いよいよ今週、メディア王Rupert Murdoch氏が「The Daily」を発表するといわれている。The Dailyは米Apple「iPad」向けの電子新聞で、タブレットが紙やWeb/PCに続く新しい媒体となるのかの試金石として、メディアの注目を集めている。
The Dailyは、Wall Street Journalなどを傘下に抱えるNews Corp CEOのMurdoch氏が「ナンバー1プロジェクト」として暖めてきたデジタル新聞だ。最大の特徴は、iPadでしか手に入らない点。これまでのように、紙でもWebでも出版するというのではなく、iPad(タブレット)のために創られる新聞となる。もう1つの特徴とみられるのが、Appleが新開発したといわれるサブスクリプション機能だ。これにより、紙の新聞のような購読が可能になる。The Dailyのローンチはたびたび延期されたが、原因の一部にこの機能の開発の遅れがあるといわれている。
iPadはタブレットという新しいセグメントを立ち上げた。ローンチ時からスマートフォンよりも大きなタッチ画面、携帯性、バッテリー持続時間、3G接続オプションなどの特徴を持つ"メディアを消費する端末"の確立を目指しており、iPadに対しては、雑誌/出版や広告業界からの関心も高い。
iPadは2010年、世界で約1,700万台を売り上げ、2011年の予想販売台数は4460万台ともいわれている。The DailyはiPadローンチから10カ月目を迎え、パイが膨らんできたところで登場となるが、すでにiPadオンリーの雑誌は登場している -- 2010年11月末に英Virgin Groupが創刊した「PROJECT」だ。The Dailyが新聞に近いといわれているのに対し、PROJECTはエンタテインメント、旅行、ビジネスなどのテーマを取り扱うライフスタイル/カルチャーマガジンという位置づけだ。「Apple Store」経由で提供されており、価格は2.99ドル。
Virgin Groupの会長Richard Branson氏自身が米ニューヨークのApple Store前でローンチ記念のイベントを行ったPROJECTだが、離陸はゆっくりのようだ。Virgin側は数字を公開していないが、創刊から数週間後にクリスマスに合わせて期間限定で無料にしたが、大きな反響があった様子はない。また、第2号のリリースも遅れた。このように、PROJECTは、現時点では大成功とはいえないようだ。
新聞/雑誌業界は依然として、インターネットによるコンテンツの無料化と広告の低迷で長期的苦境に陥っている。新しいセグメントとなるタブレットでは、最初からコンテンツを有料とし、収益源を確保したいところだが、消費者がどのような反応をとるのかは予測が難しい。
実際、Knowledge Networksが1月中旬に発表した調査によると、iPad向けの雑誌やTVコンテンツに対価を支払うと回答したiPad所有者は、わずか13%にとどまるという。現在iPadを持っているユーザーは比較的経済的に余裕があると思われるアーリーアダプターが中心であることを考えると、がっかりさせる数字だ。
このようなことを考えると、The Dailyのローンチで注目したいのは、The Dailyそのものというよりも、Appleの新機能とこの機能に対する新聞/雑誌の反応といえそうだ。