既報のとおり、日本電気(NEC)とレノボグループは1月27日、合弁会社を設立し、パソコン事業で広く提携していくことを発表した。

ここでは、27日の19時から行われた発表会の内容を基に、両社の提携の目的などについて簡単に説明する。

提携が決まり、がっちりと握手をするレノボ・グループ CEO ユアンチン・ヤン氏(左)とNEC 代表取締役 執行役員社長の遠藤信博氏。なお、発表会開催のアナウンスは、香港証券取引所の立会時間が終わるのを待ってから行われたため、19時という遅い時間からの開催になった

提携の内容、新会社の体制

まずは、提携の内容について整理しよう。

今回両社は、「Lenovo NEC Holdings B.V.」という合弁会社を設立することで合意。その傘下の100%子会社として、レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータを置く。NECパーソナルコンピュータは、現NECパーソナルプロダクツのパソコン事業を分離するかたちで設立される新会社。したがって、NECは、国内シェアNO.1を誇るパソコン事業をグループ直轄から外すことになる。

両社によるPC事業のスキーム

Lenovo NEC Holdingsの傘下に置かれるレノボ・グループの企業が日本法人のレノボ・ジャパンであることからわかるとおり、今回の提携は国内に限った話になる。NEC 遠藤社長のプレゼンテーションの中では海外展開について触れる場面もあったが、以下のスライドのようにあくまで日系企業の現地法人をターゲットにしたものになっており、グローバルでレノボと提携して何かを進めていくということは現在のところはないようだ。中国市場に関しても、「今回の提携が中国市場で受け入れられるような状況になれば、そのときにレノボと改めて話し合いを行う」(遠藤氏)と話すにとどまっており、新たな海外展開がすぐに始まるといった予兆は見受けられない。

海外展開に関しては日本企業の現地法人をターゲットとすることが説明された

また、合弁持ち株会社を設立して組織体制は変わるものの、現段階では両社のパソコン事業そのものに大きな変更が加わる予定はない。開発面での連携が行われるが、両ブランドは維持される方針で、生産/販売活動、サポートサービスもそれぞれで進めていく計画。会見では、レノボ・グループ CEOのユアンチャン・ヤン氏が「長期的な視点で効率化を図っていく」と説明する程度にとどまっており、具体的なアクションを決めるまでには至っていない模様だ。

NECとレノボ、それぞれのメリット

では、両社にとって、今回の提携にどんなメリットがあるのだろうか。

まず、レノボにとっての大きなメリットは、NECブランドのパソコン販売で計上した売上を連結決算に組み込める点だ。

なぜそのような状況が生まれるのかというと、ポイントはLenovo NEC Holdings B.V.の出資比率にある。同社は、レノボが51%、NECが49%を出資して設立されている。したがって、レノボの子会社、NECの関連会社という扱いになり、損益に関しては出資比率に応じて両社に分配されるが、売上はレノボ側に組み込まれることになる。「過去5四半期連続して世界市場で業界最速の成長」とアピールし、事業拡大を進めているレノボにとって大きな魅力の1つと言えるだろう。

一方、NEC側のメリットだが、世界シェア第4位というレノボのスケールメリットを享受できる点にある。

国内No.1とはいえ、世界市場ではシェア0.8%というNECと、世界シェア10.4%のレノボでは、桁が違うほど生産/販売台数に大きな差がある。この違いは、生産コストのみならず、販売価格や品質、製品開発力、保守/サポートにまで影響を及ぼすことになる。

遠藤社長は「スケールはビジネスで最も重要な要素」と語り、会見の中で何度も「今回の提携により、強いポテンシャルをマーケットで築けるようになる」と説明。さらに、「そのような状況を作ることが、我々の顧客の満足度を高めるために不可欠」と強調したうえで、NECが力を入れているクラウドビジネスについても、「クラウドビジネスを推進するための必須要素の1つとしてデバイスがある。デバイスのマーケットポテンシャルを高めておくことで、NECの事業全体の売上げも伸ばしていけると考えている」との見解を示した。

なお、両社は今後、PCのみならずタブレット端末やサーバに関しても事業連携を検討していくという。また、今回の提携に併せて、NECがレノボの新規発行株式1億7500万ドル相当を引き受けることも発表。これはレノボ・グループの全株式の約2%に相当するが、その意味についてレノボ・グループ CFOのワイ・ミン・ウォン氏は、「戦略的提携を長期に渡って行っていくことの証と受け止めている」と説明した。