アドビ システムズのビデオ制作用アプリケーション「Adobe Premiere Pro CS5」の新機能を数回に渡り徹底紹介していく本レビュー。今回からはHP製の高性能なワークステーション「Z800」を用意して、64ビットOSに対応した「Adobe PremierePro CS5」の動作性能について検証していく。
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なお、これまでに紹介してきた「Adobe Premiere Pro CS5」のレビューは以下の通り。
・「Adobe Premiere Pro CS5」新機能徹底レビューvol.1 |
・「Adobe Premiere Pro CS5」新機能徹底レビューvol.2 |
・「Adobe Premiere Pro CS5」新機能徹底レビューvol.3 |
・「Adobe Premiere Pro CS5」新機能徹底レビューvol.4 |
・「Adobe Premiere Pro CS5」新機能徹底レビューvol.5 |
AVCHDを快適に扱うための「Mercury Playback Engine」
画素数比でもSD映像の5.5倍の情報量となるHD映像。家庭用をベースに作られたHDVやAVCHDフォーマットでは、Long GOPによる高効率圧縮がかけられているため、圧縮・伸長の処理が重く、編集時のPC負荷はDV映像編集時の数十倍に達するといわれている。そのためエフェクトやスーパーの設定をしても、動画として確認するためにはレンダリングという処理工程が必要となり、その待ち時間が膨大で、実用に耐えないというのがノンリニア編集でHD素材を扱う上での常識だった。
最近はHDVはもとより、この家庭用途として開発されたはずのAVCHDが、パナソニックからはAVCCAMとして、ソニーからはNXCAMとして業務用展開されており、プロビデオ制作でもAVCHD素材を扱わなければならない困った状況となっている。「Mercury Playback Engine」は、まさにこの問題を解決するために開発されたドライバーといえよう。
HD編集環境を向上させるハードウェア事情
アプリケーションを動作させるハードウェアが進化して、一般的なPCでも4つのCPUを1チップにまとめたものが一般的になっている。普及し始めたCore i7では、さらにハイパースレッディング(HT)技術にも対応し、見かけ上のコア数(スレッディング数)が2倍になっている。またOSもWindows XP、Vistaの頃は32ビット処理が基本で、メモリにも3GBの使用制限があったが、Windows7からは64ビット処理になり、メモリの制限も広がるなど、情報を迅速に処理する環境が整ってきている。
これらハードウェアの拡張された環境は、アプリケーションが対応しなければ有効には使えない。従来の「PremierePro CS4」を、新調したWindows7のPCにインストールすることは、理論的にはできるかもしれないが、それだけではCPUの性能向上分による、せいぜい2倍の動作向上しか期待できないだろう。SD映像に対して数十倍の処理量が必要とされるHD編集(特にAVCHD素材)の問題を一気に解決するためには、Mercury Playback Engineを使って、新しく整ったハード環境の機能を使わなくてはならないのである。
ノンリニア編集に使用するマシンは、歴史的にIBM製、DELL製と移り変わり、現在はHP社の人気が高い。中でも「Z800」シリーズは、ワークステーション用のCPUである Intel Xeonを搭載するハイパワーマシンとなる。今回はXeonCPU(X5570)を2基、メモリを12GB搭載したWindows7 ProfessionalのZ800を用意して、Mercury Playback Engineの性能を検証してみることにした。
次回、実際に筆者が行ったテレビ番組の制作をもとに制作現場で必要となる編集作業の実例を用いて動作性能を検証していく。