マイクロソフトより無償提供される統合Web開発環境ツール「WebMatrix」の正式版ダウンロードが、「Microsoft WebMatrix」サイトより可能となった。ASP.NET環境での動的Webサイト構築に大きく貢献する注目の統合ツールの実力を見てゆこう。

「WebMatrix」がもたらす新しい可能性

Webアプリケーションをダイレクトに組み込んだWebページは、いまや当たり前の存在になりつつある。いわゆる「動的Webサイト」はこれまでの画像やフォントを組み合わせ、デザインで見せるだけのサイト構成に取って代わろうとしているのだ。そんな中、マイクロソフトでは従来の「Visual Studio」や「Visual Web Developer」とは、まったく異なるスタンスを持つ、無償のWebアプリケーション開発ツール「WebMatrix」をリリースした。 WebMatrixは、様々なWebサイトやWebアプリケーションを編集・作成するツールとしての機能を備えているのが特長。もっと簡単にいえば、これひとつでスクラッチ、OSSアプリケーションをベースにした「動的」Webサイトの構築がすべて行るのだ。また、それだけでなく従来の「SQL Server」では敷居が高いと感じていたユーザーでも、ファイルベースで手軽にデータベースを扱える「SQL Server Compact 4.0」が用意されている。X-Copy配置はもちろん、ADO.NET、EF、LINQ も使用可能だ。

「WebMatrix」メインコンソール

さらに、Webサーバ「IIS 7.5 Express」も同じパッケージに含まれている。Windowsでは、これまでWebサーバとして「IIS(Internet Information Server)」が提供されていたが、サービスとして動作させたため、デバッグに管理者権限が必要だったり、常に起動していたりするため、開発環境の中で使用するには若干敷居が高かった。また、Visual Studioでもシンプルな開発用Webサーバが利用可能だが、こちらは逆にデバッグ時にSSLが使えないといった悩みがあった。「IIS 7.5 Express」は、IISとほぼ同等の設定を行うことが可能で、加えて必要な時にだけ起動するといったことが可能な、IISよりもライトに扱えるWebサーバといえるだろう。

これらを使ってWebMatrixの中でWebアプリケーションやWebサイトを構築していく際には、「ASP.NET Webページ(Razor構文)」もポイントとなる。ASP.NET Webページは、サーバ側でデータベースからのデータの埋め込みを行う場合など、動的Webサイトを簡単に構築できる手段として用意されたもの。ASP.NET Web ページの中に「Razor」と呼ばれる新しい構文を用いた記述方法が含まれており、キー入力量の削減をはじめとして、動的Webサイトの構築をより簡単かつ効率的に行うことができるわけだ。

統合開発ツールらしい充実のパッケージ

WebMatrixから始めるWebアプリ開発

WebMatrixは軽量かつシンプルなWebサイトをトータルで開発することを得意としていて、特にWebデザイナーや、よりシンプルにWebサイトを構築したり、今までテキストエディタを使ってHTMLベースで作成していたユーザーにとって最適な構成となっている。これまでよりもシンプルに、シームレスに動的なWebページを作りたい、といったニーズに合わせた統合開発ツールだと思えば良い。

通常のWebサイト構築に関して十分な機能を持ちながら、無償で入手できることは、これから動的Webサイト構築へ乗りだそうとするユーザーには非常にありがたいはず。学生はもちろん、これまで静的Webサイト構築がほとんどだった開発者にとっても、チャレンジしがいがあるツールだといえるだろう。

また、それだけでなく既存のPHPで作成したCMSなどもWebMtrixで読み込むことが可能となっている。たとえば、WebMatrixを使って「WordPress」のページを編集することも可能で、Webサイトを構築するだけでなく、CMSベースでカスタマイズしたい時にも使える機能が備わっている。過去の資産を活用しつつステップするにも最適なのだ。

もちろん、「.NET」を熟知していて、これまでWindowsアプリケーション開発を続けてきたプロデベロッパー向けのとしては「Visual Studio」が最適。その簡易版として、ASP.NETベースでWebアプリケーションを作ることができる「Visual Web Developer」も無償で提供されている。

ASP.NETでは、サーバ側で.NETフレームワークのライブラリを使ってデータベースへアクセスしたりと、どうしても幅広い知識が必要になってくる。しかし「WebMatrix」なら、.NETやサーバサイドでのロジック記述などを意識せず、ページ単位でWebサイトを簡単に構築できるのだ。

動的Web構築のための入り口とも言えるマイクロソフトの無償ツール「WebMatrix」。WebMatrixの機能や入手方法に関して、次回よりさらに詳しく紹介していきたい。

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