富士ソフトは2月1日、高度なコミュニケーション能力や移動能力を備えたヒューマノイド・ロボット「PALRO(パルロ)」を発表した。同社がロボットを発売するのはこれが初めて。3月の教育機関向けバージョンを皮切りに、ロボット市場に本格参入する。
PALROは、身長39.8cm、体重1.6kgの2足歩行ロボット。自由度は、腕3軸×2、脚6軸×2、頭部2軸という20軸構成で、トルクの違う3種類のサーボモーターが負荷に応じて使い分けられている。サーボモーターの型番は公開されていないが、スペックなどから双葉電子工業製と見られる。電源はリチウムイオンバッテリを搭載する。
コントロールボードはPCそのもの。CPUは動作クロック1.6GHzのAtom Z530で、無線LAN機能も内蔵している。センサとしては、3軸加速度センサ、1軸ジャイロセンサ×2、圧力センサ×8、測距センサを搭載。そのほか、マイク×5、スピーカ、CMOSカメラ(30万画素)、LEDドットマトリクスなども本体に内蔵する。
PALROには、大きく分けて「コミュニケーション」と「移動」の能力がある。
コミュニケーションのためには、顔認識、顔個別認識、動体検知、音源方向認識、音声認識、音声合成などの知能化エンジンを搭載。視覚と聴覚を使った自然なユーザーインタフェースを実現している。これらを組み合わせることで、例えば呼ばれたら振り向いて、相手の顔を見て話す、といったことも可能となる。
移動のためには、地図生成、位置認識、経路計画、障害検出、動的安定歩行などの知能化エンジンを搭載した。これらを使って、PALROは、カメラの画像をもとに位置を認識し、障害物にぶつからないようにしながら、目的地まで歩いて行くことができる。足裏には圧力センサが搭載されており、フィードバック機能による路面状況に応じた歩行が可能だ。
OSはLinux(UBUNTU)を搭載し、専用プラットフォームミドルウェアも用意。こういった知能化エンジンはAPIの形で提供されており、ユーザーはPALROを使ったアプリケーションを自由に開発することができる。同社が運営するコミュニティサイトを使って、ユーザーが開発したアプリケーションを公開できるような仕組みも提供する予定だ。
同社は過去20年に渡ってロボット相撲大会を開催してきたという経緯があるが、製品としてロボットを発売するのはこれが初めて。同社の白石晴久・代表取締役社長は、ソフトウェア会社である同社がロボットを開発した理由を以下のように述べた。
まず1つは、組み込み分野でのソフトウェア技術があったこと。2つめは、経済産業省の知能化ロボットプロジェクトに参画して、独自のソフトウェア開発を行ってきたこと。そして最後は、同社の戦略の1つである「プロダクト化」を狙える製品であったこと。従来の受託業務では顧客とは1対1の関係になるが、多くの顧客に提供できる商品の開発も進めていく――これが同社の「プロダクト化」である。
「当社としては、ハードウェアの領域に一歩を踏み出した、という戦略的な意義がある」と白石社長。「プロジェクトにゴーサインを出した私の狙いの1つとしては、経営資源として、ロボットテクノロジ(RT)を活用したいという思いがある。PALROには多くの高度なエンジンが入っているが、今後、デジタル家電・ユビキタス機器の知能化や、クラウドなどネットワーク技術と組み合わせたソリューションなど、新たなビジネスモデルの展開を図っていきたい」と説明した。
ターゲットユーザーは幅広く設定するが、まずはプログラミング教材や研究用に、先行して「教育機関モデル」を3月15日に発売する。価格は29万8,000円。その後、アプリケーションを追加したコンシューマ向けモデルも2010年度中に発売する予定で、こちらの価格は教育機関モデルよりも高くなる見込みだ。