9月16日、東京都新宿区のマイクロソフト本社にて、hebikuzure氏をはじめとする有志により「Internet Explorer 9の誕生を祝う会(ベータ版)」が開催された。リリースされたばかりのInternet Explorer 9(IE9)の新機能がマイクロソフト社員により紹介されたほか、IE9に関連したライトニングトークも3名の開発者により披露された。

ここでは、マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 UX&クライアントプラットフォーム推進部 春日井良隆氏の講演内容を基に、IE9の特徴を簡単にまとめておこう。

マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 UX&クライアントプラットフォーム推進部 春日井良隆氏

春日井氏は冒頭、「Webブラウザは、芝居に例えれば舞台に当たるもの。役者に当たるWebコンテンツを引き立たせる存在でなければならない」とコメント。そうしたコンセプトを具現化するために、「IE9では、『高速』、『洗練』、『信頼』、『相互運用性』の4点に力が入れられた」と説明した。これらのうち、春日井氏が特に強調したのが高速と洗練である。

高速という点では、GPUを使って高速にレンダリングできるようになったほか、マルチコア対応の新JavaScriptエンジン「Chakra」を搭載。さらに「そのChakraがIE9の中にネイティブ実装された」(春日井氏)など、IE自体のアーキテクチャ面にも変更が加えられたという。

高速化に向けた主な新機能

一方、洗練に関しては、UIの刷新や操作性の向上を紹介。UIの刷新という点では、メニューやURLなど、IE自体のコントロール部分を狭め、Webコンテンツの表示欄を大きくとったうえ、頻繁に使用する「戻るボタン」を「進むボタン」よりも目立つようにするなどの変更が加えられている。

IE9のUI。各種のメニューが右端のボタンに集約され、Webコンテンツ表示エリアが広くとられている

また、操作性の向上という点では、まず、タブをドラッグしてディスプレイ右端でドロップするだけで2つのウィンドウを左右に均等に並べられることを紹介。さらに、特定WebサイトのタブをWindowsのタスクバーにドラッグ&ドロップすることで、タスクバーから直接Webサイトを呼び出せるようになる様子も説明された。

Windowsのタスクバーに特定Webサイトへのショートカットを追加できる

さらに春日井氏は、米Microsoftが「Beauty of the Web」というデモサイトを開設したことも紹介。同サイトの「Experience」にIE9の新機能を使用したデモアプリケーションが並べられていることに触れ、そこにYahoo! Japanやビジネス・アーキテクツなど、日本企業が作ったWebサイトも掲載されていることを説明した。

なお、ビジネス・アーキテクツのデモアプリケーションは、春日井氏からお願いしたものだという。氏による「日本らしいものを作ってほしい」というおおざっぱな依頼により出来上がったのは、「筆ならではのかすれ具合が絶妙」(春日井氏)という書道アプリケーションで、マウス操作やタッチ操作で本格的な"書道"を体験することが可能。筆を持つ手の映像に高名な書道家のものを使うなど、細部にもこだわって作られているようだ。

ビジネス・アーキテクツが作成したWebアプリケーション「書道」

また、Yahoo! Japanでは、HTML5で構築したアプリケーション「Trendline」を提供している。Tredlineに関しては、「細かいところでは、戻る/進むボタンが赤くカスタマイズされていることにも注目」(春日井氏)と説明し、IE9ではWebサイト側でそういったIE自体のコントロールも制御できることを紹介。ファビコンも64×64pixに対応したことなども明かした。

Yahoo! Japanが提供するWebアプリケーション「Trendline」。この写真ではわかりづらいが、通常は青い「戻る/進むボタン」が赤くなっている

最後に春日井氏は、相互運用性についても触れ、HTML5、CSS 3、DOM Level 2/3、SVG 1.1、ICC Color Profileなどに準拠したことを説明。さらに開発者向けの情報として、F12ボタンで起動する「F12 developer tools」も強化されていることなどもアピールした。

IE9がサポートする標準仕様

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Internet Explorer 9の誕生を祝う会(ベータ版)では、そのほかにも開発者向けの詳細な技術情報や、Mozilla Japan 加藤誠氏による各Webブラウザを比較したライトニングトークなども披露され、内容の濃いテクニカルセミナーとなった。今回は予想以上の応募があり、「残念ながら参加できなかった方もいた」(hebikuzure氏)とのことなので、ぜひまたの開催を期待したい。