iPadを"スケッチブック"として利用したい!!

資料庫としてiPadが大活躍する一方、私の当初の目的は「本格的な"スケッチブック"として利用したい!!」というものでした。米国では、発売当初から豊富な数のお絵かきアプリが出揃っており、ついに気軽にラフスケッチを描ける環境が整うのだと期待感はさらに高まっていたのです。

そして私がまず購入したお絵かきアプリは、iPad版「SketchBook Pro」(900円/掲載時115円、)。Mac版を利用していたこともあり、iPad版の独自性が多少はあるものの、基本的な操作に違和感はありません。また、作成したデータは「Adobe Photoshop」や「ArtRage」とも互換があり、実用性も十分です。しかし、問題は意外な場所に潜んでいました。

指での描画に悪戦苦闘

iPadは現状、指でのタッチ操作を前提に作られているからか、ペンとの相性がどうも悪いのです。だからといって、指を使っての描画では、この多感なツールを使いこなすことが自分には難しい……。私は大きな壁に直面してしまいました。指と同じ太さの線で描くのであれば気にならないのですが、それよりも細い線を描く際には、指の太さが邪魔をして描いている位置がわかりにくいのです。

慣れない指での描画には、かなりのイライラを感じてしまいました。アイデアを練っているときのストレスというものは、本当に困りモノ。私が本当に求めていたのは、充実した機能などではなく、ただペンで気軽に描ける「スケッチブック」だったのです。もちろん、世の中には器用に指で描いている方もたくさんいます。でも、私はペンでないとダメな不器用人間。15年近くマウスすら使わず、タブレットペンだけで全てを操作してきた人間なので、余計にそう感じてしまうのでしょう。

理想のペンを求めて奔走するが……

そこでインターネットでいろいろと調べ、なんとかiPadで快適に使えそうなペンを探し出し、いくつか注文しました。しかし、ほとんどの商品が、iPhone用としてリリースされていたペンを「iPadでも使える」としているだけだったので、どれも快適とはいいがたく、ついには振り出しに戻ってしまいました。確かに、小さなディスプレイを持つiPhoneやiPod Touchで使う分には適切な製品かもしれません。しかし、iPadで使う場合では、あくまでも指の代用でしかないのだと感じました。手作りという最後の手段も考えましたが、すでにペンの購入費に2万円近くつぎ込んでしまった私にその気力もなく……。

とにかく、本来の目的はロゴタイプデザインのラフスケッチや、デザインレイアウトではあるのですが、現在の環境でイラストをいたずら描きしてみました。

「SketchBook Pro」でのラクガキ。iPadでここまで描くつもりは基本的にありません(笑)。かなり本格的で機能は豊富ですが、現状のiPadでこの機能を使い切るのは難しいかも。スポイトツールで任意の色を抽出しながら描くのが私の癖なので、それができないのが少々ストレス。ペンは「Pogo Sketch」を使用

Wondershare iDraft」(350円)で描いた"iPadくん"。万年筆で描いたようなタッチとメモ感覚で描ける潔さが気に入っています。ただし、スピードにストロークがついて来るのが難しいようで、もたつきが気になります。初代iPadにスピードを求めるのは無理があるのかもしれません。ペンは「PTP-PBK」を使用

Adobe Ideas」(無料、トップアドオン1描画レイヤー600円)でのラクガキ。さすがAdobe製品、しっかりと作り込まれています。細部を描き込むというより、イメージをスケッチするといった用途に最適。iPadに指または市販のペンで描くという利用状況では、ベストだと感じています。ペンは「Donya DN-I softPen」を使用

結論からいうと、iPadを使ってのイメージスケッチには指での画力を付けることが最良の方法なのかもしれません。ただし、これは私がペンの描き味に対して非常に高い理想を求めているからともいえます。なお、今回さまざまなペンを試してわかったことですが、ペン使用時に小指がディスプレイに触れて認識されてしまうトラブルが頻発しました。静電式という指からの微電流を拾って認識する仕組み上、仕方のないことなのでしょう。

ただ、もう少しハードルを下げて考えるとするならば、購入した中で3本ほどのペンは及第点だと思います。ちなみに、iPadの液晶保護フィルムについては、フィルムを使わないほうが多少は反応が良いような気がしますが、実際にはそれほどの違いを感じませんでした。

購入したペンのうち使える範囲だと感じた3本のペンと普段愛用している万年筆、そしてタブレットペン。左から「Wacom Intuos4」付属のグリップペン、「Pogo Sketch」(実売価格2,480円)、 「プロテック 静電式&感圧式 マルチタッチペンPRO PTP-PBK」(オープン価格、実売価格1,500円前後)、万年筆「ペリカン ペリカーノJr」(オープン価格、実売価格1,500円前後)、 「静電容量タッチスクリーン用タッチペンDonya DN-I softPen」(実売価格499円)

Pogo Sketchペンのアップ。導電スポンジ製。少し強く押すように意識しないと描けません。ただ、筆圧が高くなってしまうと、スポンジ部分が潰れてしまうので注意が必要

静電式&感圧式 マルチタッチペンPRO PTP-PBKのアップ。導電ブラシ製。筆足が短いのでペンを寝かすことができません。また筆の付け根が金属のため、液晶を傷つけそうで心配

静電圧スクリーン用タッチペンDonya DN-I softPenのアップ。導電ゴム製となっています。少し強く押すように意識しないと描けません

書き心地を比べてみると、一番安かった静電圧スクリーン用タッチペンと、一番高いPogo Sketchペンが驚くことにほとんど同じでした。しかし、使い込むとやはり先端がゴムになっている静電圧スクリーン用タッチペンは引っかかりが気になり、気持ちよく描けません。時々、鼻の脂を付けて描くと改善されましたが、やはり現状ではPogo Sketchペンがベストチョイスだと感じています。ただし、価格のことを考えれば、鼻の脂を付けるというコツが必要ですが、静電圧スクリーン用タッチペンも十分だと感じます。もちろん、書き心地の判断は個人差があると思いますが。

学生の頃から愛用しているステッドラーの芯フォルダー太芯用に、導電スポンジを丸め込んで作成したインスタントペン。握りの部分が金属なので何もしなくてもそのまま使えます。ただし、力を入れると先端が潰れてしまい、緩めると描きにくくなってしまうのに加え、そそっかしい私は液晶部分を傷つける心配があり使用を断念しました