側のCPUで行っていたオーディオ処理をホスト側に変わって行う製品。

ホスト側のプロセッサはプロセスの微細化による機能の統合が進み、オーディオ処理に最適化しても何らかの処理が行われていることから消費電力をある程度浪費している状態となっている。またリーク電流が多いため、完全にスリープした状態にしなければ、消費電力が下がらない状況になってきているという。

そこで、Wolfsonではオーディオ処理のみをDSPで行い、ホスト側はできるだけスリープ状態にすることで、トータルのシステムとして消費電力を下げるソリューションを今回提案した。

具体的には、圧縮データをWM0010に転送し、データが受信されればホストはスリープ状態となる。さらにDSPがデータの有無を周期的にホストに確認する。これを繰り返すことで、ホストプロセッサを8秒中7秒間スリープ状態にすることが可能になる。なお、搭載されているTensilicaのHiFi DSPコアは、24ビットオーディオ処理に最適化され、200MHzに対応する。

WM0010により、オーディオ再生時間を延長し、バッテリを気にせずにスマートフォンの音楽機能を使用できるようになるという。

WM0010の構成

WM0010の低消費電力音楽再生

ヘッドフォンのノイズ処理を携帯電話に応用

WM2200は、従来のRX(ダウンリンク)、TX(アップリンク)のノイズキャンセルに加え、環境雑音やウインドノイズなど周辺環境のアンビエントノイズを低減する製品。

従来のRXなどにおけるノイズ処理は、デジタルフィルタなどにより通信ライン上を伝わる信号からノイズを除去する。ライン上の処理は相手側に伝わるまでに時間的に余裕があるため、プロセッサによるデジタル処理で対応できるが、環境雑音については瞬時に処理を行う必要がある。同社は独自技術を用いて瞬時のノイズ処理を実現した。

アンビエントノイズキャンセル(ANC)自体はすでに市場では確立された技術で、例えばオーディオテクニカのヘッドフォンのノイズキャンセルに導入されている。今回、Wolfsonはヘッドフォンの技術を携帯電話においても可能にし、さらにRX、TX、AN処理を1チップで実現した。

これまでは携帯電話使用時に雑音により通話を中断し別の場所から電話をかけ直す状況があったが、WM2200を導入することで雑音の多い環境でも携帯電話の通話品質が保たれ通話が継続できるため、結果的に通信事業者の収益増に繋がるという。

ノイズの多い環境の課題

WM2200のANCソリューション

なお、1000個受注時のサンプル価格はWM0010が4.98ドル、WM2200が4.33ドル。WM0010はすでにサンプル出荷を開始し、日本のユーザーにも採用が決まっているという。量産出荷は2011年第1四半期中に開始する。WM2200はサンプル出荷を2011年4月、量産を2011年第3四半期に予定している。